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図書館総合展 2日目 その1

図書館総合展2日目その1

2日目は2つのフォーラムに参加。まず1つ目は「CLOKSS:学術コミュニティが運営する世界規模の電子ジャーナルアーカイブ」

都合により途中からの参加ですので、一部配布資料の情報も含めて書きます。講演者はVictoria Reich(Director LOCKSS Program)さん。スタンフォード大学の図書館の人でもあるようです。

<課題>
デジタルの学術コンテンツは失われるリスクが大きい
→アクセスを保証する長期間のアーカイビングが必要。
多くの長期間のアーカイビングがこの問題を解決するために設立されてきた。

CLOCKSSは他の取り組みがやっていない4つの重要なニーズを満たしている。
<CLOCKSSアーカイブの特徴>
次の4点が他とは違うCLOCKSSの特徴であり強みである。
・国際的なコミュニティによって運営されるアーカイブである。
・コンテンツは図書館によって、世界中で保持されている。
・出版者が提供しなくなってしまったコンテンツを無償でアクセスできるようにしている。
・参加者にかかるコストが低い。また寄付を受けている。

この4点を順に説明していく。

<運営体制>
CLOCKSSはアーカイブの受益者によって運営されている。理事会と諮問委員会。出版者と図書館とが、対等の立場で参加している。戦略的な決定や優先順位のつけかた等への発言権が同等 。

2007年にALAから賞をもらった。(2007 ALA ALCTS Outstanding Collaboration)この賞をもらったのはCLOKSSがはじめて。
●これ↓
http://www.ala.org/ala/mgrps/divs/alcts/awards/profrecognition/collaborationcite.cfm

Governing Boardには次のような出版者や図書館がいる。
●その内公開されるであろうスライドを参照。著名なところはほとんど入っているように見えるけど、EJ出版者事情はよく知らないので、どなたか補足を。
エルゼビア、シュプリンガーなど設立に関わってくれた出版社には感謝している。
●ここで安達先生@NIIの写真がスライドに登場。
また日本からはNIIに参加してもらっており、今日もNIIの招待でここに来る事ができて感謝している。

なぜ我々はこの図書館総合展に来たか。CLOCKSSはあなた方を必要としているからだ。皆が参加すればそれだけ発言力も増していく。CLOCKSSでは対等の立場でアーカイブの運営に発言権を持てる。是非参加してほしい。

その運営の様子を例として紹介したい。来週ニュージーランド、オーストラリアで諮問委員会がある。そこでの議題はある雑誌。OA誌だったが数年前に発刊をやめたものがある。現在ではそれを見るためには、別の有料のアーカイブサービスに参加しないといけない。つまり以前はOAタイトルで誰でも見ることができた。そして重要なタイトルだったのに、現在ではOAとしては提供されていない。今回審議対象なのはこのタイトルをCLOCKSSにいれてOAにすべきか、ということ。これを議論し投票によって決める。CLOCKSSは新しい取り組みなので、諮問委員会は電話会議やWEB会議で少なくとも年1回開催している。

<コンテンツの保存>
次にCLOCKSSでの実際のコンテンツの保存のされ方を説明したい。基盤となるテクノロジーとして LOCKSSと呼ばれるものを使っている。1998年にこの技術をはじめた。スタンフォードのデビットなんとかさん。今日も後ろに座っている。この LOCKSSはよくできたテクノロジーで、スタンフォードの教授陣に勝って、19th ACMシンポジウムで賞をもらっている。

具体的には、まず出版社からコンテンツが図書館に送られる。つまりアーカイブの完全なコピーをそれぞれの図書館が持つことになる。ライブラリーは記憶を保存する機関だし、何千年もそれをやってきている。この仕組みの中でも図書館が、自分が持っているものを保持するという点は変わらない。しかしそれぞれがコンテンツを置いておくだけでは十分ではない。CLOCKSSではそれぞれのコンテンツが置いてある場所はすべて監査されている。デジタルコンテンツは、ご承知のとおり、0と1でできているわけだが、例えばそれがひっくり返るなどして壊れることがある。1111が1110になってしまう。そうするとそのコンテンツは壊れて読めなくなってしまう。私はこれをbit rot(ビットが腐る)と呼んでいるが、正しくはdigital degradation(データの劣化)と呼ぶべきかもしれない。それぞれの場所で持っているものに対しての監査を随時やっている。それによって壊れたものが修復されることになる。つまりコンテンツが保持されている場所が世界各地に分散し冗長化されていることが重要である。そのため例えばどこかで地震などがあっても大丈夫なようになっている。集中型の保存システムだとメインの保存コンテンツが壊れるとそれがバックアップにまで広がってしまうことがある。蜘蛛の糸で例えると集中型はシングルスパイダー、つまり蜘蛛の糸1本なのに対して、我々はSpider Webである。現在の参加メンバーはアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、香港、日本にいる。今年中にヨーロッパで2つ追加される予定である。日本はコンテンツを保存している数少ないノードの一つであり大変重要である。

<無償でのアクセスの提供>
CLOCKSSでは出版社から提供されなくなったタイトル(これをトリガーと呼んでいる)について出版者から提供をうけ、無償で提供するという事をやっている。現時点で3タイトルがOAで提供中である。これらはいずれも以前は購読型のモデルで提供されていた。そのためこれらの雑誌は2箇所で見ることができる。1つはは有料で1つは CLOCKSS。CLOCKSSに入らないと、OAだったものでも見られなくなってしまうことがある。PubMed Centralは例外だが。この3誌だが、2つはSage、1つはOUPのものである。
●"Graft"、"Auto/Biography"、"Brief Treatment & Crisis Intervention"の3誌

実はCLOCKSSに来るアクセスの10パーセントはこのOUPのタイトルへのものである。実際に今アクセスしている人には、もともとこのタイトルを購読していた人もそうでない人もいる。1つ問題点として、フォーマットが変わったときにどうなるか。というのがあるが、必要ならばCLOCKSSのテクノロジーがフォーマットをマイグレーションするので、それは心配いらない。OAのコンテンツはCreativeCommonsのライセンスで提供することが可能である。

●ここでCC知ってますか、と言われたのだが、会場の反応が薄かったので、日本ではCCは知られていない、とか思われたかも知れない。これはちょっと残念。

もしあなた方が出版社とやり取りをすることがあったら是非CCを検討してほしい。いったんCCを使って、コミュニティとして保存を認めると、それ以降また交渉する必要がなくなる。つまり何か変更があった時に、また改めて交渉する必要がない。

<コスト>
CLOCKSSが法人化したのはまだ先月のこと。しかし時間をかけてコストを下げていくことを定款で決めている。実は2週間前に小規模出版からもらう料金は引き下げた。
●ここで料金表や参加している出版者のリスト等のスライド
(その出版者のリストのうち)グレーの文字のところはまだ交渉中で参加が決まっていない。ただしその中でACM(Association of Computing Machinery)は今週メンバーになった。料金を引き下げるにあたって日本の学協会が参加することに非常に期待している。

図書館のサポーティングフィーについて。他のアーカイブと比べるときわめて割安だと思う。しかしCLOCKSSはただのサービスを受けるだけでなく、参加したら運営にもかかわっていく必要がある。日本のNIIには技術的な活動をかなりしてもらっている。またコンソーシアムとして参加するとさらにディスカウントがある。

<まとめ>
CLOCKSSの4つの特徴。
・図書館と出版者が対等意参加してコミュニティを運営
・コンテンツが出版社から入手できない場合にCLOCKSSを通じて無償で提供する。
・図書館がコンテンツを保存するという役割は図書館が担うものということを再認識している。
・コストが低い。誰でも参加できる。それは特に今のような景気が悪いときに料金が高すぎて維持できなくならないようにということも考えているからである。

<質疑応答>
後藤先生@日本女子大学 が司会

高橋さん@エルゼビア:実際にOAになっている例があったが、なぜ出版社が自身でOAにしないでCLOCKSSを使っているのか。

R:出版社に聞いてほしい(笑)。OUPのものはエディターが亡くなったから続けられなかったと聞いている。OUPの方も会場にいるようなので後で補足があれば。Sageは定期購読収入では採算が取れなかったということのようである。我々としてはこの2つが大手の出版者のものであるということに驚いた。トリガーとなるものはもっと中小の出版者のコンテンツだと思っていた。

なんとかさん@文科省:図書館や出版社はどのようにこの費用負担をしているのか。

R:図書館の場合は保存の予算あるいは資料費から出していることが多い。アメリカの場合は会費のための費用をつんでいるところがあるのでそこから出している場合もある。日本は?

なんとかさん@文科省:個々の例はわからないが、聞きたいのは図書館と出版社がどのような形で経費を分担しているのかということ。

R:我々が経費をどう積算しているかというと、構築にどれぐらいかかるかとどれぐらいの支持を受けられそうか=何社の出版者、どれぐらいの数の図書館が参加しそうか。参加している出版者、図書館の頭割なので、だからもっと参加者が増えればコストが下がる。CLOCKSSのコストが安い理由としては、新しいインフラ構築をしているわけではないということがある。既存のインフラを活用しているものである。技術開発(LOCKSS)にかかったものはすべて回収済みという点もある。
どう責任分担しているかという点だが、議題を参加者に提示し議論し投票で決めている。例えばアーカイビングそのものに関する方針決定。先ほど説明したような、あるタイトルをCLOCKSSに入れるかどうかといったことは参加メンバーが決めている。

OUPの人:OUPは自分でサーバを持っていない。7割が学会誌で学会側が出版しないとしたものを運営していく金がない。Highwire Pressで運営しているので、維持していくには金がかかる。あとOUPの雑誌と言っていたが正確には学会名が入るべきだと思う。

R:もともとHighwireにも関わっていたのでにはHighwireには感謝している。

安達先生@NII:仕組みはすごく巧妙にできている。disasterに強い。しかしそういう災害もあるが、システムへの影響としては、ヒューマンエラーとかバグとかフォーマットのエラーとかもあるし、そういうものの方が大きい。フォーマットについては全てが標準化されているというものでもない。そのあたりをどうしているか。

R:一般にデジタルコンテンツへの脅威としては次の2つがあげられる。すなわちstupid humanと資金切れである。サンディエゴのスパコンのセンターでは20年間のエラーのうち75%がオペレータエラーだったという調査がある。

David:HTML やPDFの多くはスタンダードを満たしていないというのはそのとおりだが、だからといってブラウザとかは読めない表示をしてしまうということにはなっていない。なので、出版社が出した形で保存しておけば読者は読めるだろうと考えている。読めなければ出版社に文句を言えばよい。この点についてはブログで議論しているので、そちらも見ていただきたい。
http://blog.dshr.org/

早川さん@東洋大学図書館:日本の大学の学部生は英語論文を読める人が少ない。何か考えているか

R:Science Directは購読しているか。
早:yes

R:あれは全部英語でしょう。それにあえて購読料を払っているということは、それが重要だと思っているということだ。CLOCKSSはそれに対してのアクセスを担保していくことを可能にするものだ。先ほど見せたような出版者が参加しているが、この出版社リストにどこが足りないのかというと、日本の学協会出版社も同じレベルがあるのではと思っている。日本のコンテンツを保存したいという思いもある。
それから今回来日するにあたって日本語の名刺が必要だろうと思って、Googleで名刺の翻訳をした。それをスタンフォードの日本語のできるスタッフに見せてみたら正しくて驚かれた。googleで翻訳すればよいのでは(笑)翻訳の質は低いかもしれないが5年前にはこうしたものはなかった。

小野さん@一橋大学
一橋は小さい図書館だが、そうした小さい図書館でもCLOCKSSに貢献できるか。例えばこのために保存のサーバを置くようなことはできないが。

R:NIIが技術的なことはやっている。まずは参加料金が出せるのか、払えないのかどうかを教えてほしい。いったん参加すると同じ発言権を持つ。アメリカでも小規模な単科大学も入っている。その個々の参加が重要である。

小野さん@一橋大学:日本の大学は機関リポジトリもやっているが、IRのコンテンツもCLOCKSSの枠組みで保存できるか。紀要とか査読の無いものもある。

R:現時点でCLOCKSSではIRのコンテンツの保存サービスはやっていない。アメリカの人はLOCKSSの技術を使ってコミュニティベースでそれをやっているところがある。図書館が集まってやっている。IRに対しても保存をやってほしいという声もあるが、CLOCKSSはまだ若いのでまずは成長拡大してからと考えている。

R:紀要とかを出しているのであれば出版社として参加するということもできる。小さいところの出版社が出しているものこそ、保存する必要があると考えている。小さいところのコンテンツのほうがはるかに失われるリスクが高い。この出版者リストのうち、Sageをのぞくすべての出版社はいずれもスタンフォード大より長い歴史を持っている。なので日本語、小さい学協会をどうするかが関係する問題だと思う。

小野:もし非営利の団体として(商業出版者ではないものとして)参加するとすると参加料金は一番安いものになるか。

R:yes

吉田さん@東大情報基盤センター
先ほどの例だとHighwireからCLOCKSSにある時点で移ることになるが、その周知というのは?何かルールがあるか。

R:先ほどの3タイトルは全部Highwire Pressで出されていた。Highwireはスタンフォードの一部。どういう形でトリガーがかかったかということがある。この3タイトルはもともとコンテンツ自体はCLOCKSSのアーカイブにあった。出版社のほうからこれはやめるという通知を受け、それを受けて無償で提供するかどうかを理事会で検討した。CCで提供するというのは大きな転換で引き換えせない重要な決定である。CLOCKSSのルールで無償で提供するためには75%の賛成と反対が3メンバー以内でないといけない。

R:それからCrossrefへの通知も行う。利用者への通知という点では、まずは出版社のほうが通知するし、CLOCKSSのほうでもアナウンスをするしCrossrefも使うし。利用者がOAのコンテンツをどうやって入手するかというと検索エンジンか図書館のERMSということになり、あまり意識しなくても大丈夫なものだと思う。
●ERMSと言ってましたが、文脈的にはリゾルバですね。

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