「現代萌衛星図鑑」は、ちょっと凄い本だぞ
ちょっと旬を逃してしまったかもしれませんが、ちょっと凄い本を読んだので、今さらながらのご紹介。
「現代萌衛星図鑑」しきしまふげん (著), へかとん (イラスト), 松浦晋也 (監修) (amazon)
また「萌え」か……などと、侮ってはいけません。
この手の萌え本の多くは、ちょっとオタクっぽい内容の本に、むりやり美少女のイラストやマンガをからめただけのものがほとんどです。要するに「萌え」なんて有っても無くてもどうでもよくて、ハッキリ言ってしまうと「萌え」成分はただの宣伝用のコピーでしかなかったりします。
しかし、この本はそんなニセ萌え本とは、ひと味もふた味も違います。
著者の人工衛星に対する愛は、尋常ではありません。さらに、愛の対象はマシンとしての衛星そのものだけにはとどまらず、衛星を開発する人々、運用する人々へも向けられます。
この尋常ではない愛を表現するためには、衛星が擬人化されるのは必然だったのでしょう。衛星達は、日本の宇宙開発をささえ、応援する全ての人々の愛娘として具現化され、ありったけの愛情と共に描かれます。
また、擬人化されることにより、彼女たちが産まれた社会的な背景や与えられた任務、その人生の歩み、そして最期の時まで、実に自然にかつドラマチックに描かれます。特に、3億キロの彼方で孤独に耐えながら必死にミッションをこなす「はやぶさ」と、愛娘の帰還を地球で待つ親たちのシーンは、涙無しでは読めません。
著者はJAXAのプロジェクトチームにも直接取材したそうですし、さらに監修はかの松浦晋也氏ですから、技術的な内容についてはおそらく心配有りません。参考文献もちゃんとあげられており、これは一般教養としての科学本のひとつの究極の形と言えるかも。
萌え萌えが好きな人、科学が好きな人、そして日本の宇宙開発について真面目に勉強したい人にもおすすめです。
もし続編がでるのなら、日本初の衛星「おおすみ」と、彼女を生み出した親たちの苦労も取り上げて欲しいなぁ。
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