スラスタ、正しくは「スラスター・モーター」です。噴射式エンジン、ロケット・モーターのうち主推進に使用しない姿勢制御用の物、これをスラスター・モーターと言います。ただ、ロケット・モーターと言う時は大掛かりな「点火装置付き」の物を言う事が多く、スラスターと言うと「混合すれば自然発火するもの」や、そもそも「点火しないもの(はやぶさのイオンエンジンの様な物)」を言う事が多いようです。
ちなみに「特に推力が低くて微調整に使われるもの」をヴァーニア・モーターと言いますが、これも「ガンダムで間違えて覚えている人が多い」と思いますよ(笑)。
推力によって分類してあるのが「スラスター」と言う事になります。ロケット>スラスター>ヴァーニアになる訳です。
アポジモーター、正しくは「アポジ・キック・モーター」です。人工衛星などに搭載されているロケット・モーターのうち、「楕円軌道の遠地点(アポジ)で軌道投入の際に使用されるロケット・モーター」の事で、これは「用途による定義」です。ちなみにこの軌道投入動作を「アポジ・キック」と言います。アポジ・キックに使われるロケット・モーターなので、アポジ・キック・モーター。
人工衛星の打ち上げでは、まず第一段階で比較的高度の低い「低高度円周軌道」に投入されます。これを「パーキング軌道」とも言います。
GPS衛星や、静止衛星などではさらに高高度の衛星軌道を描きますので、パーキング軌道から、メインの軌道へ「上げる」操作が必要になり、このときに使う楕円軌道が「トランスファ軌道」と言います。
第二段階ではこのトランスファ軌道への投入を行いますが、これは楕円軌道の「近地点」にあたるので、この操作を「ペリジ(近地点)・キック」ともいい、このときに使われるロケット・モーターが「ペリジ・キック・モーター」になります。
トランスファ軌道の最高地点は、最終的に予定されている円軌道になります。すなわち、最高点、ペリジで最終円軌道に投入する訳で、この時の操作が「アポジ(遠地点)・キック」、そこで使われるのが「アポジ・キック・モーター」になる訳です。
ちなみに、以前はペリジ・キックとアポジ・キックには、それぞれ別の固体ロケットを使用していたのですが、近年では液体ロケットを一機だけ搭載して、「ペリジ/アポジ・キック・モーター」として使う事が主流です。固体ロケットでは再点火できないのでそれが出来なかったのですが、液体ロケットを使えば再点火ができる訳なんですね。
ですから「用途による区別でも、構造による区別でも、時代による区別でも、総称でもない」のです。
明確な区別はあるのですが、多くの人が「ガンダムでの誤用を信じている為に間違って使っている」のです。
アポロのスラスターは即応性を重視してノズルが固定されていますが、別に「ノズルの固定がスラスターの条件ではない」のですよ。
アポジ・キック・モーター、ペリジ・キック・モーター、主推進ロケット、姿勢制御用モーターなどは用途による分類になります。
ロケット・モーター、スラスター・モーター、ヴァーニア・モーターは「推力による分類」になります。