from The Official Xbox Magazine (UK)
http://www.oxm.co.uk/article.php?id=5666プリンセス、本、そして爆弾。これらはいったい何を意味しているのか?
まずは、ウェブサーフで偶然辿り着いてしまった人向けの注意書き。この記事はBraidの重大なネタバレを含んでいるので、もし君がこれからプレイするつもりがあるなら(それをお勧めする)、いますぐ立ち去れ。
前置き: これから述べる仮説には議論の余地があり、自由な解釈が可能だ。Braidのプロットは簡単に総括できるものではないし、それがまた面白いところでもある。ティムとは何者なのか? プリンセスは何者なのか? 彼らはどういう関係なのか?
それぞれの世界は互いに矛盾していて、ひとつのプロットに対して複数の意味を指し示しているように見える。しかしながら、君の同意を貰うため、はたまた反論されるため、あるいは君独自の論説を引き出すために、ここに簡単な考察を提示しようと思う。
エンディング:
気に留めるべき2つの事柄がある。1つ目は、最後のステージは実際はワールド1、つまり実際には物語の始まりだということだ。これはゲームの最終面として配置されている。
次に、最終面のパズルそのものが象徴するように、すべては逆に配置されている。これが謎を解く鍵だ。
最終面でティムは地下トンネルに到達する。上層からはプリンセスを片手に抱えた騎士が降りてくる。騎士は着地すると「はなさないぞ!」と叫ぶ。
プリンセスは一段高い台にジャンプし、騎士は「こっちだ!」と叫ぶが、プリンセスは「助けて!」と叫びながら画面の右側に逃げはじめる。君は炎の壁に追われながらも彼女を追いかける。プリンセスは君の行く手を阻む障害物を動かすためスイッチを操作し、君もまたプリンセスを先に進ませるためにスイッチを操作する。
逃亡劇の最後にプリンセスは彼女の自室に到達する。君がフェンスを伝ってその部屋の窓際まで辿り着いたその瞬間、閃光が奔り、プリンセスは眠りにつく。君はどうやっても彼女の部屋に入ることはできない。
真のエンディング:
君が時間を巻き戻すと、実際にそこで何が起こっていたのかを知ることになる。逃走するプリンセスを追いかけているのは、君だ。真実の彼女は君を閉じ込め、殺害するためにスイッチを操作している。君はスイッチを操作して彼女を捕らえようとする。
ステージの最後で、彼女は騎士に向かって「助けて!」と叫び、彼は「こっちだ!」とそれに返す。彼女は高台から彼の腕の中へ飛び込み、騎士は「はなさないぞ!」と言ったあと、彼女を抱えたままロープの先へと消える。
最終面の開始時点でティムは、騎士がモンスターなのだと認識している。だが実際には、ティムこそがプリンセスを追うモンスターなのだ。
エピローグの本について:
エピローグは、赤い本で分けられた、いくつかのシンプルな部屋で構成される。それとは別に、異なる視点で綴られたテキストが隠されている。それらを読む方法は下記の通り。
最初の部屋:赤い本を読む。女性の悲鳴を聞くまでその部屋を歩き回る。
次の部屋:落ちる。赤い本を読む。左の崖縁まで時間を巻き戻して、悲鳴を聞くまで背景の後ろを歩き続ける。
3番目の部屋:赤い本を読む。それから次の部屋まで進む。緑色の台の左端に立ち、時間を巻き戻す。(緑の本が閉じる音が聞こえる)それから3番目の部屋まで戻り、岩の裏側を歩く。
4番目の部屋:スイッチを動かして緑色の台を上昇させる。もう一度スイッチを動かして下降させる。赤い本の上に立つ。時間を巻き戻すとティムはを乗せたまま台が登りはじめるので、左側に走って岩の裏側を調べる。
原爆説:
エピローグのいくつかは、このような文章だ。
定規とコンパスを駆使して、彼は頭をひねった。リンゴが落ちる様子や、糸に吊るした金属製の球がねじれる様子をずっと観察した。彼はプリンセスを探しているのだ。見つけるまで、決して探すことをやめないだろう。もはや飢えのようだ。
定規、コンパス、リンゴが落ちる様子(ニュートンの万有引力)、糸に吊るした金属製の球(原子)はティムが科学者であることを示唆している。彼の、プリンセスの探索は、つまるところ何らかの科学分野のゴールなのだ。
「うまくいったな」誰かが近くで言った
「これで俺達はみんなクソッたれだ」と、別の誰かが言った
「これで俺達はみんなクソッたれだ(Now we are all sons of bitches)」は、ケネス・ベインブリッジ博士が、最初の原爆実験の後に放った有名な一言だ。
気品ある、堂々とした姿で立っている彼女。その体からは激しい怒りがあふれている。彼女は叫んだ。「私を邪魔するのは誰?」。その直後、怒りは消え去り、彼女は怒りの下に隠れていた悲しみを感じた。そしてため息のように、風に舞う灰のように、ゆっくりと息を吐いた
彼女には分からなかった。なぜ彼は、あんなふうにためらうこともなく世界の死に近づけたのだろう?
この隠された文章は、あるいは原爆投下直後の観点と読み解くことも可能だろう。
原爆説を取る場合、なぜゲームの開始地点が、火に包まれた町になっているのか、そして何故最後の絵が、燃える町の中で陰鬱な表情をした男性を描いたものになっているのかにも説明がつく。
また、このゲームのメインテーマがあやまちの償いと示されている事は、大破壊の象徴である原子爆弾を生み出してしまい、その過ちを巻き戻したいと後悔するティム、という構図にもよく似ている。
さらに、ワールドが進むにつれ、トーンが暗くなっていくことにも注目してほしい。これは原子爆弾の存在が、我々の世界に与えている影響を示しているのかもしれない。最初のワールドは明るく陽気に表現されているが、先に進むに従い暗く陰気な姿になっていく。
もうひとつ、ティムはがエピローグの最後で城に辿り着いたときの台詞は、原子爆弾の作成を仄めかしていることも考慮に入れてほしい:
でも、世界は彼と逆の方向に流れている。その世界に暮らす人たちは、どう思うだろうか。はじめは温かく輝いていた光もしだいに小さくなって、最後は消えてしまうだろう...もちろんお城も。われわれは、帰るところを失ってしまう。子どものころ無邪気に遊んだ場所、自分の家。希望も安心も完全に破壊されて、二度と元には戻らないだろう。
別の仮説としては、原子爆弾の完成ではなく、タイムトラベルの完成というものも考えられる。しかしながら、原子爆弾説の方がタイムトラベルのそれより、うまく一致する。
人間関係破綻説:
原爆説の難点は、それがエピローグの本だけを元に成り立っていることだ。他のワールドの本は、プリンセスについて異なる表現を使っている。
ワールド2の本:
恐ろしいモンスターにさらわれたプリンセスを探すティム
彼女がさらわれたのは、ティムがまちがいを犯したからだった
一度や二度じゃない。ティムは彼女がまだとなりにいた頃に、何度も間違いをくり返した。ふたり過ごした日々の思い出はすこしづつぼやけて、別のものにすりかわってしまった。ひとつだけはっきりと思い出せるのは、去っていく彼女のみつあみ(Braid)が、冷たく揺れる様子だけ。彼のまちがいが引き起こした出来事だった
ワールド1から繋がるこれらの文章は、ティムの追い求めるプリンセスが、「恐ろしいモンスター」によってさらわれたと述べている。ティムの間違いとは何だったのだろうか? さらに、この最初のワールドのゲームメカニズムは唯一、時間を巻き戻して失敗を無かったことにできる、それだけだ。
ティムの犯したまちがいに失望したプリンセスが、彼の元から離れたという説も取りえる。もっとも、彼の"まちがい"については多様な解釈が可能だが。
ティムは彼女に暴力を振るったのかもしれない。(彼は暴れようとすら思った エピローグ)
ティムは仕事のために彼女のことを放置したのかもしれない。(彼女には、彼の情熱がどこから来るのかまったく分からなかった。少しづつ彼の顔に深いしわをきざんでいく強烈な何か。そもそも彼女は、そこまで彼のことを理解していなかった。しかし彼は、世界で最も親しい人間のように彼女を抱き寄せ、運命の人にだけ使われる言葉を耳元でささやいた ワールド5)
ティムはアルコール中毒だったのかもしれない。(ワールド2と3の絵画の中にはアルコールが描かれている)
ティムは早すぎた結婚をしてしまったのかもしれない。(けれど指輪は自己主張する。他人の目には光る警報機のように映る。近づいてくる他人の動きもためらいがちになってしまう。疑いの心、不信感。交流はティムが話しかける前に絶たれてしまう ワールド6)
ワールド6ではまた、時間の流れを遅くするリングが登場する。リングは近づく物体の動きを妨げる。あるいはこれは、結婚(指輪)が、プリンセスを追い求めようとするティムの活動を妨げたことを意味するのだろうか?
君の説は?
Braidの意味するところについて、まずは2つの説を提示した。このゲームのプロットはさまざまな解釈を許容している。あるいは、両方の説が共に正解なのかもしれない。何故プリンセスはいつも別の城にいるのだろうか? もしそれに意味が込められているとするならば、城の恐竜は何の象徴なのだろうか?
この記事はBraidを考察するための単なるスタートポイントにすぎない。だから、この説に同意するか、それとも同意しないか、コメントを返してほしい。さあ、君の意見を聞かせてくれ。 |
ダメ元でOXMに翻訳転載許可を尋ねたら、雑誌サイトの記事なのにマッハの勢いでOKを頂いてしまいました。Ryan Kingさんに感謝致します。 Ryan King, Thank you very much.
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