新製品レビュー
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II(外観・機能編)
手ブレ補正がさらに進化した多機能ミラーレス
Reported by 永山昌克(2015/2/23 10:00)
オリンパスから、マイクロフォーサーズ準拠のミラーレスカメラ最新作として「OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II」が登場した。2012年に発売された「E-M5」の後継であり、外観デザインから画質、機能、操作性まであらゆる部分をブラッシュアップしている。
中でも注目は、5軸対応のボディ内手ブレ補正がさらに強力になったこと。補正の効果はシャッター速度5段分をうたい、同社では世界最高としている。
動画では5軸手ブレ補正に電子補正を加えることで、いっそう確実な補正ができることや、手ブレ補正の応用として40M相当のハイレゾショットに対応したことも見逃せない。
発売は2月20日。価格はオープンプライス。税込の実勢価格はボディのみが12万円前後、14-150mm IIレンズキットが17万円前後、12-50mm EZレンズキットが14万円前後。今回のレビューでは、その外観と機能をお伝えする。
より引き締まった防塵防滴の小型ボディ
ボディは、ひと目で「OM-D」シリーズだと分かる、お馴染みのレトロな一眼レフ風スタイルとなる。前モデルE-M5と比較した場合、手にしたときのサイズ感はあまり変わらず、全体から漂うクラシックな雰囲気も似ている。だが厳密には、外見上の共通点はほとんどなく、各部のデザインは様変わりしている。
目立った変更のひとつは、ボディ天面中央にあるペンタプリズム風のファインダー部がより小さく引き締まった形状になったこと。これは、前モデルではホットシューの下にあったアクセサリーポートを省略したことが大きい。その結果、ボディの高さは約4.6mm低くなり、バッグなどへの収納性がよくなっている。
もうひとつは、液晶モニターが従来のチルト式からバリアングル式に変わったこと。また、電源スイッチの位置は背面から天面へと移動し、各種のボタンやダイヤルのレイアウトも一新されている。モードダイヤルにロック機構を設けたことや、背面にファンクションレバーを備えることは、最上位機E-M1にならった改良といえる。
ボディのカラーバリエーションは、シルバーとブラックの2色が用意。今回使ったブラックモデルの場合、表面にシボ塗装を施した高品位な外装で、手触りもよく高級感が漂っている。
グリップ部は、前面にゆるやかな膨らみがあり、背面には親指を支えるための突起がある。その形状と素材は前モデルから改良され、わずかだが親指のフィット感が少し向上した。ただし上位機E-M1のような大型グリップとは異なり、大きなレンズを装着した際のホールド性はもの足りない。必要に応じてオプションのパワーバッテリーホルダーや外付けグリップを利用するといいだろう。
シリーズ初のバリアングル液晶モニター
液晶モニターは3型/約104万ドットの可動式で、静電容量方式のタッチパネル操作に対応する。これまでのOM-Dシリーズは上下方向にのみに動くチルト式だったが、今回は左右に開いてから上下に動かすバリアングル式となった。どちらを好むかは人によって分かれるだろう。
バリアングル式がチルト式に勝るメリットは、通常の横位置撮影だけでなく、カメラを縦位置に構えた場合でもハイポジションやローポジションでの撮影がしやすいこと。加えて、液晶面をレンズ側に向けることで自分撮りがしやすくなることもバリアングルの利点といえる。
デメリットは、ハイポジションやローポジションで撮ろうとする際、いちいち液晶を開いてから回転させる必要があること。チルト式に比べるとワンアクション多くなり、速写性でやや不利になる。
また、液晶を横に開いたままの状態では、アイセンサーによる背面液晶とEVFの自動切り替えが作動しないので、自動切り替えを使いたい場合には液晶を閉じる動作が必要になる。やや面倒だが、この点は慣れによって解決するかもしれない。
それよりも個人的に気になったのは、ボディ側面の端子にケーブルレリーズなどを装着すると、ケーブルとバリアングル機構が物理的に干渉してしまうこと。カメラを三脚にセットしてハイポジションからの静物撮影を試そうとしたが、ケーブルおよび端子カバーが液晶に当たってしまうため、ケーブルレリーズかバリアングルのどちらかを諦めるしかなかった。小さなボディにさまざまな装備を凝縮しているので多少仕方ないとはいえ、各部のレイアウトに一工夫欲しいところだ。
心地よいレリーズ感と短いタイムラグ
使い勝手の面では、シャッターボタンの押した際のきびきびとした反応のよさに好印象を受けた。レリーズタイムラグは従来の約0.050秒から約0.044秒に短縮され、よりスピーディで小気味よい撮影が可能になった。
また、前モデルでも小さめだったレリーズ時の振動や作動音は、いっそう低減されている。シャッター音は小さくて短く、気持ちのいい音だ。
そのうえで、さらに振動と作動音を抑える機能として「低振動撮影」と「静音撮影」が用意されている。低振動撮影では電子先幕シャッターが作動し、静音撮影では先幕と後幕の両方が電子シャッターになる。両機能とも、微小なブレを防ぎたいときや、音を出したくないシーンで重宝する。
AFには、同社独自の「FAST AF」システムを採用する。上位機E-M1が採用する「DUAL FAST AF」とは異なり、像面位相差AFは非搭載でコントラストAFのみとなる。
とはいえ、センサー駆動速度の高速化やAFアルゴリズムの改善によって、前モデルに比べてAFスピードは高速化している。試用では、新旧2台で同一シーンを撮り比べてみたが、特に薄暗いシーンでの合焦速度が向上したことを実感できた。
静止画にも動画にも有効な5軸手ブレ補正
手ブレ補正は、磁力によって撮像センサーを常時動かすVCM方式で、これまでと同じく5軸補正に対応する。5軸とは、一般的な2軸(X軸、Y軸)の角度ブレ補正に、マクロ撮影で生じやすいXY軸のシフトブレ補正と、長秒撮影時で目立ちやすいZ軸の回転ブレ補正を加えたもの。前モデルE-M5で初搭載され、その後、E-P5やE-M1などにも採用されている機能だ。
CIPA準拠による手ブレ補正の効果は5.0段分。E-M1の4.0段分に比べて1段上がったことになる。
試用では、高倍率ズームのテレ側(焦点距離300mm相当)を1/30秒で問題なく撮影でき、慎重に構えれば1/15秒で約8割、1/8秒で約5割のカットをぶらさずに撮影できた。ワイド側(焦点距離28mm相当)については、1/8秒は問題なく、1/4秒なら約8割といったところ。常に5段分の補正が可能とはいえないが、条件によっては公称値どおりの効果がある。
補正モードは、カメラが自動的に最適な補正を判断するオートのほか、全方向補正を行うモード1、横位置流し撮り用のモード2、縦位置流し撮り用のモード3が選択できる。
画像に加えて、ファインダー表示のブレを補正できることや、連写中手ブレ補正のオン/オフを選べることは前モデルから受け継いだ特長だ。静止画の場合、シャッターボタンの半押しによって補正が作動し、補正中は小さな作動音が鳴るが、特に気になる音ではない。
動画の手ブレ補正については、センサーシフト式5軸補正と電子補正を組み合わせたモード1と、センサーシフト式5軸補正のみのモード2が用意される。手持ちでさまざまなシーンを撮影したが、いずれも安定感のある映像が得られた。
小さなボディに盛りだくさんの撮影機能
そのほかの新機能としては、センサーをずらしながら撮影し合成することで高画素データを生成する40Mハイレゾショットや、短い動画をカメラ内でつなぎ合わせてショートムービー作品に仕上げるクリップス機能などを備える。これらについては、次回の実写編で取り上げよう。
また、上位モデルE-M1が昨年のファームウェアVer.2.0で対応した各種機能も搭載する。すなわち、夜空の星や車のライトを切れ目のない光跡として表現できる「ライブコンポジット」や、シフトレンズで撮影したように遠近感を補正する「デジタルシフト」、動きに応じてカメラが最適なシャッター速度を判断する「流し撮り」モード、アートフィルターの「ヴィンテージ」、「パートカラー」などだ。
さらに、PCからのカメラコントロールや、Wi-Fiによるワイヤレスリモート撮影、インターバル撮影、多重露光、HDR、マルチアスペクト、ピーキング、水準器、タッチシャッター、フォトストーリー、タイムラプス動画、クイック/スロー動画、ムービーエフェクト、カメラ内RAW現像など、搭載機能は盛りだくさん。
撮像素子は4/3型有効1,605万画素のLiveMosセンサーで、画像処理エンジンには「TruePic VII」を採用。連写は最高10コマ/秒、動画は最大1,920×1,080/60pのフルHD記録に対応する。
星空から手持ちマクロまで何でも撮れる高機能機
トータルとしては、満載された撮影機能によって幅広いシーンに対応できるカメラだと感じた。設定できる機能は非常に豊富で、その分メニューの内容は濃い。カスタムメニューには実に110以上の項目があり、その意味を理解し、ひとつひとつを設定するのはそれなりにたいへんだ。前モデルのユーザーである私も、役割をまだ把握できていない項目がある。
そんな複雑なメニューがビギナーにはハードルになるかもしれないが、しっかりと設定すればするほど使い勝手がよくなることは確かだ。
もちろん「iオート」モードをはじめとする、押すだけで気軽に撮影できる機能もいろいろと用意されている。だが、オート機能はあまり積極的に使う必要はないと思う。E-M5 Mark IIの本領が発揮されるのは、機能を細かく使いこなし、込み入った設定を駆使して撮影したときだ。オートよりもマニュアル、デフォルトよりもカスタマイズが、このカメラには似合っている。