交換レンズレビュー
XF 10-24mm F4 R OIS
15mm相当からの超広角を実現した使いやすいズームレンズ
Reported by澤村徹(2014/6/20 08:20)
XF10-24mmF4 R OISは、富士フイルムXマウントレンズの超広角ズームという位置づけだ。金属鏡胴を採用した本格ズームレンズで、ズーム全域で開放F4を実現している。
手ブレ補正機能「OIS」も搭載し、暗所撮影にも挑みやすいレンズだ。焦点距離は10-24mmで、Xシリーズのミラーレス機に付けると35mm判換算15-36mm相当となる。
ワイド端でパースを強調したランドスケープ、テレ端でストリートスナップなど、様々なシーンで活用できるレンズと言えるだろう。
デザインと操作性
本レンズの全長は87mmで、X-T1に装着するとやや大ぶりな印象を受ける。ただし、インナーフォーカスを採用しているため、ズーミングによって全長が変化しない。この点、ハンドリングしやすいズームレンズと言える。
鏡胴は金属製で、光沢感の強いブラック塗装が施されている。フォーカスリングと絞りリングも金属製になっており、X-T1やX-Pro1の重厚さに相応しい外観だ。
操作リングはレンズ先端から、フォーカスリング、ズームリング、絞りリングの順に並んでいる。現行ズームレンズで絞りリングを搭載しているのはめずらしい。ただし、鏡胴に絞り値の刻印はなく、ボディの液晶やEVF上で絞り値を確認する仕様だ。
リング類はそれぞれ十分なトルク感を備えており、特にフォーカスリングのヌメッとした感触が心憎い。
側面には絞り制御の切り替えスイッチがあり、このスイッチとシャッタースピードダイヤルをともに「A」にセットするとプログラムオートに、絞りリングのみを「A」にするとシャッタースピード優先AE、シャッタースピードダイヤルのみを「A」すると絞り優先AEになる。Xシリーズではおなじみの操作だが、他社製品から乗り換えた直後は少々戸惑うかもしれない。
AF動作はステッピングモーターの採用が功を奏し、高速に動作する上にほとんど動作音がしない。今回、中央1点とマルチを切り替えながら撮影したが、どちらのモードでも俊敏な動作でストレスを感じることはなかった。
遠景の描写は?
本レンズの特徴を端的にいうと、絞り値による描写変化が少ないレンズだ。
開放F4からシャープな描き方で、周辺光量落ちもほぼ感じられない。F5.6まで絞れば手前から奥までかっちりとピントが合い、四隅の明るさとディテール描写も申し分ない。歪曲や色収差もほぼ気にならない。こうした描写はテレ端ワイド端を問わず、一貫していた。
一方、今回撮影に用いたX-T1は点像復元技術に対応しており、F11まで絞ってもディテール描写が甘くならない。レンズ側の機能ではないものの、本レンズで風景撮影する際にはアドバンテージのひとつとなるだろう。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ボケ味は?
本レンズはマクロモードで最短撮影距離24cmまで寄ることができ、近接開放ではそれなりに前後をボカした撮影が可能だ。ボケ味は前ボケ後ボケともにクセがなく、広角マクロを楽しみやすい。
なお、もともと被写界深度の深いレンズなので、1段以上絞った状態ではボケを活かした撮影は難しくなる。
合焦部は精緻でシャープな描き方だが、線が太くなりすぎることはない。このあたりのさじ加減が好印象だ。
逆光は?
今回、太陽を入れた作例はゴーストとフレアがもっとも大きくなる位置で撮影した。赤い斑状のゴーストが気になるものの、画像全体ではコントラストの低下が少なく、シャドウがよく締まっている。
意図しなければここまでゴーストとフレアは大きくならないので、太陽が入り込むシーンも躊躇なく撮れるだろう。
まとめ
本レンズの魅力は、やはりAPS-C機で35mm判換算15mm相当の撮影を実現している点だろう。強烈なパースペクティブが、見慣れた光景を異世界に変換してくれる。開放から周辺減光がほとんど感じられず、開放でクリアにシーンをとらえられる点もよい。
また、手ブレ補正機能も相まって、暗所でも気後れせずに攻めていける。X-T1との組み合わせでは諸収差がほぼ気にならず、撮影セッティングを問わず、安定した描写力を誇る広角ズームレンズと言えるだろう。