ファーストインプレッション
“レンズスタイルカメラ” ソニー「サイバーショットQX10」試用レポート
一般的なカメラにない面白さ。Xperia Z1の実写も掲載
Reported by 小山安博(2013/9/9 13:33)
ソニーは、ドイツ・ベルリンで開幕した家電関連イベント「IFA 2013」において、「レンズスタイルカメラ」と呼ばれる、交換レンズのような形状のデジタルカメラ「サイバーショットDSC-QX10」、「同DSC-QX100」を発表した(いずれも国内発売未定)。今回、ソニーから提供されたQX10をIFAの会場付近で試用してみた。
無線LANでスマートフォンと連携
QXシリーズは、円筒形の交換レンズ型の独特なデザインを採用しており、モニターを搭載せず、シャッターボタン、電源ボタンといった、最小限のボタンしかない。電源を入れて、シャッターボタンを押せば、そのまま撮影はできるのだが、モニターがないため、構図や撮影画像の確認ができない。
このレンズスタイルカメラは、ソニーモバイルが同時に発表したAndroidスマートフォン「Xperia Z1」などと接続し、スマートフォンをモニター代わりに使うことが前提のカメラなのだ。
用意されているのは、「サイバーショットDSC-RX100M2」をベースにしたQX100と、「サイバーショットDSC-WX200」をベースにしたQX10の2機種。基本的なスペックはベースモデルと同等で、QX100は1型センサーを搭載。WX200は、光学10倍ズームレンズを搭載している。
カメラとの接続のために、スマートフォンにはあらかじめソニーのアプリ「PlayMemories Mobile」をインストールしておく。iOS、Androidの両方に対応しているが、特に簡単なのがAndroidだ。
最近のAndroidスマートフォンはほとんどがNFCを搭載している。おサイフケータイのような非接触で通信が行なえる機能だが、これを利用し、QXの上部にあるNFCマークと、スマートフォンのNFC(おサイフケータイ)マークを合わせてタッチすると、自動でQXの電源が入り、スマートフォン側ではPlayMemories Mobileアプリが立ち上がる。
そのまま待つと、QXの無線LANが起動して、スマートフォンの無線LANがそこに接続するようになる。接続が成功すると、スマートフォンの画面上にQXのモニターとして、レンズを通した景色が表示される。
iPhoneのように、NFC機能がないスマートフォンの場合は、カメラの電源を入れ、スマートフォンの無線LAN設定からSSIDとパスワードを登録して、接続操作をする必要がある。一度入力すれば登録作業はいらないが、カメラの無線LANに接続するための操作はその都度必要だ。
iOSでも、「無線LANを起動している」、「別の無線LANに接続していない」という状態だと、カメラの電源をオンにすると、自動的にカメラと接続してくれるので、PlayMemories Mobileアプリを起動すれば利用できる。NFCを使ってAndroidを利用する場合は「アプリが自動起動する」、「無線LANがオフでも自動でオンになる」、「ほかの無線LANに接続していても接続が切り替わる」といったメリットがあり、こちらのほうが簡単だ。
PlayMemories Mobileをモニターとすることで、通常のデジカメのように使える。無線LANで画面表示を行なっているため、多少のタイムラグがあり、ズームアップして動きの速い被写体を撮影する、といった撮影は難しいが、風景撮影や記念撮影などでは十分。試用してみた限りは、Xperia Zよりも、同じくIFA 2013で発表された最新スマートフォンのXperia Z1やiPhone 5の方が快適に動作することが多く、iPad miniでも動作は快適だったので、CPUやさまざまなハードウェアスペックが影響してそう。基本的には最新のパワフルなモデルを使った方がよさそうだ。
スマートフォンのカメラとして使う
実際に撮影してみよう。カメラはQX10、スマートフォン側はXperia Z1を使っている。このXperia Z1には、QXシリーズを装着できるスマートフォンカバーが用意されており、これを使うと、文字通りレンズ交換するように、レンズスタイルカメラをマウントし、カメラのように撮影できる。
Xperia Z1はNFCとPlayMemories Mobileアプリを搭載しているので、画面をオンにして背面のNFCと、QX10の上部にあるNFCをタッチする。するとPlayMemories Mobileが起動し、無線LAN同士で接続される。接続方式はWi-Fi Directだ。
NFCでのタッチから、カメラとスマートフォンが接続されるまでの時間は約15秒。周囲の無線LAN環境によって時間は前後するが、屋外や周辺に無線LANがあまりない環境だと安定して接続する。IFA会場は、多くの無線LANが飛び交っており、接続に失敗することもあった。これは、QXシリーズの無線LANが2.4GHz帯にしか対応していないせいもあるだろう。混信の可能性の薄い5GHz帯の無線LANに対応していれば良かった。
NFCタッチすれば、カメラの起動から接続まで行なわれるので、操作は非常に簡単。いったん接続したあとは、PlayMemories Mobileアプリを起動し、カメラの電源を入れ、アプリから接続をする、という方法でも接続できる。iOSの場合は、無線LANの自動接続さえ行なわれれば、カメラの電源を入れればアプリ側から再接続できる。
あとはスマートフォンのディスプレイをモニターとして利用し、通常のカメラのように撮影すればいい。画面上には、シャッターボタン、ズーム、モード切替が表示され、シャッターボタンをタッチするとピント合わせと撮影が行なわれる。画面上をタッチすると、任意の位置でピント合わせが可能。
モード切替では、おまかせオート、プレミアムおまかせオート、プログラムモードの切り替えができる。QX100に関しては、さらに絞り優先オートの設定も可能で、画面上のタッチで絞りの操作もできる。
機能としてはこれぐらいで、基本的にはオート撮影で使うカメラと言ってもいい。
【訂正】ホワイトバランスの設定ができないと記述しましたが、実際には可能です。お詫びして訂正いたします。
この辺りはもったいないところで、今後、さらなる機能拡張を期待したいところ。ソフトウェアとしては反応速度の向上も期待したい。
撮影が終了すると、自動的に画像がスマートフォンに転送される。転送時間は2~3秒ほど。カメラ側にはmicroSDカードスロットがあり、同時にメモリカードにも画像が保存される。スマートフォン側に転送する画像は200万画素に限定して、送信時間を短縮することも可能だ。
転送されたあとは、スマートフォンの機能を使って、TwitterやFacebookなどのSNS、メール、オンラインアルバムなど、さまざまなインターネットサービスに転送できる。画像のバックアップ用途としても使えるだろう。画像の確認も、スマートフォンの大画面でタッチパネルを使ってサクサクとチェックできる。
撮影後に、再びNFCにタッチしたら、アプリの終了からカメラの電源オフまで行なってくれたらさらに楽だったが、その機能はないので、カメラの電源を切れば無線LANの接続は切断される。
とにかく“面白い”カメラ
実際のところ、こうした接続操作は手間ではある。素直にスマートフォンのカメラを起動した方が速いし、特にXperia Z1は、1/2.3型Exmor RSセンサー、35mm判換算27mm相当のGレンズ、BIONZを搭載して、カメラ性能を追求している。QX10は、カメラとしては1/2.3型Exmor Rセンサー、Gレンズ、BIONZと、Xperia Z1と重なる部分も多い。BIONZがXperia Z1のソフトウェアベースに対して、ハードウェアベースである点と、光学10倍ズームレンズであるというのが大きな違いだ。
QXシリーズのキモは、レンズとモニターが分離するという点だ。スマートフォンをリモコン代わりに、三脚にQX10を設置して撮影する、といったこともできるし、頭上にカメラを大きく掲げたり、低くカメラを設置しても、モニター自体は手元のスマートフォンで確認できるため、これまでよりも撮影の自由度が高まる。
もちろん、スマートフォンのカメラでは10倍もの光学ズームはできないし、画質のあまり良くないスマートフォンカメラであれば、コンパクトデジカメクラスのカメラを簡単にアドオンできる、というメリットもある。QX100であれば、1型センサー・カールツァイスレンズを搭載し、画質は格段に向上する。詳細な画質評価はできていないが、RX100M2をベースにしているため、スマートフォンのカメラでは太刀打ちできないレベルになることは間違いない。絞り優先で撮影してのボケ味を楽しむこともできる。
それと引き替えに、撮影レスポンスという点では劣っている。この辺りは、その手間やレスポンスが我慢できるかどうか、という点で判断すればいい。手間はかかるし、撮影のレスポンスは悪くなるし、無線LANが繋がらずにチャンスを逃す、といったことも起こるだろう。しかし、それを踏まえた上でも、とにかく“面白い”カメラだ。スマートフォンに装着してカメラライクにも使えるが、個人的には両者を分離させておき、撮影されてるように思われないスタイルで自然な表情を押さえたり、通常のカメラでは撮影しづらいシーンで活用したり、これまでとは異なる使い方に可能性を感じる。
普段はスマートフォンのカメラを使い、高倍率やさらなる高画質、ボケ味といった、スマートフォンカメラの拡張が必要なときにも使えるカメラではある。しかし、使い方を自分で探し、楽しみ方を見つけたときこそ、QXは「面白いカメラ」となる。
作例
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・その他の作例
【2013年9月9日】記事初出時、「『サイバーショットDSC-WX300』をベースにしたQX10の2機種」と記載しておりましたが、正しくは「『サイバーショットDSC-WX200』をベースにしたQX10の2機種」になります。