ミスターインターネット
弁護団にとって、Winnyの技術的立証をどうするかは、ずっと懸案の問題であった。
なんとか人づてに紹介してもらえたのが、慶應大学の村井純教授であった。
当然、事前に打ち合わせをしたのであるが、
村井教授は予想を遙かに上回る漢であった。
「その理屈だったら、日本にインターネット引いてきた俺が幇助じゃん」
「KazaaっていうボロWinnyですらSkypeを生んだんだ。Winnyが何を生み出すかを見たかったんだ。俺は」
村井節に力づけられた弁護側の証人申請に対して、検察は反対してきた。彼は、技術者の代表ではないということらしい。
こいつら、日本にインターネット引いてきた人に何を言ってるんだ?
反対のための反対に徹する検察の意見に呆れた弁護団は、村井教授の著書「インターネット」「インターネット2」を疎明資料として裁判所に提出して、その必要性を論じ、その結果、なんとか証人尋問の期日が決まった。めでたしめでたし。。。。。。。。。。。。。。。。。
ではない。
村井教授は、刑事裁判の証人としては偉い人すぎたのである。
しばらくして、村井教授から電話があった。
「あのさ。まだオフレコなんだけど、○○会の理事になることになって、尋問の日だけど純ちゃんが、来ることになってあっち休んじゃ駄目になったんだ。」
「純ちゃん?内閣総理大臣の純ちゃんだよ。申し訳ない。」
内閣総理大臣を純ちゃんって…私は、慌てて期日の変更を裁判所に連絡したが、裁判官は期日を空けるのは駄目という。
仕方ないので、数回期日は、被告人質問を先行させて、何とか再調整を試みた。
それで、なんとか調整が付いたのが、平成18年2月16日であった。
今度こそ何かあってはならんということで、前日に大阪入りしてもらった。ホテルまで迎えに行った。そして、新幹線で京都にまっしぐらである。
村井教授は、裁判所でも漢であった。
裁判所の地下食堂でうどんを注文し、
「あ、俺米ドルしかないや。カードつかえないかな?」
村井教授は、法廷でも漢であった。
村井教授は、Winnyの技術の客観面について丁寧に語り、
検察のWinnyは著作権侵害ツールとの質問を退け、
警察の調書に対して
「これでは、インターネットに繋がりません。こんなの大学1年生の2回目の授業で説明することです」
と叩き切った。
Winny事件が、少なくとも技術立証について検察を圧倒したのは、村井教授以下、技術者の皆さんの支援のおかげである。
情報処理学会の羊の群れのような状態だけ見ていた私にとって、この世界に漢がいることは新鮮な感動であった。
博士は、その間中
「いやー、天下の村井先生に会えるなんて」
とタレントを見るかのような状態であった。
おめーの事件だよ。
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行政主体様お相手に本人訴訟を行っていますが、村井さまのような証人が出てきてくれたなら、さぞかし面白くなるのにな、と思いました。
投稿: 遠藤 元彦 | 2014年7月 8日 (火) 21時02分