あたーにーあっとろーとは?

  • Winny制作者金子勇氏
    こと博士の素顔があまりにも面白いので、弁護人である私の目から、事件を振り返ってつれづれなるままに書きつづってみる、壇弁護士の事務室のスピンアウトブログです。

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2014年7月 6日 (日)

ミスターインターネット

弁護団にとって、Winnyの技術的立証をどうするかは、ずっと懸案の問題であった。

なんとか人づてに紹介してもらえたのが、慶應大学の村井純教授であった。

当然、事前に打ち合わせをしたのであるが、

村井教授は予想を遙かに上回る漢であった。

「その理屈だったら、日本にインターネット引いてきた俺が幇助じゃん」
「KazaaっていうボロWinnyですらSkypeを生んだんだ。Winnyが何を生み出すかを見たかったんだ。俺は」

村井節に力づけられた弁護側の証人申請に対して、検察は反対してきた。彼は、技術者の代表ではないということらしい。

こいつら、日本にインターネット引いてきた人に何を言ってるんだ?

反対のための反対に徹する検察の意見に呆れた弁護団は、村井教授の著書「インターネット」「インターネット2」を疎明資料として裁判所に提出して、その必要性を論じ、その結果、なんとか証人尋問の期日が決まった。めでたしめでたし。。。。。。。。。。。。。。。。。

ではない。

村井教授は、刑事裁判の証人としては偉い人すぎたのである。

しばらくして、村井教授から電話があった。
「あのさ。まだオフレコなんだけど、○○会の理事になることになって、尋問の日だけど純ちゃんが、来ることになってあっち休んじゃ駄目になったんだ。」

「純ちゃん?内閣総理大臣の純ちゃんだよ。申し訳ない。」

内閣総理大臣を純ちゃんって…私は、慌てて期日の変更を裁判所に連絡したが、裁判官は期日を空けるのは駄目という。
仕方ないので、数回期日は、被告人質問を先行させて、何とか再調整を試みた。

それで、なんとか調整が付いたのが、平成18年2月16日であった。

今度こそ何かあってはならんということで、前日に大阪入りしてもらった。ホテルまで迎えに行った。そして、新幹線で京都にまっしぐらである。

村井教授は、裁判所でも漢であった。

裁判所の地下食堂でうどんを注文し、
「あ、俺米ドルしかないや。カードつかえないかな?」

村井教授は、法廷でも漢であった。

村井教授は、Winnyの技術の客観面について丁寧に語り、
検察のWinnyは著作権侵害ツールとの質問を退け、
警察の調書に対して

「これでは、インターネットに繋がりません。こんなの大学1年生の2回目の授業で説明することです」

と叩き切った。

Winny事件が、少なくとも技術立証について検察を圧倒したのは、村井教授以下、技術者の皆さんの支援のおかげである。

情報処理学会の羊の群れのような状態だけ見ていた私にとって、この世界に漢がいることは新鮮な感動であった。

博士は、その間中
「いやー、天下の村井先生に会えるなんて」
とタレントを見るかのような状態であった。

おめーの事件だよ。

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コメント

行政主体様お相手に本人訴訟を行っていますが、村井さまのような証人が出てきてくれたなら、さぞかし面白くなるのにな、と思いました。

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