迫り来る銀色の津波

　最近掲載された、The New England of Medicineの視点（Perspective）、The Underside of the Silver Tsunami ― Older Adults and Mental Health Care ― NEJMをタイトルにひかれ読んだ。当初、東日本大震災におけるTsunamiのことを扱ったものかと思ったが全く違っており、Silver Tsunami（銀色の津波）＝高齢者急増であることが本文を読んでわかった。

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• 都市部の急速な高齢者増が深刻な問題に（2013年1月13日）

　Approximately 5.6 million to 8 million Americans 65 years of age or older have mental health or substance-use disorders, and the Institute of Medicine (IOM) estimates that their numbers will reach 10.1 million to 14.4 million by 2030. Yet the American Geriatrics Society estimates that there are fewer than 1800 geriatric psychiatrists in the United States today and that by 2030 there will be only about 1650 ― less than 1 per 6000 older adults with mental health and substance-use disorders.

　およそ560万人から800万人におよぶ米国の65歳以上の高齢者が精神疾患ないし物質使用障害を患っており、2030年までにその数は1010万人から1440万人まで到達すると、米国医学研究所（the Institute of Medicine）は推定している。それにもかかわらず、米国老年医学会は、今日の合衆国における老年精神科医は1800人未満であり、2030年までにはわずか約1650人（精神疾患ないし物質使用障害を持つ高齢者6000人に１人未満）になるだろうと見積もっている。

　高齢者急増の原因としてベビーブーマーの存在があげられている。高齢者の精神疾患としては、認知症やうつがある。物質使用障害とは、アルコールや薬物などの乱用およびそれらへの依存をまとめた概念である。これら精神疾患を持つ高齢者は、身体障害だけを持つものより障害が重く、転帰不良であり、入院したり、救急外来を受診したり率も高いため、コストも高いと指摘されている。しかしながら、連邦政府の部署が統括されておらず、対策不十分であり、現場レベルでも誰の手にゆだねるべきかが問題となっている。

　最後の段落を次のようにまとめている。

　Although these reforms are necessary first steps, they will be insufficient without dramatic changes in what we do and how we do it. If we recognize that mental health care is a core component of general health care for aging Americans and transform the health care workforce accordingly, there may be hope that we can weather the approaching “silver tsunami.”

　これらの改革は求められる最初の段階である。しかし、何をすべきか、如何にすべきかということに関する劇的な変化なしでは不十分である。もし、メンタルヘルスケアが高齢化しているアメリカ人の一般的なヘルスケアの中心的要素であると認識し、それに従ってヘルスケア労働人口を変更するならば、迫り来る「銀色の津波」を切り抜けることができる希望があるかもしれない。

　米国を悩ませている「銀色の津波」は既に日本に到達している。平成24年版 高齢社会白書（全体版） - 内閣府、第１章第１節　5　高齢化の国際的動向、>第1章 第1節 5 （2）我が国は世界のどの国も経験したことのない高齢社会を迎えている｜平成24年版高齢社会白書（全体版） - 内閣府を見てもわかるように、日本は世界の高齢化のトップランナーとなっている。
　銀色の津波の高さが最高点に到達するのは、団塊の世代が75歳以上となる2025年であり、都市部を集中的に襲う。自然災害である津波に対しても十分な準備が必要であるが、同様に銀色の津波に対しても周到な対策が求められている。