日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

京都奈良の旅1日目 桂離宮と祇園祭と京都市美術館と奈良ホテル

海外にも行けないので久しぶりに西のほうに旅に出ましょうかという話になり、調べていたら、JR東海ツアーズがとんでもなく安いプランを売り出していた 

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 これ、2泊3日でのぞみで往復して18,200円とかである。とんでもないお値段。もちろんホテル代込み。しかしホテル一覧を見てもあまりピンとくるものがなく、それだったら最低料金のホテルで予約しておいて、宿泊は放棄して別途確保しよう、ということになった。

旅立ちは新横浜から

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品川始発ののぞみに乗り、京都まで。旅のお供はもちろん、シウマイ弁当です

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京都について、まずは桂離宮へ。本来ならば観覧予約しておくべきなのだが、事前予約枠は埋まっていた。なので、当日券が出るというので、まずはあさイチで現地に向かおうと思ったわけ。タクシーで急ごうと思っていたが、まあバスでもよいか…と思い直し、路線バスで桂離宮に向かう

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9時ちょっと前に現地に着いてみると、当日券については、9時からの枠以外はまだ残っていた。現在、新型コロナ対策で1回の人数をかなり絞っているらしいが、それにしても来る人数自体減っているのだろう。タクシーで急いできていたら、9時の回も確保できたかもしれない

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10時の枠を確保。桂離宮の周りにはあまり行くところも無いので、小雨降る中、桂川のほとりで、桂離宮のほとりでぼんやり

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10時の20分前に入場し、1000円を支払って中へ。ご案内前に予習コーナーがあるので、その資料を眺めていると呼び出し。案内の人に従って内部を歩いていくのだが、なんと、今回は1グループ5人しかいないという。10時にもともと予約していた人も含めたらもっと大勢いると思うのだが、グループが分かれているのだろうか?いずれにしても贅沢…

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ご存じの通り、桂離宮は、かのブルーノ・タウトが1933年に訪れて感動し、本に書いて、海外において日本文化の「簡素美」「詫び寂び」が認知されるきっかけになった場所である(諸説あります)。いわば、詫び寂びの聖地である。それ以前…というか、戦前の時点では、海外向けにも詫び寂びはあまり強調される要素ではなかったことは、戦前のインバウンド向け観光ガイドからも見て取れる 

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 桂離宮は江戸時代に八条宮の別邸として創設されたもので、詳しい歴史はここではあまり述べない。案内の人も歴史的背景というよりも、庭園と建物の見どころについて解説しながら案内してくれる。

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桂離宮は「全体が見通せない」というのは一つの特徴で、うまく目隠しがあちこちにあって、歩くごとに見える風景が変わるようになっている、ディズニーランド的な庭園なのである。

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そういう知識だけはあったのだが、歩いてみると、これが驚くほどダイナミックに、それこそ一歩歩くたびに見える風景が変わるのだ。簡素で静的な空間…という印象を持っていたが、それどころではない、なんと躍動感に溢れていることか

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建物を覗いても、少し視点を変えるだけで、見てくるものがまったく違ってくる

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人数が多いと視線を遮るものが増えてしまうのだろうが、たった5人で案内されながらだったので、行く先を見て、振り返り、どの角度を向いても庭園と建物の魅力が迫ってくる

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だから、切り取った写真では魅力が伝わりきらないのだ。実際に歩いて、その風景の変化を感じなければ。もちろん、足元も

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この日は小雨模様で、雨に濡れてしっとりした風情がとてもよく、しかし、花が咲いていたらどうなるのだろうか、晴れていたらどうなるのだろうか、違う条件の中でもじっくり見てみたい、もう一度来てみたい、と強く思うのだった

 終盤にやってくる、池を眺めるこの空間

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ああ、ここでお茶をしたい…。前後左右を凝視しながらの1時間は、あっという間に終わる

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一歩進むごとにダイナミックに変化していく風景に圧倒される、軽やかでモダンで素晴らしい空間。とても贅沢な時間だった…。絶対にまた来るぞ

次の時間のツアーは10人以上いたようだ。自分たちは運が良かった。桂駅までゆるゆる歩き、阪急電車に乗って、四条烏丸に出る。今日は本当なら祇園祭の山鉾巡行の日なのだが、今年は中止。しかしもちろん、祇園祭は間違いなく行われているのだ。そんな街の様子を眺める。西谷鉾の厄除けの粽をひとつ購入した

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祇園祭りの鉾を出す町内は、本当に狭い範囲に固まっているのですよね…。呉服屋さんで売っているアマビエマスクいいなー、お店が閉まっていて買えなかったけど

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祇園祭の時期に「しみだれ豚饅」を売る膳處漢ぽっちり、店頭での販売は昨日までだったそうで…。また、今年はネットでも売っているみたいだった

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さて飯はどうしましょうとなり、イノダコーヒーの本店へ。重厚な建物の脇のこじんまりした空間のほうで、ミートローフなどいただきます。

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お店を出て、またぶらぶら歩き

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鍵善良房の本店でお菓子を買って

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人気の少ない花見小路を歩き、建仁寺の塔頭、両足院の特別公開へ。

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初夏の空気が詰まった半夏生咲く庭園を散策し、開放的な大書院にのんびり座って庭園を眺める時間が至福

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雨上がりの緑が濃い。しばらく時を過ごす。建仁寺の蓮の花も盛りだった。

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路線バスに乗って、京都市京セラ美術館へ。

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京都市美術館、立派な建築と素晴らしいコレクションがありながら、東京から流れてくるブロックバスター展に箱を貸すだけの不憫な美術館…とずっと思っていた。それが今回のリノベーション。日曜美術館で見て楽しみにしていたのだが、これは良いね…

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東へ抜けることができる開放的な空間に仕上がっていて、コレクション展も毎回やってくれるようになった。こんな素晴らしいリノベが行われて本当に嬉しい、めでたい、よかった!

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いまはコロナの影響で、必ずしも使い勝手がよくないんだけれど、奥の庭園へと誘われる開かれた通路としても機能するようになった美術館、これまでよりも遥かに良い機能が果たせるようになると思う。

さて展覧会。すべて予約しないといけないのだが、今回で言えば、杉本博司の展覧会、開館当初を振り返る企画展、そしてコレクション展、それぞれ予約が必要で、それぞれに独立してチケットが必要なのだ。これはちょっと、お財布的に厳しい。遠路はるばる来たので、全部見ますけどね…。

まずは杉本博司「瑠璃の浄土」これは新しくできた展示棟で

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どうか、と言われれば、まあ杉本博司なんだけど、あまりハッタリはなく、杉本博司としてよかった、という感じであり…

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写真撮影は禁止だが、三十三間堂を撮った作品が一番良かったかな。開館当初を振り返る企画展は、歴史資料としてなるほど…という感じだったけれど

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コレクション展が大変すばらしく、良いものをたくさん見せてもらった。

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なんでこれまで、これだけのものを持っていながら、コレクション展をぜんぜんやらず、よその館に貸し出すばかりだったのか。疑問が残るけれど、とにかくこれからは良い美術館になる。入館料の件は何とかしてほしい。

(後から聞いた話によれば、以前もコレクション展は結構やっていたらしい。しかし、京都に行くときに調べてもやっていた試しがないし、知らなかった…。全然宣伝もしなかったようだし。大阪市美術館といい、京都市美術館といい、すばらしいコレクションを持ちながら、あまりそういう広報に力を入れないのだろうか)

美術館前からバスに飛び乗り、京都駅へ。近鉄の特急に乗って奈良に向かう。まだ小雨は降りつつ。歩いて奈良ホテルへ。そう、奈良ホテルです

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3月に川奈ホテルに泊まって以来、クラシックホテルへの興味が俄然高まっており、また、大倉陶園への興味が高まると、ディナー用のお皿を一括発注しているようなクラシックホテルへの興味も併せて高まるわけでして、今回、関西に来るにあたって公式サイトを見てみたら、存外安いプランが出ていたので、来てみたわけです。

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入口入った瞬間からの重厚な空間がたまらん…。吹き抜けのロビーはどこをどう映しても絵になる

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ラウンジの空間も落ち着いている。最近のホテルには、なかなか、こういう無駄に重厚な余剰空間が無い

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客室は本館のスタンダードなツインルームを予約していたのだけれど、アップグレードしてくれて、ずいぶん広い部屋にしてくれた。やはりこれも公式サイトからだと優遇されやすいんだろうか?

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部屋全体が落ち着いてるなあ

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そして部屋からは、興福寺の五重塔も見える

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で、ですね、部屋にお茶が置いてあるんですが

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これが、奈良県の五ヶ瀬のお茶で、ティーファーム井ノ倉の、100g千何百円する、かなり良いお茶なのだ。それがリーフで2袋。

急須も、常滑の水野博司作です、と教えてくれた人がいた。見てすぐわかるのか、すごいな、と思ったけれど、まあ実際、その人は常滑の専門店の人だからわかるのだけれど、ちょっと調べたら、この急須自体、そして湯冷ましも、ティーファーム井ノ倉オリジナルなんですね。

知らなきゃ気が付かないこういうところまで行き届いている、奈良ホテルすごい。というか、ホテル全体、鷹揚というか、ケチらずというか、いちいち気が利いている。

(なお、後からご指摘いただいたが、井ノ倉のお茶が出てくるのはデラックス以上の客室で、スタンダードの客室はティーバッグのお茶である模様…)

晩飯はプランの中にビアテラスでのものがついていたので、そちらで

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本来であれば外のテラスでビアガーデン、なのだけれど、この日は小雨だったので室内で。美味しいビールが飲み放題である

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食べ物もクオリティしっかりしている

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サッポロのSORACHI1984、はじめて飲んだ。香りがすごく良いけど、ビールとしては飲みやすくて、わりと普通?かな

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それにしても奈良の夜は暗い…と思いながら外を眺めていると、ややあって、突如、花火が上がる。少し遠いけれど天理か桜井だろうか。さきほどからにぎやかにやっていたおばちゃんたちも花火で盛り上がっていたが、その後、飲み過ぎたのか一人階段を踏み外してしまったらしく、おとなしく帰っていった

食後は館内散策。クラシックホテルの楽しみの一つは、飾ってあるお皿ですね。大倉陶園がもちろんあるし、溥儀来日時に作られたものは、鉄道省のマーク入りであるぞ

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ノリタケもいろいろ、「N」つながりで長崎ホテルから引き継いだお皿とか

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こちらも鉄道省マーク入のものが。奈良ホテルは国策で作られた賓客用のホテルで、運営は国鉄がやってましたからね…。戦後は米軍に接収され、交通公社管理になり、その後はJRがしっかりバックについていて、皇族の定宿という性格は今でも続いているので、全体的に抜かりが無いのだな

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カガミクリスタルは以前は工場が大倉陶園のすぐそばで、よい食器というと、大倉陶園とカガミクリスタルがセット感がある

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創業時のカトラリーとか

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しかし、結婚式の引き出物のおすすめはティファニーになっているのは残念。

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歴史資料もいろいろあるけど

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三笠宮がやたらと貫禄があって好き

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さて部屋に戻ろう

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さっとお風呂に入り、夜のお茶

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鍵善良房で買ってきたお菓子もあるんだけど、とりあえず奈良で買った別のお菓子をあてに、持ってきた携帯茶器で、これまた持ってきた中国茶を入れて、静かな夜なのでした。

https://twilog.org/zaikabou/date-200717