日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

広島市現代美術館で

足りない朝飯の継ぎ足しに買った『山賊にぎり』という馬鹿でかいおにぎりをほおばりつつ、バスで紙屋町に移動。バスを乗りついて『23系統』に乗ったのだけれど、23系統には2つあるらしい、目的地に着かず、広島大学病院に着いてしまう。大変暑い中を汗だくで歩き、サティのあたりから『比治山スカイウォーク』という通路を通って比治山の上に登る。目的地は、黒川紀章の『広島市現代美術館』

ここで開催中の、石内都の『ひろしま Strings of Time』を見る。石内都は、傷ついた身体や、自分の母の身体、あるいは思い出の品などを、思念を封じ込めるように撮影した写真で有名な人だけれど、今回は被爆者の遺品を撮影している。肌身に触れていたモノたち、洋服、靴、時計などは、まさに被爆の傷跡そのものであるのだけれど、それを撮影することでどの程度、石内都の思いを形にできているかは、ちと、どうだろう、わからなかった。
むしろ、同時開催している『Dome ドーム:そのモニュメントをめぐるアーティストの試み』が面白い。原爆ドームをモチーフにした作品が大量に並んでいる。土門拳や土田ヒロミ、細江英公などの写真。宮島達男のパフォーマンスの記録。小沢剛のベジタブル・ウェポンの特別版。牛島均が作った、原爆ドーム型のジャングルジムのような遊具の前で足が止まる。解説から引用するならば『既に原爆ドームを触れるべからざるモニュメントとして神聖視していることのあらわれ』を自省させれるかもしれない。
ジャン=ガブリエル・ぺリオの映像作品が面白い。1914年から2006年まで、原爆ドームが撮影された写真1000枚をコラージュした映像作品。中心に原爆ドームを据え、周囲の風景は変わるのだが、原爆ドームは同じ位置、同じ大きさを保ったまま。ただただ、周囲の風景が流転していく。それは戦前の、まだ原爆ドームとは呼ばれる以前の姿もあれば、焼け野原にたたずむすがたもあり、そして天皇が戦後に行幸した際の写真もあり、そして最近まで。静かな音楽とモノローグで構成された映像にとても引き込まれた。
ついでに常設展も。『ヒロシマ モナルーム』と名づけられたコレクション展、やはりこの展示も、ヒロシマの歴史から切り離すことができない。丸木位里と丸木俊の大作に息を呑む。それにしても、結構いいコレクション持ってるな、ここの美術館。草間彌生の『よみがえる魂』はすごく良い。須田悦弘のチューリップもあったり。コレクション展であるけれど、見せ方の流れがすごくうまいと思った。とにかく、レベルの高い美術館だと思いました。この夏、戦争の記憶をたどって広島を旅する方は、是非こちらも、訪れてみてください。

そして大阪へ

再び同じ経路をたどって『段原中央』というバス停に出て、紙屋町までバス。本通りという通りを歩き、とらのあなとイエサブがあったので、なるほど、広島のそれはここであるのか、などと納得しつつ、平和記念公園の中を通り、台湾料理屋で昼飯に冷やし中華。客先で打ち合わせ。
結構かかったが、スムーズには終了し、広島駅まで車に乗せてもらう。ひかりレールスターの指定席を確保し、おみやげを購入して、サイレンスカーに乗り込む。

車内放送を極力抑えた車両なので、とても静かで快適。席もゆったりしていて、ほんとに素晴らしいですねえ、ひかりレールスターは。
トンネルばかりの山陽新幹線を走り抜けて、新大阪駅。ここから、地下鉄に乗って本町。大阪の心の居所、『遊亀淀屋橋』に行く。電話して席をとっておいて貰ったので、カウンターの奥の定位置に安住できて、幸せです…。
前回が酷く酔ってしまったので、今回は控えめに。生ビールに、とりあえずは赤コンニャク煮、うろり煮、えび豆、小鮎の甘露煮と琵琶湖の珍味。ああ、美味い。日本酒は、金亀の梅のいおり。食べ物のほう、鱧の天ぷら、蛸と大葉の梅肉ソース…と季節モノを楽しみつつ、日本酒は萩乃露の純米吟醸里山を貰いましょう…おお、これまた美味い。酒盗も頼んで、そして最後は何時ものように、ふなずしのお茶漬け。ああ、至福…。それにしても、ふなずしって、ますます高くなっているんだろうか?なんだか、入る量が減っているような気がする…季節柄もあるのかな…
幸せな気分で出て、近所の神社で祭りの準備で太鼓の練習をする子供たちなどを眺めつつ、今夜のお宿に移動。リッツ・カールトン大阪。あ、いやね、某プランで、1万ナンボかで泊まれたので、つい、ね。本当に、大阪のホテル大丈夫か、といつも思うんですけれどね。
今日はお客さんが沢山いるらしく、お部屋は、スカイビューデラックスという角部屋をあてがわれた。定価で61,698円なり。36階と、ほぼ最上階に近いので、眺めが大変に素敵だ。ウェルカムドリンクとか言うて、生絞りのグレープフルーツジュースも持ってきてくれる。すみませんねえ…



一息ついてから、フィットネスが利用できるので、プールで1kmほど泳ぐ。私以外誰もおらず、貸切みたいで、大変快適でございました。ほいで、部屋に戻って、ちょっと仕事して就寝。おやすみさい…


以下、携帯からの更新です

美術館のようなゴミ焼却施設『広島市環境局中工場』

4時半起床。今日は広島出張。5時15分に出かけて、横浜からバスに乗り、羽田空港の第2ターミナル。ラウンジで軽く朝食済ませて、6時50分のANA便で広島に向かう。広島空港からは、バスでバスセンターへ。
さて、本日のお仕事は実は午後からなので、それまで少し時間がある。というわけで、広島市環境局中工場を再訪することにした。実はここ、以前にも出張がてら訪れたことがあったのだけれど、私の大好きな谷口吉生建築に心奪われてしまって、機会あればまた来たいなあ、と思っていたのだった。
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20060210/1139579607
さて、変わったデザインのゴミ処理施設と言えば、かの有名なフンデルトヴァッサーによる、大阪の『大阪市環境局舞洲工場』であるけれど
http://osakadeep.info/50.shtm
こちらも負けてはいない。奇抜、ではなく、洗練されたデザインのごみ焼却施設。設計は、MOMAをはじめ、美術館建築で名を馳せる谷口吉生。丹下健三による平和記念資料館
http://www.arch-hiroshima.net/arch-hiroshima/arch/delta_center/p-museum.html
から海に向かう一直線の風の通り道を穿たれて、その焼却施設は存在している。



広島市の中心部からバスに乗って10分少々のところにある、この建物については、『建築マップ』の情報が詳しい
http://www.arch-hiroshima.net/a-map/hiroshima/naka.html
ごみ焼却施設の中心(ゴミの流れとしては、焼却時に出たガスを主に処理する工程にあたる部分)に透明な通路が作られており、その通路を通り抜けると、中から、ゴミの焼却施設を眺めることが出来る



銀色に輝く配管を眺めるこの通路は、とても静かで、とてもこの施設が、一日600tのゴミを処理するこの施設が、稼動しているとは思えない。魅せることを強く意識した施設。どこまでもスタイリッシュ



だから、これね、機能美とか、見られることを意識しない工場を眺めることの楽しさ…みたいのからすると、結構鬼っ子かもしれんわけですよね


そんな工場の通路『エコリウム』の通路の向こうには、海がある


前々から思っているんだけれど、谷口吉生は宗教施設を作られたら、とんでもなくすごいものを作りそうだよね…



こういうところを見ると、ああ、ゴミの焼却施設なんだな、ってなんだかほっとします

というわけで、広島のモニュメンタルなゴミ焼却施設は、一見の価値あり、であります