日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

メルシャンの美術館へ

6時起床。明日の早朝からほ長野で仕事があるので、前泊で出張となった。ほんだで、少しは早めに出て、寄り道することにした。
渋谷で埼京線に乗り換えて、赤羽で高崎線へ。大宮から9時6分のあさまに乗る。軽井沢着が9時47分。大宮からわずか40分、早い。軽井沢はさすがに高原の気候で、なんだかんだ言っても、やはり駅から見える景色、空気、ともにすがすがしくて大変によろしい。ここからしなの鉄道に乗り換えて、御代田へ。駅から歩いて10分弱のところに、『メルシャン軽井沢美術館』はある。

メルシャンのウィスキー蒸留所もあるこの場所、ウィスキーの樽貯蔵庫を改装して作られた美術館で開催中だったのは、フンデルトヴァッサー展。「それ誰?フルトヴェングラー?」という方もいるだろうが、「大阪のアタマオカシイ清掃工場のデザインの人」と言えば、何人かは「ああ」と頷き、何人かは「余計なことを!」と怒り出すことだろう。
http://www.osaka-minkoku.info/osaka/osaka37.htm
そもそもは絵描きさんなので、今回も殆どは肉筆の絵、そして版画。怪しい色彩の渦巻き、多層の重なりからなる、ぐるぐるぐるうぞうぞうぞうぞとした絵のパワーに圧倒される。特に、1970年前後の作品が、油がのりきっていて、その生命力が圧倒的で、素晴らしい。特に『雨の日に見てごらん』の連作の版画が良かった。
それにしても、この人の版画は、エディションごとに別々の色指定がしてあったりする。それぞれの色そのものには、決定的な意味合いはないのだろうか。そんでもって、そのエディションも、少ないものは200とか300なのだが、多いと3000、あるものは10000なんてのもある。ほとんど出版の世界。
そして、合理的な建築に批判的な立場から、あの大阪の清掃工場のようなぶっとんだデザインの建物も沢山デザインしており、その模型もいくつか展示してあった。大阪の工場については、今の現実の姿でも、当初よりはかなり大人しいデザインなのであり。当初の煙突など、螺旋階段が全体を取り巻き、物見やぐらのようなものがびっしりと張り付き、えらいことになっていた。

美術館を出て、敷地内のワイン、ウィスキーのコーナーで試飲。17年もののウィスキーが大変に美味しかったので、小さなボトルをお土産に購入。蒸留所の見学もできるらしいし、浅間山が良く見える、なかなか環境の良いところではあるけれど、如何せん敷地が狭い。蒸留所見学なら、サントリーの白州に行くのが面白いでしょう。

小布施をぶらぶら

再び御代田駅へ。稲刈りの季節を迎え、すでに刈り取られた田んぼ、これから刈り取りを迎える田んぼが入り混じっている。

御代田から長野行きの電車に乗り、長野駅まで。長野電鉄に乗り換えて30分強で小布施に着く。小布施に来るのは15年ぶりくらいだろうか。駅近くのそばやで天せいろ。駅からしばらく歩くと、国道403号線沿いに栗菓子の店、美術館、そのほか観光施設が密集している。今回の目的はまず北斎館。小布施は葛飾北斎が晩年に過ごした土地であり、その肉筆画を多く収めた『北斎館』という美術館があるのです。
去年、私は、上野で開催された北斎展にも行った訳だけれど
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20051025#1130277834
やはり北斎の絵は、どれもこれも画いている本人が楽しそうな絵ばかりで、なにげない登場人物の一人ひとり、あるいはその動きが本当に活き活きしている。小野小町の7態を描いた絵も面白かったし、一番良いと思ったのは、筍を担いで山道を行く後ろ姿の画。どれもこれも、構成が上手いですよね。
北斎館を出て、周囲を歩く。その周辺だけは観光客でごった返しているのだが、少し離れると、山懐の盆地に、りんご、ぶどう、栗の林が点在している。北斎館の近くで売られていた果物も、このあたりで収穫されたものなのだろうか。

所々にコスモスが咲いていて、気候も良く、歩いているて気持ちいい。と、そんななかに『現代中国美術館』の文字が。最近出来たばかりらしい。「おお」と思って、300円也を払って入ってみて、「おやおや」と思う。つまりそれは、あくまでも「現代中国美術館」であって、「中国現代美術館」ではないのであって。

いちいちキャプションに「作品が人民大会堂に飾られ」「大使館に…」とか説明の付いた画家の皆さんの、非常に分かりやすい中国的な作品の数々が並んでいて、いったいなんなのだろう、と思っていると、「日中友好協会」から贈られた花が飾られており、おおよそのニュアンスが掴めたのだった。ははは。
再び北斎館のあたりに戻り、『枡一市村酒造場』という蔵元で、『スクウェア・ワン』というスタイリッシュなボトルに入った日本酒を試飲。試飲コーナーはとてもオサレで、錫のお猪口に入れてくれて200円。塩を嘗めながら飲み、これは美味い。おみやげに4号瓶購入。
http://www.masuichi.com/
ほいでもって、竹風堂で栗おこわを購入し、栗ソフトクリームを食べて、駅へ戻り、16時47分の特急長野行きの人となる。

温泉で月を見る

権堂駅で降りて、商店街を抜けて、今日のお宿、犀北館にチェックイン。前にも一度行ったことのある温泉『裾花峡温泉 元湯うるおい館』に行く。泉質も良いのだが、露天風呂は渓谷に面しており、ライトアップされた渓谷が美しく、蛍がほのかな光を出しながら舞っており、山の向こう、雲の切れ間から見え隠れする月は、まるで薄墨を塗っては浮き上がってくるような光で、幻想的で美しく、暫し陶然として時を過ごす。月が山に隠れたので私も上がり、生ビールを一杯。宿に戻る。

三井理峯先生

http://www.youtube.com/watch?v=t-3QorADO8A
こんなものまで楽しめるとは、本当に本当に良い時代になったものです