「謎とき本能寺の変」(講談社現代新書)

謎とき本能寺の変

ウイニー事件公判傍聴のため、昨日、京都へ行ったので、京都関係で何か1冊読みたいと思い、以前、購入して読んでいなかったこの本を新幹線の中と京都地裁での待ち時間に読みました。
「謎とき」とありますが、各種史料に基づいて、本能寺の変が起きた動機や背景、共犯関係を探ろうとする真面目な本であり、よくできた検察官の冒頭陳述を読むようで、なかなか刺激的な内容でした。
ネタバレになるので、興味ある方は読んでみてほしいと思いますが、明智光秀が、決して私怨に基づいたり、発作的に本能寺の変を起こしたわけではないことは納得できる1冊です。

<島耕作>裁判員制度PR役で最高裁が連続広告

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060216-00000124-mai-soci

今週号の広告は、連載中の「常務 島耕作」に続く2ページに掲載。島耕作が社長室に呼び出され、会社としての対応策の検討を命じられている。実際の作品のシーンを再利用し、吹き出しのせりふだけを差し替えた。

島耕作シリーズは、書籍で出版されているものについて全部読んでおり、私も愛読者の1人です。
島耕作は、裁判所がやることだから、ということで無批判に受け入れるような人間ではないので、会社としての対応策検討を命じられたら、「そんな外国の制度のパロディのようなものに対応するのは難しいでしょう。」と言いそうな気がします。

Winny開発者の裁判に村井教授が証人として出廷、検察側の主張に異議


http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/02/16/10925.html

昨日、京都地裁へ行き、この公判を傍聴しました。傍聴人は、最初の頃にくらべ、減っていて、傍聴席の6割から7割程度が埋まっている感じでしたが、本件に対する傍聴人の意識の高さは強く感じられました。
まず、印象的だったのは、村井教授が、ウイニーの性能を非常に高く評価している、ということでした。「洗練された、優れた性能」といった証言が繰り返し出ており、非常に優れたP2Pソフトであることが、「日本におけるインターネットの父」(弁護人が村井教授に、「日本におけるインターネットの父と言われていますね?」と質問していたのには笑ってしまいましたが)により公判で明言された意義は大きい、と思いました。
また、この記事の中でも紹介されていますが、村井教授が、

さらに匿名性について、情報システムにおいては匿名性の確保は追及すべき重要性の高い技術だと説明。プライバシーの保護や、電子投票のシステムなどを考える上で、どのように匿名性を担保するのかといった研究は広く行なわれているとした。

といった証言をされていて、匿名イコール悪、匿名イコール権利侵害、といった「検察・警察ストーリー」に対し、研究者の立場から、はっきりと異論を唱えていたことも印象的でした。
村井教授の今回の証言の核心は、記事でも紹介されているように、

今回の事件に対しては「情報通信の基盤を開発することと、それがどう利用されたかを結び付けて考えられるべきではない。開発すること、運用すること、それがどのように利用されるかということは、分けて考えるべきだ」と語った。

という点ですが、証言の中では(私のメモによると)、

検察官が指摘するウイニーの特徴は、ウイニー特有のものではなく、P2Pソフトに共通する特徴であって、特に著作権法侵害を助長するものとは言えない。ウイニーの特徴は、どれも情報を効率よく共有、交換するためのもので、特定の利用には結びつかない。著作権を侵害するような情報を、問題があるものとして自動的に流通させないという仕組みを作ることは、情報の意図について一般的な表現方法を持ち合わせていない以上、不可能であり、問題情報を流通させるかどうかは専ら利用者側の問題であって、それをインフラストラクチャーが判別するのは不可能である。ファイル名でフィルタリングする、というのも、ファイル名が自由自在に付けられる以上、不可能である。

ということも述べられていて、優秀なP2Pソフトを開発、提供することが、必然的に(不可避的に)、著作権侵害を含む悪用の危険性も生み出すことになり、そういった必然的、不可避的な危険性の存在を、利用者側の責任とするだけでなく、開発、提供者側の責任、ということにしてしまえば、開発、提供者側としては必然的、不可避的な点で責任を問われることになってしまう、ということが明確に語られていたと思いました。
検察・警察ストーリーについて、「日本におけるインターネットの父」により、根本的な疑問が突きつけられた、という意味で、非常に意義のある証人尋問であった、と言えると思います。

三足の蛙

昨日は、午後、京都地裁でウイニー公判を傍聴し、夜は知人と会食し、京都に宿泊して、本日午前中、帰京前に、本能寺へ行き、宝物館で織田信長ゆかりの展示品を見学してきました。
展示品の中に、「三足の蛙」(みつあしのかえる)という香炉があり、本能寺の変で明智光秀軍が襲撃してくる直前に、本能寺内にあって突然鳴き出したという伝説があるとのことでした。
なかなか可愛らしい蛙で、お土産の文鎮を売っていたので、記念に一つ購入しました。
境内に、織田信長の墓所があったので、非業の死を遂げた戦国の英雄のご冥福をお祈りし、あわせて、一緒に亡くなった森蘭丸などの近習のご冥福もお祈りして、本能寺を後にしました。

http://www.edu.city.kyoto.jp/hp/rakuto-c/shakai2001/ya/odorokibanasi.htm