日本語が亡びるとき


日々、新しい言葉が生まれ続けている。そのこと自体に私は異存はないのだが、現代において本当に言葉の意味が変遷するようなことがあるのだろうか。


例えば、「役不足」の意味をいまだに間違えて使っているような人がいるのだろうか?インターネットだと掲示板などでさんざん「本来の意味は〜」なんて書かれており、私はインターネットを始めてから、もうすでに何十回もそういう書き込みを見た。インターネットならば国語辞典だって調べることが出来、どちらの意味が正しいのかぐらいすぐに確認することも出来る。


インターネットにアクセスできない人たちならともかく、インターネットにアクセスできる人たちが間違った意味で覚えたり、使い続けるなんてことはあり得ないんじゃないかと私は思うんだが。


私は、小学生のころ、「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」という表現を友達に使って、友達はそんな言い回しは知らず、「そんな日本語ないよねぇ」と寄って集って馬鹿にされた。いまなら、携帯があって、簡単にインターネットにアクセスできるから、そういう友達に対して辞書に載っていることぐらい簡単に証明できるだろうし、「そんな日本語ないよねぇ」と馬鹿にされるどころか、「え?辞書に載ってんじゃん?お前ら馬鹿じゃねーの?」と即座に言い返すことだって出来るだろう。


本当にそういう風に何らかの日本語データベースに即座にリーチできるという環境において、間違った言い回しが広まってしまい、社会全体としてコンセンサスが形成されるということなどあるのだろうか。どうも私にはそれが信じられないのである。


しかし、それとは別に、使われなくなって事実上消えていく言葉というのはあるのかも知れない。


広辞苑や大辞林には、その言葉がどの程度知られているのかという度合いが表記されていない。年代別に何%の人が知っていたかというアンケート結果みたいなものが載っているとすこぶる良いと思うのだが。例えば、英語で文書を書いて、ネイティブな人におかしい表現がないか見てもらうと、「この言い回しは普通しないよ」とか「この単語よりはこっちが一般的に通用する語なので」とかそういうアドバイスをもらうことが多々あるが、それは結局辞書(or 言語データベース)にそういう情報が無いのがいけないのだと思う。


Googleで検索すれば何件ヒットするかというアバウトな情報はわかるが、件数が多いからと言って誰もが知っている表現とは限らないので、やはり辞書にその単語や熟語の知名度的なものが併記されるべきだと思う。


安定して使えるopenな日本語用のparser(構文解析)の実装やAPIがあるともっといいんじゃないかと思うんだ。そのparserが、仮に「パース君」という名称だったとして、曖昧性があったりすればエラーもしくは警告が出るようになっているといいと思う。「主語が一意に確定しません」だとか「30代の人の50%以上が知らない表現です」だとか「一つの文の途中で主語が暗黙のうちにすり変わっています」だとか「くびき語法は公式文書で使うべきではありません」だとか、そういう警告が出る。


そうすれば、社内規定で、
・メールで文書は「パース君」の警告レベル3で警告が出ないこと
・議事録などの保管文書は「パース君」警告レベル4で警告が出ないこと。
なんて定められたりして、ずいぶんと意志の伝達がしやすくなると思うのだが。