鳩山首相の今後について

 鳩山さんは、近いうちに、おそらく今月末か来月初めに総辞職するつもりなのではないだろうか。小沢さんを抱え、普天間基地の問題を抱え、自爆するしか道はないと感じているのではないか。


 鳩山さんはもともと、自らの政治的地位に対して強い執着を持っていないように見える。政治家になったのも、弟の邦夫さんが政治家になってスポットライトが当たっているところを見て、「僕にも当たるかな」ぐらいの気持ちで政治家になったそうだから、もともと強い政治的ビジョンを持っている人ではないのだ。代表とか総理とかのアクセサリーをつけることで自らの価値を高めたかっただけなので、そこが汚れてしまったら脱ぎたくなるのは当然だろう。華麗なる一族の御曹司として、いつまでも国民の前に無様な姿をさらすことは彼にとって耐えうることではないだろう。だから、総辞職すること自体は本人にとってはむしろ喜ばしいことではないだろうか。


 鳩山さんが自分の今の地位に対してそのような態度であるからこそ、彼は民主党にとって最適の幕の引き方を模索することができる。


 民主党幹事長の小沢さんは、鳩山さんと違い、今の地位にはるかに強い執着とプライドを持っている。だが、今の小沢さんの存在は、民主党にとって大きな負担でしかない。鳩山さんが辞めることで、小沢さんは自ら辞職するという敗北的決断を避けて辞めることができる。小沢さんもそれほど傷つかず、民主党にとっても最善の体制で参議院選挙に臨むことができるだろう。
 鳩山さんがこのような形で辞めることは、小沢さんを引き摺り下ろすという形で党に貢献することになる。その結果次の参議院選挙で民主党に勝利が舞い込んでくれば、鳩山さんは再び権力の座につくチャンスを待つことすらできるだろう。


 今、鳩山さんは沖縄や徳之島を訪問し、説得活動をしているが、住民を本気で説得しようとしているようにはとても見えない。全力を尽くしているというパフォーマンスをしたいだけなのではないか。このパフォーマンスによって自らの政策の甘さを敢えて露呈すれば、明確に自らの首を絞め、自然に総辞職に繋げることできる。それが彼の真の目的なのではないだろうか。
 これには、身を捨てることで継承内閣に沖縄基地の問題を背負わせないで先送りしてしまおう、という政治的判断も見てとることができる。世間には、この基地問題の解決には無理があり、諦めたほうがいいのかも、といった空気が蔓延するだろう。そうすれば継承内閣には大きな負担にならずに済む。


 結果的に、基地問題も小沢問題も自らが決着をつけ、潔く身を引いたという印象を与え、次期参議院選に良い影響を与えることができる。
 こういう筋書きを鳩山さんが考えているとすれば、意外に優秀な党代表ではないかとも思う。もっとも、党にとって優秀だからといって、国民にとっても優秀であるかといえば、はなはだ疑問ではあるのだが。