振動機能復活なるか?!ソニーとImmersion間でライセンス契約

完全に市場を握ったPS2に対して、苦戦の続いているPS3。その原因の1つとして、PS3コントローラから振動機能がはずされたことが上げられることもあります。

この振動機能が外された理由について、SCEは非常にいろいろな理由を苦労してしていましたが、結局のところ一番大きな理由は「振動特許を持つImmersion社と特許係争中だから」というだということは、すでに多くの人が知っていることでした。具体的には以下のやつですね。

ITmediaニュース:SCE、Immersionとのフィードバックコントローラ特許訴訟で敗訴

ソニーはすでにライセンス契約を結んでいるのに対して、SCEはなまじPS2の普及台数が多いため過去のライセンス分を払うと膨大な額になるのを嫌ってか、訴訟でさんざんごねていたわけです。しかし、裁判で不正なやりとりがあったとか指摘されて敗訴、現在控訴中という状態でした。このあたりは、自分も一度以下のエントリで考察してますね。

わぱのつれづれ日記 - ITmedia News:[WSJ] 振動コントローラ特許訴訟、ソニーが黒星

PS2で特許訴訟して不利な状況なのに、PS3でわざわざ振動機能を搭載するのはリスクが大きいと言うことで、PS3からは振動がのぞかれたのではないか、というのがもっぱらな見方だったわけです。

しかし、これに対して本日、非常に大きな展開がありました。

Immersion社とソニーで和解成立

飛び込んできたニュースは「振動関連のライセンス契約を結んで和解」というものです。

ITmedia News:SCEとImmersion、振動コントローラ特許訴訟で和解
ソニー、振動機能特許でImmersionと和解 - Engadget Japanese
振動コントローラ訴訟のソニーと米Immersion社がライセンス契約 - 産業動向オブザーバ - Tech-On!

結局、全面的にソニーが非を認めた形ですね。過去のPS2などに搭載した振動機能の分も、ライセンス料金を支払うようです。また、支払いが遅れた事による延滞金、その間の損害賠償、その他諸々、裁判所の定めた金額をImmersionに支払う形になっています。

これにより、ソニーは一時的には大きな損害になるようですが、決算には影響ない程度とコメントしているようです。前回訴訟で敗訴した際は約100億円ぐらいの金額を払うよう言われてましたが、和解によってどの程度まで軽減されたか不明なところですね。増えるってことはないでしょうけど。

和解が与える影響

今回の和解で一番大きいのは、「まだ当分の間、PS2でリスク無く戦えるようなった」ということでしょう。特許で負けたままでは、振動機能を標準で搭載するPS2を売れば売るほど、ライセンス関連のリスクが広がっていく形でした。支払うタイミングが遅れれば遅れるほど、延滞金など余分にかかるようになってしまいますしね。PS3がいまいち不調、世界的には安くなったPS2も十分現役であることを考えると、できる限り早くこうしたリスク要因は減らしたい、という判断もあったように思われます。

そして、もう一個は「PS3での振動機能復活」の目が出てきた、ということですね。もちろん、PS3への搭載となると、Immersionには別途ライセンス料を支払う必要が生じるでしょうが、それでも一旦和解しているので、その交渉はスムーズに進むでしょう。PS3のSIXAXISは振動機能がすでに全くない状態で発売されているので、PS3コントローラに振動機能のせるのはタイミングをはかる必要があると思いますが、たとえばUSBアダプタを使ったPS2コントローラの利用などであれば、すぐに対応できる可能性もあります。これができれば、PS2互換性で大きな問題に感じる人も多かった振動機能復活となり、魅力を感じる人も増えるでしょう。

過去の言い訳が足を引っ張る展開

とはいえ、こうなってくるとまたもやSCE側の過去の発言がいろいろネックになってきますよね。特に、この振動機能の除去については、特許訴訟の話をせずに理由を説明しようとして、いろいろ苦しい言い訳をしていましたから。

一番最初にされた説明は「モーションセンサーと振動機能が干渉するため」というものでしたね。

PlayStation.com(Japan) | お知らせ | PLAYSTATION®3専用コントローラ発表 〜高精度・高速応答6軸検出システムを標準装備〜

これについては、後で訴訟相手であったImmersionから「干渉しないような振動機能の使い方を教えてあげようか?」と言われてしまい、世間の失笑を買った経緯があります。

[PS3] ImmersionはPS3コントローラに振動機能を搭載して欲しい - ゲーマーホリック


そして、次に行った説明が「消費者を思ってのもの」というもの。コスト増加を抑えた、という感じですね。

[PS3] 「SIXAXIS」の振動機能未搭載は価格が原因?それとも? - ゲーマーホリック

そして最近では、「振動機能は前世代のもの」と、完全に否定する発言も飛び出しています。自社からは出ないとも言ってますね。

ソニー「振動は前世代の機能」「値下げ圧力は感じない」 - Engadget Japanese


これらの発言が全て本気の発言なら、PS3コントローラに振動機能が載ることはないでしょう。ただ、正直どれも苦しい言い訳という感じもしますので、ライセンス問題さえクリアすれば、PS3での搭載も検討するのではないかとは思いますね。

コストと切り替えタイミングの問題

PS3のコントローラに振動機能を搭載するにおいて問題となるのは、そのコストの問題と切り替えのタイミングでしょう。まずコストですが、すでにPS3のコントローラは5000円もします。この状態でさらにモーターを載せ、新たに発生するライセンス料も必要となると結構なコスト上昇になるでしょう。5000円を超えるコントローラだと売りづらいでしょうから、値段据え置きでモーターをつけるのかもしれませんが、そうするとただでさえ本体も赤字なのに、またコスト要因が増えることになってしまいます。

次は、切り替えのタイミングですね。いくら苦戦しているとは言っても、PS3はすでに全世界ですでに200万台売っている訳です。PS3で振動対応し、ゲーム側で振動機能を有効にしても、既存のユーザはコントローラを買い直さなければその恩恵にあずかれないわけですから。PS1のデュアルショックの時は実際そんな感じになりましたけど、その後PS2での発売では標準搭載したので大きな問題にはなりませんでした。しかし、PS3はまだしばらく発売するものですからね。途中から標準コントローラを変えても、ソフトメーカー側が積極的には使いづらい状態になってしまうわけです。64やDSの振動パックとか、あんな感じでごく一部のソフトだけ対応、となってしまう可能性もあるわけです。これまでのゲーム機で、標準でないコントローラが普及した例は無いですしね。

できる限り早いPS3での振動復活を

今回のライセンス締結を見ると、正直「PS3発売前に解決しておけよ」、という気持ちになります。さんざんごねて、PS3からも振動機能を外したあげく、結局ライセンス料払うというのは、ちょっと格好悪いですよね。もっと早く払っておいてPS3に振動機能をつけていれば、もっとPS3に対する印象も変わったのに、と残念に思います。

長期的に見れば、どこかで振動付きSIXAXISに切り替えれば、ゲームソフトも対応の物が徐々に増えてくるでしょう。MGSの小島氏なども振動機能を熱望していましたし、今後増えるXbox360とのマルチソフトでも「PS3版は振動が無いのでマイナス評価」となるリスクも避けることができるでしょうし、PS3での振動搭載は非常に重要だと思います。

また、PS2との互換付いても、残念ながらPS3のPS2互換機能自体は今後低下してしまいそうですが、それでも振動機能が復活することで、真の意味で完全互換とれるソフトも増えてくるでしょう。(振動機能搭載したPS2ゲームは、現状ではPS3との『完全互換』は無理ですので。)


振動機能がいらないという人もいますが、個人的に振動機能は「あって当たり前」と思っている機能です。Wiiなんかだと、カーソルがボタンに載ったときの感触を表すのに非常に重要な役割を果たしてますし、PS3でも路面の変化や衝撃など、重要となるシーンは無数にあると思われますので。

今回のライセンスの件について、SCEは以下のようなコメントをしています。

「SIXAXISに振動機能が搭載されなかったことと、今回の訴訟は全く無関係で、もともと(DUALSHOCK2の振動機能を)そのままつけるつもりはなかった。スーパーコンピュータ並の性能を持ったCellと組み合わせるにふさわしい機能を搭載したいと考えていた」
「すぐさまSIXASIXに振動機能を搭載することはなく、予定もない」
「今後、振動機能を搭載した新たなデバイスを出していく可能性はある。それも現行の振動機能ではなく、もっと新しいものをImmersionとともに開発できればいいのではないか」

http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20070302/sce.htm

正直、今のSCEに必要なのはこうした過去に対する変なプライド意識ではなく、今後「いかに消費者に魅力ある製品を提供できるか」ということでしょう。とりあえず、厚顔無恥でもかまわないので過去の失言は綺麗さっぱり無かったことにし、できる限り早い段階で振動機能を搭載して欲しいものです。