【番外編・バイブル商法】「食品と暮らしの安全基金」小若順一代表の講演会

 安部司ではないので、【番外編】としておくが、安部のときにやったような、敵陣に単身丸腰で乗り込む真似を、性懲りもなく敢行した。

ひょうごの食研究会

第19回ひょうごの食研究会総会
並びに

第1回研究会のご案内


1 日 時 2010年6月12日(土) 午後1時30分〜午後4時
2 場 所 兵庫県農業会館(大丸の南5分) 10階会議室
3 内 容 
  1)総会 午後1時30分〜1時55分

  2)第1回研究会 午後2時〜4時
   講演 「“病気”が増える原因はミネラル不足 ―うつ、糖尿病、発達
       障害、引きこもり、成績不振、冷え性、化学物質過敏症・・・ 」
   講師  食と暮らしの安全基金 代表  小若 順一 氏  
          コンビニ・冷凍・レトルト食品、カップ麺で1日に食べる量の主要7ミネラルの含有量を検査。
          健康に気をつけたメニューの検査結果を、国の基準に当てはめると、7ミネラルとも、「集団
           の場合は健康障害を生じる人の割合が50%以上になる」数値でした。
          これは、主要ミネラルの不足で数千万人が健康障害を起こしていることを意味します。
          その驚くべき数値とは……。
          *詳しくは、「食と暮らしの安全」のホームページをご覧ください。

4 参加費無料&申込み不要
   ひょうごの食研究会の会員以外の方もお気軽にご参加ください。

 内容は、どうやら「ミネラルを持っていく」リン酸塩と味の素を悪者にしたいらしい、うちで扱っている「無添加白だし」を取れば、他のミネラルも取るようになる、発達障害が改善されるというもの。いろいろ突っ込みどころがあったが、「牛角」が安い肉を集めているとか何とか言ったので、私が「安い肉を集めるのは、悪いことですか?」と口を出したら、主催者側が、最後に質疑応答の時間と取るので、それまでよせと言ってきたので、拷問のように、くだらない講演を1時間半聴いた。部分的に正しいことも言っている。主催者側が農業関係なので、「国産は安全」と言いたいらしいが、小若順一が「国産が安全だとは限らない(それも正しい)」いったりと、ちょっとずれがあったりもした。
 最後の質疑応答。
 私はmixiでカミングアウトしたことがあるが、自らが(確定診断には至っていないものの)広汎性発達障害の疑いを持って、専門医を受診している。そのことを明かした上で、発達障害は先天的な脳の機能障害であって、育て方によってなったり治ったり、ましてや食生活によってなったりするものではないというのが、今の医学界の認識である。「アスペルガー症候群に効果!」などと称して、「無添加白だし」とやらを売るのは、薬事法違反ではないか?と。
 それに対して、小若は、研究した上で、薬事法違反には当たらないと認識していると答えた。これに関しては、私は前日に、さいたま市保健所環境薬事課薬事係に電話をして(株式会社食品と暮らしの安全所在地がさいたま市になっているため)、調査してもらうように依頼している。ケケケ首洗って待ってろ。NPOと、「安全すたいる」を運営する株式会社に法人格を分けているようだが、販売サイトにリンクしているし、当日も「安全すたいる」のカタログを配っていた。
 その後質疑応答が何人か続いたが、ある人が、野菜の酵素を摂れば云々と言っていたのにたいし、栄養学を学んだという別の人から、酵素もタンパク質なので、胃でアミノ酸に分解されると突っ込んだりする。
 最後に、もう一度私が質問した。貴方が言っているのが事実であれば、NatureやScienceのような一流科学雑誌に論文を出せばいいじゃないですか?素人グループ(と小若は自ら言っていた)であるならば、研究者を引き入れればいいじゃないですか?科学者に言えばインチキがばれるけど、素人向きの講演では騙せるということですか?と、どやしつけた。小若は、NatureやScienceに出せば十年かかると言った。十年かかろうが、出せばいいのである。
 小若は、最初の本は講談社から出そうとしたが、出せなかったという。同じ講談社から発達障害の専門医の本が出ているので圧力がかかったということらしい。エビデンスを満たしていないから、科学者の査読に到底耐えうるものではない(論文にしないということは、それを自ら認めているってことだろう)、まともな医師や科学者には、相手にされていないだけだ。「無添加白だし」を、小若が言っていた、「僕の直感では9割治る」「モニター調査」なんかではなくて、二重盲検試験をやったうえで、医薬品として承認申請すればいいのである。
 小若は、発達障害児を「頭がおかしい(それが『無添加白だし』で治った)」と言っていたり、発達障害に対して、根本的に差別意識があるらしい。アスペルガー症候群にありがちな、「融通が利かない」というのも、言換えれば「厳正に規則を守る」である。
 かつて起こった深刻な食品被害である、水俣病や森永ヒ素ミルク事件では、逞しい子に育てるために、魚やミルクを与えた、それが子供を苦しめることになってしまったと、自責の念に駆られた親が沢山いた。この小若は、子供に与えた食事が原因で発達障害になってしまったと親に思わせても、平気なのだろうか。そういえば安部司も言っていた。「(味を)覚えさせたのは、おうちだから」
 講演が終った後、自然食品の店をやっているというオッサンが私に詰め寄ってきた。あんたに何が出来る!あんたがかかっている医者も、みんなアメリカの回しもんや!と。陰謀論言う前に、自分の身を省みよ。
 一つの救いは、一人の男性から、握手を求められたこと。よく言ってくれた、(話を聞いて)売らんがなの姿勢で胡散臭いと思っていたと。彼には、高橋久仁子先生の本を薦めておいた。
 この「ひょうごの食研究会」、小若は過去に2回(92年度・2002年度)講演に呼ばれているようだ。なかにシンパがいるのか。他に挙げられている過去の講師で私が名前を知っている人は、槌田劭氏(96年度・2001年度)、東城百合子氏(2006年度)。
 終わってから、三宮のジョーシンスーパーキッズランドに行った。10年以上前、日本橋に通い詰めて顔を覚えられていたベテラン店員の方に、久々に再会した。もやもやしていた感情が、少しはスッとした。

(付記)
「アガリクスバイブル本事件」のときは、本と販売業者とは別と装って、本に販売業者の「しおり」を挿入する巧妙な手口だったけど、「食品と暮らしの安全」は、NPOと株式会社の代表者は同じ、NPOの「改善!」から販売サイトに直接リンクが張られているので見え見えだと思うが、どうだろう。

関連リンク
書籍の体裁をとりながら、実質的に健康食品を販売促進するための誇大広告として機能することが予定されている出版物(いわゆるバイブル本)の健康増進法上の取扱いについて(PDF)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/dl/7h.pdf

 健康増進法の施行に当たっては、「特定の食品又は成分の健康保持増進効果等に関する書籍の形態をとっているが、その説明の付近に当該食品の販売業者の連絡先やホームページへのリンクを一般消費者が容易に認知できる形で記載しているもの」については、同法第32条の2に規定する「広告その他の表示」として取締りの対象となる旨の判断基準を示しております。

講演参加者のブログ
http://rumimaeda113.livedoor.biz/archives/51567652.html