わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

論文について,ゼミ資料に取りまとめたこと

学内に提出するもの

大学に提出する「論文」には,卒業論文,修士論文,博士論文の3種類があります.
卒業論文は,卒論とも言います.卒業研究合格の要件として提出する論文です.4年生の1年間で研究活動(卒業研究,卒研)を行い,最終的に取りまとめます.内容に関して,外部発表は課されません.
修士論文は,修論とも言います.修士の要件として提出する論文です.修士課程(博士前期課程,マスターコース)の2年間,研究活動をして仕上げます.我々の所属では,1年に1回,外部発表することが目安となっています.
博士論文は,D論や博論とも言います.博士の要件として提出する論文です.博士課程(博士後期課程,ドクターコース)の3年間,研究活動をして仕上げます.その内容に関しては,学術論文として採択されていることが要求されます.我々のところの学位の名称は,「白紙(高額)」です.ちゃいます,「博士(工学)」と書き,さらにそのあとに大学名をつけます.

外部発表

我々が外部で研究成果を発表するための媒体には,国内会議,全国大会,国際会議,学術論文の4つがあります.
国内会議は,研究会,シンポジウム,ワークショップ,フォーラムなどとも呼ばれます.最も手軽に研究発表ができる場です.スケジュールに従って,発表申込を行い,論文を投稿すれば,基本的にそのまま掲載されます.論文集(予稿集とも言います)には1件あたり4〜8ページで成果が記載され,合わせて,口頭発表と質疑により成果を伝えます.一般に事前の審査がないか非常に緩く,投稿後1か月程度で掲載されますが,信頼性はやや下がります.たまに査読付きのものがあり,審査などで期間が2か月程度延びる分,信頼度が上がります.
全国大会は,大きな学会が年に1〜2回開催する行事です.発表する側の要領は,上記の国内会議と同じですが,発表件数が,標準的な国内会議と比べて桁外れに多いのが特徴です.1件あたり1〜2ページ程度の成果と,国内会議よりも短い時間での口頭発表・質疑になります.投稿締切は,実際の発表の2〜3か月前となります.情報量が少ないこともあり,信頼性はやや下がります.3〜4日で様々な発表を見ることができるというのが,メリットとして挙げられます.
国際会議は,世界中で開催される研究報告会です.我々の分野では,英語で書いて話します.1件あたり4〜10ページ程度の成果と,口頭発表・質疑があります.投稿から掲載までは半年から10か月くらいでしょうか.多くの国際会議は査読付きなので,信頼性はやや高いのですが,その分,速報性が下がります.
学術論文は,研究成果を最終的に取りまとめて発表する形態です.1件あたり8〜20ページ程度です.ただし,口頭発表はありません.必ず査読が行われ,質の低い投稿は,不採択や,条件付採択(いわば再提出)となるため,信頼性は最も高くなります.その反面,投稿から掲載までに,早くて半年,ときには数年の期間がかかり,速報性は低いと言わざるをえません.受付日・採択日が書かれていることもあります.
研究室の,あるいはかつて研究室にいた,学生のみなさんが,どんな感じで外部発表していくかを,書いておきます.まず,卒業研究をしている中で,外部発表をしてもらおうということは,私が指導している範囲では,ありません.標準的には,大学院生になってから,M1で1回,M2で1回,国内会議で発表してもらいます.いろいろな事情でそういう発表の機会が得られず,しかし修士論文を書き上げて留年することなく修士を得ようとする学生は,修論提出後の3月に,電子情報通信学会か情報処理学会の全国大会で発表してもらいます.国際会議と学術論文については,教員サイドでうにゃかにゃやります.「うにゃかにゃ」って何ですかと言われますと…ま,先生は,学生の研究成果を丸々,自分の成果として,論文にするの? - わさっきを参照してください.

その他の学術文献

我々が積極的に投稿しようというものではありませんが,ときどき,研究を進めるのに重要な情報がまとめられていて,我々は参考文献に記載してよいものがあります.学会誌の解説記事,紀要,報告書です.
学会誌というのは,研究成果を学会員に広く伝えるための媒体です.そこにも,1件あたり2〜6ページ程度の解説記事が載っています.ただし学術論文と同じで,口頭発表はありません.質は様々です.分野の解決/未解決課題を知るのには非常に良いと思います.小さな学会(例えば情報知識学会)では,学会誌の中に学術論文も解説も入っているところがあります.
紀要というのは,大学や研究所などが定期的に発行する学術雑誌のことです.論文誌や学会誌は,学会員が書く論文が載る場なのに対し,紀要は,発行するところに所属する教員・研究者・学生が著者となるのが一般的です.ページ数は,学術論文と同じかそれよりも多いくらいです.これも,口頭発表は伴いません.私が読んだ範囲では,その信頼性は,国内会議よりは高いけれど,学術論文と同じとまではいかないなあといったところです.
報告書は,何らかの研究課題で,一人または複数人で研究をして得た成果を学術論文のスタイルで取りまとめられたものを指します.内容は,すでにどこかの学会で発表されていたり,その研究課題に関する公開研究会(シンポジウムなど)で口頭発表されたものだったりします.著書と同様に,代表者による前書きがついていることもあります.ページ数の制約がないため,表や付録となる情報が盛り込まれていることがあります.信頼性は,国内会議以上,紀要未満でしょうか.

特許と論文

特許は,有用な発明を公開した者に対し,一定期間その発明を独占的に使用する権利(特許権)を国が付与するという制度です.詳しくは,Wikipediaその他を参照してください.
特許が成立するプロセスは,論文が掲載されるまでと全く別です.簡単に名称を挙げると,出願,公開,審査,登録などの手順があります.審査の結果,認められない(拒絶査定と言います)こともあります.私自身も,機会があって出願に携わりましたが,残念ながらこれまですべて,通っていません.そうそう,認められたら認められたで,毎年,登録料を納める必要があります.
さて研究室にいる我々と,特許出願の関わりですが…
すでに公表された事柄に対して,特許は認められません.なので安易に「研究でこんなことしたらこんなんになった〜」と,研究成果をインターネット上で公開してはいけません.ブログも,Twitterもダメと考えましょう.メールは,私信なので公表にはなりませんが,何かトラブルがあってメールが流出するとかあったら,大変なことになりますね.研究ノートに書くようにしましょう.
特許出願は論文投稿より前にするのが原則です.近年では,卒業論文・修士論文も,公表とみなされます.ただし,発明の新規性喪失の例外規定(特許法第30条)が受けられるかもしれません.主要な学会や,うちの大学の卒業論文・修士論文も,この例外規定の対象です.ただし特許出願の可能性があるものは,公表前から計画をきちんと立てておきたいものです.

論文を,どうやって見つける? どう活用する?

「論文をどこから見つけるか?」ですが,大きく2つの方法があります.
一つは,先生や先輩からもらうことです.
もう一つは,Webで検索することです.論文検索サイトとして,国内ならCiNii,国外だとGoogle Scholarが有名です.結果として出てくる情報は,著者,タイトル,文献情報です.概要も合わせて読めることもあります.論文そのものまで,取得できるかどうかはわかりません.ただ,学内で検索して探すと,向こうのWebサーバからは,どこからのアクセスなのかが分かるわけで,幸いにも契約をしていれば,論文ファイルを無料で取得できる可能性もあります.論文検索は,学内でするに限ります.
そうして読んだ論文を,どう活用すればいいでしょうか?
これについても,2通りあります.
一つは,論文というのは「過去の成果」なのですから,そこから,その時点の未解決課題を知ることです.あるいは,新たな用途を考えるというのも,いいでしょう.
もう一つの使い道はですね,自分の論文で引用し,参考文献に記載することです.参考文献なしでは,オリジナリティを示せないのです.
まあ,参考文献がたくさんあるからといって,いい論文であることは,保証しないんですけどね.