レオナルド熊の死と新生 レヴェナント:蘇りし者
レオナルド・ディカプリオがついにオスカーを獲ったよ!ということで話題となった最新作「レヴェナント:蘇りし者」を鑑賞。これは「ズートピア」と同じ日に観たのであるが、同じ動物が出てくる映画でもぜんぜん違うよ(当たり前)。この映画のちょいグロシーンでカップルがキャーキャー言ってたが「ズートピア」でも見てろ!ってツイートを見かけたりしたんだけど、個人的には「ズートピア」の方がハードだよ!(もちろんグロ描写的な意味ではないですが)。短め、駆け足的に感想いきます。
物語
1823年アメリカ北西部、極寒の寒さの中狩猟をして毛皮を調達する一団。彼らはインディアンに襲われ多大な犠牲を払いながら難を逃れる。自然に詳しいヒュー・グラスは体調の信頼も厚い。インディアンとの間にもうけた息子ホークとこの一団に参加しているが、それゆえに白い目で見るものもいる。フィッツジェラルドもその一人だ。グラスが見回りに出た朝、熊の親子と出会い瀕死の重傷を負う。このままでは足手まといになり、全員が遭難しかけないことから、グラスの死を看取り埋葬したら合流するメンバーを募る。ホークとフィッツジェラルド、そしてまだ若いブリッジャーがその任に着く。
フィッツジェラルドはグラスの了承のもと彼の息の根を止めようとするがホークに見つかりホークを殺してしまう。フィッツジェラルドは現場にいなかったブリッジャーを騙しグラスに僅かな土をかけ、その場を離れる。
動けないまま息子が殺されるところを見ていたグラスはやがて奇跡的に一命を取り戻し、フィッツジェラルドへの復讐を誓って必死のサバイバルを始める……
監督は「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。前作がほぼ劇場という閉じた空間で展開されたのに対して、本作は大自然が舞台。雪景色、極寒の山、森、川。実際に撮影の多くは自然の中で行われ、しかも脚本通りに、順繰りに撮影されたとかで、古き良き超大作という趣もある。
事前にはレオナルド・ディカプリオと熊が戦う、というぐらいしか知識がなくて「レオナルド熊だね」とか「『レオVS熊』って表現するとライオンと熊が戦うみたいだね」とか冗談言っていたのだが、映画はそんな冗談のいえる雰囲気のものではなかった。
実は途中で少し眠ってしまったのだが(グラスがバッファローの群れと出会うところから目覚めたらインディアンが吊るされていた)、特に大きな影響はなしか。熊(ハイイログマ)との戦いは物語の序章であって、メインではなかったです。
ディカプリオはこれでオスカー(主演男優賞)を獲って、そのことについては申し分なかったのだが(ただ個人的にはもっと早く取っていても良かったと思うし*1、その上でこれで?と言う思いはちょっとある)、セリフは少なく、生き延びようとするその強い意志がが前面に出てくる感じ。ヒゲの容貌に凍りついた鼻水もそのままで全編を通す。
ディカプリオは41歳なので10代後半の息子(ホーク)がいても全然おかしくないのだが、やはりこの映画でもその若さがちょっと災いしてホークとの親子の描写はちょっと不自然に感じることも。「インセプション」とかのまだ小さい子供がいる描写なら全然自然なんだけどね。
で、ディカプリオといえばなにげに数多くの実在の人物を演じた俳優なのだが、本作で演じたヒュー・グラスも実在の人物でアメリカの西部開拓時代初期を代表する伝説的な人物だという。僕も本作で知ったぐらいだが、この映画で起きた出来事はほぼそのまんまということらしい。
映画では熊に襲われたあと、奇跡的に生き延びたグラスの決死行が描かれるが、その中で何度も象徴的な死と新生が描かれる。特に死んだ馬の腹を切り裂いて、内臓を取り出し、その腹の中で暖を取るシーンはその最もたるものだろう。グラスが生き延びる代わりにホークが、インディアンが、隊長が死んでいくのも象徴的だ。
主人公であるディカプリオ以外は宿敵となるフィッツジェラルドにトム・ハーディ。ここでは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」とは真逆の環境のなか悪役を演じた。なんでしょう?基本的にむさい男だらけで個々の判別もつきにくい中、トム・ハーディの出演しているシーンは周りと温度が違うというか、ちょっとぴりっとした雰囲気になっているのはさすがだ。
ほかに隊長に「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」でファーストオーダーのハックス将軍を演じたドーナル・グリーソン。後は個人的にジム・ブリッジャーを演じたウィル・ポーターが印象深い。この人は「ナルニア国物語」の第3章で主人公兄弟の嫌味な親戚ユースチフを演じたが、顔はそのまま、身体だけ大きくなって「メイズ・ランナー」でも主人公と反発するガキ大将のような役柄を演じていた。いや全然美形でないんだけどいい表情の持ち主なんですよ。
ただ、観ていてどうしてもゲームのプレイ動画を見ているような気持ちになった。それはCGが多く使われているとか、設定がゲームっぽいとかではなく(そういう意味ではむしろ正反対な作品だ)、大自然なのに自在なカメラワークとか編集とかの部分で最近のオープンワールドのコンピューターゲームぽいなあ、とか思ってしまった。具体的にはやはり雪山で熊と戦うシーンがある「レッド・デッド・リデンプション」なのだが、最近の「アンチャーテッド」というゲーム(僕自身は未プレイ)のCMなど「これはゲーム画面です」と言う断り書きが必要なぐらい実写と見まごう映像でしかもカメラワークは自在と言う画面が先にゲームで慣らされていて、映画で出てくると「ゲームっぽい」と脳が判断してしまうのかもしれない。
結果として監督の前作「バードマン」と全然趣は違うにもかかわらず、近い雰囲気はある。どうにもまだ映像の凄さが物語の中で生かされている、と言うよりこれみよがしな技術のひけらかしっぽく見えてしまったりするんだよな(ただこの作品撮影監督のエマニュエル・ルベツキの意向もかなり強いみたいです)。
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*1:「ギルバート・レイプ」でとってても良かったと思う