ディケイドはターンA になりえたか?
「仮面ライダーW」のOPが映画宣伝でまるで「ディケイド」のOPのようになっている。
と言うわけで近日中に「仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイドMOVIE大戦2010」を観に行く予定なんだけどその前に自分なりの平成ライダー総論を。
まず、断っておくこと。
- 僕はすべての平成ライダーシリーズを見たわけではない。
- 個々の作品を貶すつもりは決してない。
まず、複数の作品がシリーズ物として括られるにはいろいろと条件があるだろう。
1)世界観が共通している。
同じ世界の出来事であれば、それはシリーズとして問題ないであろう。例えばマーベルコミックスの作品は基本マーベルユニバースと呼ばれる共通の世界を舞台にしている。だから一見別物のような「ハルク」と「アイアンマン」もシリーズと言えるわけだ。
日本のものだと「宇宙刑事」シリーズがもっとも分かりやすいだろう。
2)構成(フォーマット)が共通している。
例えば戦隊物は作品によってSFだったりファンタジーだったりする。ストーリーだけならとても同じシリーズとは言えない。でも
- 5人(数は色々)の色分けされたヒーローが、
- 悪の怪人と戦い、
- 最後は巨大ロボット(これも設定は作品ごとに異なる)戦。
ここ最近の5作品(「マジレンジャー」〜「シンケンジャー」)の巨大ロボット設定を見比べても、洋風だったり和風だったり中華風だったり、純粋ロボットだったり生物だったり猛虎百歩拳だったりとそれだけ見ると同じシリーズとは思えない。にも関わらず同じシリーズと認識されるのはこれはフォーマットが統一されてるからに他ならない*1。
3)デザインが統一されている
これは前述の戦隊物もそうなんだけど、たとえ世界観や設定が違ってもデザイン的に似たものはシリーズとして捉えやすい。基本となるデザインがあってそれに似た物があれば取り合えずシリーズとしてみる。東映メタルヒーローが分かりやすいだろう。
さて、問題の「平成仮面ライダー」シリーズだが文句なしに「昭和仮面ライダー」はシリーズ物である。3つの条件はすべて満たしている。
平成ライダーはその点微妙すぎる。一作目「クウガ」で改造人間と言う設定ではないと聞いたとき僕はこれを「仮面ライダー」として認めて良いのか微妙だった*2。
それでも「クウガ」「アギト」はまだ仮面ライダーぽさはあった。本格的に昭和ライダーとの乖離が始まるのは「龍騎」からだ。フォーマットすら別物となり、デザインだけが仮面ライダーらしさ、となる。それでもまだライダー=バイクという個性はまだ残っていたが「響鬼」になると完全にそれも消える。世界観、フォーマット、デザインすべてが違う。放送当時いつにもまして「これは仮面ライダーじゃないだろう?」との思いが頭をよぎった。それもそのはずで「響鬼」はもともと「変身忍者嵐」のリメイクとして企画されたものらしい。平成ライダーは劇中で「仮面ライダー」と名乗ることがほとんど無いのが特徴だが、つまりブランド名として利用していると言うことなのだろう。
「電王」は一般のドラマも含めてその年一番面白かった作品だと思うが仮面ライダーとしては微妙。まったく新しいヒーローとしては最高だったのだけど。
そして10周年として企画された「ディケイド」はそれぞれのライダーにそれぞれの世界があり、主人公がその世界を巡ると言う物語になっていた。これに似たものはガンダムシリーズの「ターンAガンダム」だ。当時の「宇宙世紀ガンダム」以外の「G」「W」「X」を肯定し含めるという意図で描かれそれはおおむね成功したと言ってよい。何より原作者である冨野由悠季自身によるものであることが大きい。
原作者が「これは仮面ライダーだ!」と言ってしまえばそれは仮面ライダーなのだろう。しかし石ノ森章太郎は既に亡くなっている。もちろんクレジットはされているが平成ライダーを石ノ森が考えたわけではない。
話を「ディケイド」に戻す。「ディケイド」ではどうもヒーロー=仮面ライダーであるかのような描写がある。つまり仮面のヒーローはすべからく仮面ライダーなのだ。その意味で興味深いエピソードが「シンケンジャーの世界」である。これはディケイドがシリーズを越えて戦隊ヒーローの世界に行くかなりイベント度の高いエピソードだがそこは「仮面ライダーのいない世界」とされる。現在のライダーデザインの多様さから見ればシンケンジャーだってライダーに見えないことも無い。にもかかわらず明確に区別される。
終盤になって昭和ライダーも話に絡み始める。しかもどうやら世界がつながってるはずの昭和ライダーもそれぞれ別の世界*3、として。もちろんオリジナルキャストを用意するのは大変だろうけど*4そこはやはり過去のテレビシリーズをそのまま流用するするべきだったと思う。
しかも「キバ」と「剣」に至ってはTVシリーズと「ディケイド」の二つの世界がある始末。
さすがに最終的な評価は映画版を見ないと結論できないけど*5現在のところ仮面ライダーにおけるターンAとして成功したと言いがたい。さらには次のライダー「W」まで絡むわけで大変だ。
「W」は面白いよ。デザインも従来のライダーに近いし、ちゃんと仮面ライダーを名乗るし、バイクに乗る描写も多い。11作目にして基本に返ったと言うことなのかなあ。
長文を書くと最後のほうがグダグダになってしまうのは許してください。