メソッド屋のブログ

米マイクロソフト Software Development Engineer 牛尾の日記です。ソフトウェア開発の上手なやり方を追求するのがライフワーク。本ブログは、個人の意見であり、所属会社とは関係がありません。

ピンハネの世界

世の中には、使う側、使われる側がある。一部の優秀な人が多くの平均的な人を使うのがどの業界でもあること。確かに現状はそうだと思う。しかし、私はそういう世界からは脱退して、自分が使いも、使われもしないゾーンに居続ける事を目指している。



ピンハネの定義


 私は大手SIer出身で、技術系のコンサルティングファームを経て独立した。会社にいるときはピンハネについて考えた事も無かった。ここで、ピンハネについて定義しておくと、「自分は稼働せずに、他の人に働いてもらってその上前をはねる事」と定義しよう。




ピンハネはびこる世の中


 私は独立した後、このピンハネの辛さについて思い知らされた。正直言って自分もそう思った事があるのだが、「自分は稼働せずにお金を稼ぎたい」いわゆる不労収入の世界はみんなの憧れだ。
 これを実現するために、素晴らしいビジネスの仕組みを考えるとか、素晴らしいソフトウェアシステムを作るということだったら私も大賛成なのだ。
 しかし、現実世界では、人を働かして上前をはねる「ピンハネ」モデルが主流だ。独立して本当にそう思った。沢山の人がうまく「ピンハネ」をしようと考える。誰だってお金儲けしたいのだから、ある意味当たり前だ。ビジネスだから否定はしない。



ピンハネされるのはむっちゃ辛い


 しかし、ピンハネをされるのは本当に辛い。ピンハネの率が高いとよくわかる。ピンハネ率が高いと、お客様は自分に対してものすごいお金を払っていることになる。一方自分はそんなもらっていない。だから、お客様は自分に凄く期待をするので、凄くハードルが上がる。一方、自分はそんなにもらっていないから、自分が食べていくのに、ガンガンに働かないといけないことになる。その割に実入りはそうでもない。
 自分は自由と、お客さんに喜んでもらう素晴らしい仕事ができるようになれるように、日々鍛錬する事が欲しくて独立したのに一体これは何なのだろう。
 そして、お金や時間的な余裕ができないから、海外に出かけていったり、コミュニティに貢献したりも出来なくなる。


 ピンハネをする側の価値は「会社のカンバン」だとか「仕事をもってくる」事だけなのだ。時には契約上自分が取ってきてもピンハネされる事もある。自分には全く余裕等なかったのだ。こんなんだったら、忙しいだけで、サラリーマンより大変なだけやん!




ピンハネからの脱出


 ある時から、このピンハネの負のループにいるのが嫌で、自分で直接契約するようにしてみた。すると、びっくりした。お客さんは、自分に対して「これだけやってもらってるのに、あの値段やったら本当に安い!」って凄く喜んでもらえた。自分も普通にやってるだけなのに、自然と、会社の蓄えが増えてきた。だから、余裕ができてイギリスに語学留学できたりもした。
 お客さんにはずっと安いお金で請求してるのに、ピンハネ時代よりも儲かってるってどういう事?本当に自分で「エサ」を取れる事の重要性を学んだ。ピンハネが「ある、ない」だけで、この違いは一体なんなんだろう?




使う側と、使われる側


 気づいた事は、ピンハネする側は、「使う側」であり、される側は「使われる側」という立場である事に気づいた。「使われる側」にいると、どうしても「使う側」と比べると立場が弱くなってWin-Winにならない。正直に言うが、私はSIerにいる時から人に恵まれていて、本当に腹黒い人は周りにいないし、魅力のあるいい人ばっかりだ。そういう人とばかりお付き合いさせている。にもかかわらず、ビジネスになって交渉になると、「使われる側」にいる限り、Win-Winの状態になれなかった。その人がいい人とか、悪い人とか、ビジネスだから関係ない話なのだ。




ピンハネされる事とは


 振り返るとピンハネされる事というのは、自分がガンガンに稼働しているのに、その稼働で得た価値を他の人にもっていかれている状態である。不労収入の逆である。不労収入があると、ガンガンにお金が儲かるのであれば、もちろんその逆を意味する。しかも、パワーバランスとすると、「使う側」の人の方がパワーがあるので、「使う側」の人からするとお金を払ったのだから、出来るだけお金を払った人には働いてもらいたいのが人情だろう。
 会社もある意味同じ形態だ。だから本来会社とは、経営者が、社員の人の8時間だけの時間を買って言う通りに働いてもらうかわりに、安定してお金を払うという形態のはずだ。しかし、日本人はハードな労働をすることは美徳という価値観もある。そこで、多くの人は、何も気にする事無く、会社の為と、生活や健康をを犠牲にして残業しまくったり、休出しまくったりしても疑問を感じない。
 私からすると、8時間以上働いているのにお金を経営者の人が払わないことは、体のいいピンハネにしか見えない。そんなん誰が得か考えてみればわかるだろう。
 もちろん、営業してもらって案件紹介したもらったので、お金を払うとか、口座を貸してもらったからお金を払うというのは、ピンハネとは異なる。それはバリューを出して頂いたので、その対価を支払っているだけだ。




使う側と、使われる側からの脱出


 だから、「使われる側」から脱出する事をオススメする。その為には、逆説的だが、会社に勤めて実力をつけよう。自分で頑張って、勉強して、お客様にバリューを出せるようにしよう。世の中が「ピンハネ」で出来ている事を理解することが重要だ。一生ピンハネされ続けるなんてばかばかしくないか?一生懸命やるにしても、ピンハネに気づかずそこにいるよりも、ピンハネから脱出するために戦略的にやってみよう。

 しかし、それは、みんな独立した方がいい。といいたいわけではない。ピンハネの世の中の仕組みをしっていても、安定の為や技術の勉強のためにそれを選ぶ人もいるかもしれないし、それは良い選択だ。会社のビジョンや考えが気に入る人だっているだろう。
 ただ、私が思うのは「ピンハネの世の中の仕組み」をわかってなくて、自分がピンハネされて、誰かの不労収入の分を稼働して稼いでいるとい事を実感していないことはもったいないと思うのだ。こんな事、独立するまでわかってなかったのは私ぐらいなのかもしれないが、、、。


 大抵の人は、自分でバリューを出せて、エサもとれるようになってくるとピンハネなんてばかばかしく感じると思う。だから、その仕組みに気がついて、自分で選択出来るようになる事は本当に重要な事だ。まだ、そうでなくても、それを目指す作戦を考えて実行する方が楽しそうだ。


 また、自分でマネジメントや経営を学んで「使う側」に回るのも一つの手だ。是非そういう人はそこでバリューを出してほしい。それはビジネス上悪とかでは決していない。私がピンハネ形態が嫌いなだけだ。



使う側でも、使われる側でもない選択


 さて、私はどうなりたいか?というと、「使う側でも、使われる側でもない」選択をしたいと思っている。ピンハネが嫌いなので、されるのも、するのも嫌なのだ。ピンハネをせずに、リッチになれる方法はやってもいいけど、ピンハネでリッチになるのは私は嫌だ。そんなんより、良い仕事をしたい。喜んでもらいたい。

 
 ピンハネは、人が1人以上の稼ぎを稼ぐ時の基本的な方法だろう。私は一人分のお金を稼げたらいいと思っている。貧乏になりたい訳ではないが、そこそこリッチで、自由な生き方を出来る方がいい。だから、人に頼らず、自分の足で立って、お客さんにごっつい喜んでもらえるように鍛錬したい。野生動物は肉食動物でも必要以上にエサを取らないのと同じ感覚だ。だから、周りの人もその人が頑張った分だけ、その人がリターンを得てほしいと考えている。


 私は昔からすっごいスーパープログラマで、むっちゃ価値を出しているのに安く働いているのを沢山見てきた。現場で価値を出している「本人」が価値に見合う対価をもらってほしい。だからピンハネされているのをみると本当にもったいなく思う。だから、そういう人は自分の価値に気づいて欲しい。そうでない人は、是非がんばって実力をつけて、「使われる側」のゾーンから脱却してほしい。別に独立しなくても、そうなれたら、会社もいつでも辞めて良いので、「使う/使われる」ではなくて、Win-Winでないとお互い取引しないという関係性になれる。ただし、その為には、本当にお客様に対して価値を出せる人になる必要がある。だから私ももっと頑張ろうと思う!もちろん楽しんで!



使う側でも、使われる側でもない会社


 会社形態だとどうしても、使う側/使われる側になる傾向にあるが、私が最近気に入って観察させてもらっているソニックガーデンさんの形態は違う。「使う側/使われる側」が無い会社で、非常に面白い。


 1人では出来ないエキサイティングな仕事をするために、会社の形態になっているけど、「使う/使われる」という感じではなく、「経営する人」「プログラマ」という役割分担なだけみたいだ。だから、社長の給料も、副社長が決めているし、プログラマはバリューを出したらその分だけ、給料が増える。もちろん経営者が活躍したらその給料も増えるだろう。


 最近出来たギルドに関しても、ソニックガーデン側とギルド側に使う/使われるの関係が全くない。だからノルマも無い。使う、使われる関係があるから、Win-Winにならないのだと思う。ノルマだ、無理な納期だとか、成長し続ける計画とか。ナンセンスだ。だからそうじゃなければ無理しなくてもWin-Winになれるのでは?と思う。


 社長の倉貫さんと話した時に印象的だったことがある。普通の会社は、社長が偉くて、次に取締役が偉いといったピラミットがあるけど、それを、横に倒したような考えをしていると言っていた。つまり、役割が違うだけで、誰が偉いとかじゃないという感じだ。


 こういう世界になると、数人の「使う人」が沢山マネーをもうけて「使われる人」が労働を提供して安定して少ないお金をもらう形態ではなくなる。だから、ビジネスの仕組みか、ソフトウェアがヒットしない限り、「むっちゃお金持ち」には誰もならないだろう。
 でも、この形態は関係している皆がより幸せになりやすい形態だと思う。だから、会社や考えをもった人がもっと増えてほしいなと思う。こういう関係性の方が、私は、自分も、関係者もみんなが楽しいと思うのです。こういうのは、いい人とか悪い人とかそういうのじゃなくて、「仕組み」だと思う。


んー。なんか最近ソニックガーデンファンみたいな感じになってきたなぁ。実際ファンなのですがw でも本当に面白いのでコレからも観察&情報発信してみたいと思いますww


結論


 多くの人に「ピンハネの世の中の仕組み」を知ってほしいなと思います。その上で自分の人生の選択をしたらいいのではと思います。私は「使う側/使われる側」ではない選択をしたいし、そういう考えの人や、会社がもっと増えてくれたら、もっと楽しく仕事ができる世の中になると思います。ただし、私の趣味の問題なので「使う側/使われる側」の世界を否定する物ではありませんし、それが普通だと思っています。