ブログでプレゼン 〜キーエンスのコンサルティング営業について〜

先日の私のエントリー「私が考える良いプレゼンにするための6つの誓い」、「良いプレゼン「6つの誓い」に頂いたコメントに回答してみます」は多数の方にご購読頂き、また色々なサイト・ブログでご紹介頂きました。

そのエントリーを執筆後に、ある企業の若手営業マン向けに小規模ですが「キーエンスのコンサルティング営業」についての講演をさせて頂く機会が御座いました。今回はこのプレゼン資料を使いまして、ブログ上でプレゼンをしながら、どんな感じでやったのかというのを文章で再現してみたいと思います。皆様のプレゼンの参考になれば幸いですし、キーエンスのコンサルティング営業は、特にBtoBビジネスの営業成功事例として学ぶべき点が多数あると思いますので、そういう視点で見て頂いてもよいかと思います。

ちょっと全体的に資料に文字が多いのは自覚しているのですが、今回の資料はテキストの側面もありまして、皆さんにコピーをお配りして、コピーを見つつプレゼンを聞いて頂きました。

今回のパワポ資料は表紙・目次含む15枚となりましたので、長文になってしまい恐縮です。。

キーエンスのコンサルティング営業について

みなさんこんにちは。和田伸午と申します。本日はキーエンスのコンサルティング営業について皆様にお話させて頂きたいと思います。

(補足)
いつもでしたらもう本題に入るところですが、今回私は冒頭に下記のお話をしました。ちょっと「しらけ鳥」が飛ぶ危険を感じたからです。。

キーエンスは高給で大変有名な会社ですので、「営業がすごい理由は高給のおかげだ」という話になってしまいがちです。ですが、私はそれだけではないと考えておりまして、今回ご紹介するような地道な取組がキーエンス営業マンの強さの源泉だと考えております。ですので、是非私の話に少し耳を傾けて頂き、少しでも皆さんの営業活動に生かしていただければと思い、本日準備致しました。

そして今回の内容ですが、この5本立てで構成しております。

では早速本題に入りましょう。まず、キーエンスの取扱製品を見ておきたいと思います。

キーエンスの取扱製品ですが、製造業のFA化(Factory Automation)に欠かせないセンサー(検出/計測)・測定器が主力商品でして、センサーを中心とした製品群を組み合わせて「ソリューション」を提供する、これがキーエンスのビジネスの真骨頂であります。

(補足)
という感じで、プレゼン資料タイトル下の行を、若干変化を付けつつ読んでいきます。資料はお配りしてますので、文章以外の細かい部分の説明はしませんでした。あとは、「ヘリコプターのラジコンなんかもやってるようですね。。」と若干和ますお話を入れたり(それほど和みませんでしたが。。。)

皆さんの中には、「なぜ今日キーエンスの話なのか」とお思いの方もいらっしゃると思いますので、ちょっとその点をお話しておきます。

図でキーエンスと御社のビジネスフローを簡単に書いたものですが、このキーエンスのソリューションを提供するビジネスフローと皆さんのビジネスフローは、非常に共通点が多いと思うんですよね。ですので、キーエンスの営業のお話の中に、皆さんの営業活動に生かせることがあるのではないかと思いまして、今回ご紹介しようと思った次第なんですね。

そこでまず、キーエンス全体のビジネスモデルを整理してみたものが次のスライドになります。

ちょっと字が多くて恐縮なのですが、ここでのポイントは、営業マンのコンサルティング営業を基点とする顧客直結型の情報の流れ、そしてこの情報の全社的な徹底活用が、キーエンスが得意とする「顧客さえ気付かない潜在的課題を解決するソリューション提供」の原動力となっているところです。営業マンが非常に重要な役割を担ってるわけですね。

またモノの流れでは、ファブレス化、製品の標準化など合理性を徹底的に追求しているんですが、優れた製品開発を支える自前の開発・製造機能をキーエンスは持っていまして、単なる合理性・低コスト追求ではなく、付加価値の高い商品・サービスを提供できる体制が整備されています。

また顧客対応、そして納入・アフターサービスの「Quick Response」が非常に重要なキーエンスの強みになっておりまして、これを支えているのがキーエンスの営業マンなんですね。

それではここからはキーエンスのコンサルティング営業の強さを詳しく見ていきたいと思います。

キーエンスの営業は、製造現場など顧客の深い部分に入り込み、図のように「顧客ニーズ探索・翻訳」「顧客へのソリューション提案」「顧客への徹底フォロー・提案の実現」のフェーズを繰り返し回していくスタイルになっています。このフェーズを回していくことにより、「顧客の潜在的課題の発見⇒潜在的課題解決により信頼獲得⇒更に深い部分にアクセス可能」という「Good Cycle」が回り続けておりまして、これがキーエンスの持続的な成長の原動力となっているんですね。

そこで次はコンサルティング営業の実例をご紹介したいと思います。これは、ドリンク剤のパッケージ内にストローが入っているか、入っていないかをセンサーを使った検査で判定するという事例です。

スライドの右真ん中あたりに落書きみたいなものを載せておりますが、これはキーエンス営業マンが顧客の製造現場で実際顧客と一緒にセンサーを使った検査方法を検討したときの実際のメモになります。こんなメモがスタートとなり顧客へのソリューションを提供していくのですが、顧客のニーズの把握からソリューション提案、デモンストレーション、導入と社内への横展開まで営業マンが一気通貫で手がけるのがキーエンスのコンサルティング営業の特徴であり、強みであります。

次は、先ほど4ページで少しお話した営業マンの「Quick Response」。これについての顧客の賞賛の言葉がありましたのでご紹介したいのですが。。

このこわもてのエンジニアが言っております「電話一本ですぐに実機を持ってとんで来る」。これがキーエンスの営業マンを良く言い表していますね。この顧客に深くコミットしたキーエンス営業マンの「Quick Response」。これは18時までの注文には翌日納入で対応する「即納体制」と共に、競合他社を寄せ付けないキーエンスの強力な差別化要因となっていおります。

こんなにすごいキーエンスの営業マン達ですが、やはりこのすごさは、これを支える仕組みがないとなかなか持続するものではありません。そこで、この強さを支える仕組みについて見ていきたいと思います。

このスライドは、先ほど5ページで見ましたキーエンス営業マンのビジネスフローをベースに、その役割実現のために必要な能力、そしてその能力を習得するための仕組みをまとめたものです。このシートは非常に重要です。この「どんな能力が必要なのか」を明確にすることが非常に重要でして、キーエンスの場合は「顧客への強いコミットメント」「商品への深い理解」「コンサルティング力・提案力」「コミュニケーション力」が必要となってきます。

これらを習得するために「営業マンへの大幅な権限委譲」「商品知識理解・理論武装の徹底」「営業活動の質の徹底追及」「情報・成功事例・ノウハウの共有」がポイントとなり、これを実現する具体的な仕組みとして「1.テリトリー製による権限委譲」「2.週1回の新商品勉強会」「3.無駄な外出はしない」「4.ロープレ(ロールプレイング)」「5.ガイホウ(外出報告書)」が整備されているんですね。では、それぞれの仕組みについて、もう少し見ていきましょう。

まずは「1.テリトリー制による権限委譲」。キーエンスの営業マンは一定のエリアを一人で任されるテリトリー制を採用していまして、その営業マンがマーケティング戦略の立案・実行、コンサルティング、アフターフォローまで全てを一任されております。また顧客に提供した「付加価値」をベースに評価される仕組みになっており、もともと顧客への貢献意欲の強い営業マンですが、更なる顧客へのコミットを高める原動力となっております。

次に「2.週1回の新商品勉強会」。キーエンスの営業マンは本当によく勉強します。新商品の発売前には勉強会が必ず開催され、これも単なる一方通行の勉強会ではなく、「この説明では顧客にうまく理解してもらえない」など、営業側からも意見が出るインタラクティブな勉強会が開催されています。その結果、営業マンはセンサーのことであれば、自力でセミナーを実施できるほどの能力を獲得するんですね。

続きまして「3.無駄な外出はしない」。キーエンスの営業マンの外出は平均週2回、多くても週3回まで。「はっきりとした目的もなく顧客を訪問することは顧客の時間を奪うだけ」と堅く禁じられております。その分、社内にいるときは、顧客の要望への対応、新商品の勉強、提案内容の準備・質の追及など、営業活動の質の向上に費やされます。

次は「4.ロープレ(ロープレイング)」これが1番特徴的かもしれません。まず顧客訪問前にプレゼンテーションの「事前ロープレ」。これは皆さんもあるかもしれないですね。ここで面白いのがこの「事後ロープレ」という取組です。どのような営業活動、セールストーク、プレゼンテーションが制約に結びついたかを再現する「事後ロープレ」を実施して、営業チーム全体で追体験し、成功事例を共有することを目的として行われます。これは一つ皆さんでも導入を検討されては如何でしょうか。

そして最後が「5.ガイホウ(外出報告書)」。営業マンは顧客訪問日に必ずその日に上司に報告します。それだけでなく、営業活動で仕入れた顧客の要望は、新商品のネタに関しては「ニーズカード」、既存品の改善提案は「フィードバックシート」に記入、速やかに企画・開発部門にその情報が送られます。これらの情報がキーエンスの卓越した商品開発力の種となるんですね。

ここまで6つの仕組みを見てきましたが、皆さんもお気づきかもしれないですが、非常にベーシックな取組だと思いませんか。このベーシックな取組を愚直・徹底的にやり、また環境変化に合わせて変えていく、これにより仕組みも更に進化し、営業マンも更に成長していく。これがキーエンス営業マンの強さの原動力になっているんですね。

では、実際にあるキーエンス営業マンの一週間を追ってみましょう。

この営業マンのこの一週間は3日が外出、2日が社内ですね。非常にメリハリがはっきりしています。外勤では、顧客向けの勉強会を開催したり、展示会を開催したりと、単なる御用聞きを超えた高付加価値な営業活動が行われており、また内勤では業界ロールプレイング、営業ツール作成など、営業活動に向けた周到な準備が行われていることがわかると思います。先ほど見ました6つの仕組みもしっかり行われていますね。キーエンスの営業マンは直帰しないんですね。。

これで最後になります。キーエンスの営業マンのコミュニケーション力を分析した人がいまして。。。

その人によりますと、キーエンスの営業マンは「人間力」「論理力」「対話力」を常に鍛えていて、各要素でStage1からStage2、Stage3とスキルアップを図っていくことにより、コミュニケーションの能力を総合的に高めている、ということなんですね。皆さんもこのチャートを使って、自らのコミュニケーション力診断に使って見て下さい。参考になればと思います。

それでは最後にまとめです。

キーエンスの強みである「顧客の潜在的課題を解決する製品・ソリューションの開発」は、営業マンを基点とした情報の流れ、その情報の全社的な徹底活用が大きなポイントとなっています。

そしてキーエンスの「コンサルティング営業」は、顧客の潜在的課題の解決⇒顧客の高い信頼を獲得⇒更に深い部分にアクセス可能、という「Good Cycle」が回り続けており、キーエンスの持続的な成長の原動力となっている。

そして顧客に深くコミットしたキーエンス営業マンのクイックレスポンスは「即納体制」と共に、競合他社を寄せ付けないキーエンスの強力な差別化要因となっており、この強い営業マンの成長をサポートするため、1.テリトリー制による権限委譲、2.週1回の「新商品勉強会」、3.無駄な外出はしない、4.ロープレ、5.ガイホウなどの仕組みが整備され、有効に機能している、これがキーエンスのコンサルティング営業であります。

で最後にボックスに書いていることが本日私が最も言いたかったのはこのことでして、御社のようなBtoB製造業においては、製品やサービスでの差別化が難しい状況であったとしても、今回ご紹介したような「コンサルティング営業」が競合に対する大きな差別化要因となりえる、ということなんですね。ですので、今回ご紹介したキーエンスの事例を少しでも参考にして頂き、皆さんの営業マンとしての成長に生かして頂ければと思い、私のプレゼンを終了させて頂きます。

最後に今回参考にした資料を載せておきましたので、興味を持った資料を是非読んでみて下さい。

では、本日はご清聴有難うございました。。。

最後に 〜お付き合い頂きありがとうございました〜

長々としたブログでのプレゼン。最後までお付き合い頂きまして、有難うございました。前回のエントリーでは「文章の羅列は死んでもやらないと誓う」と言いながら、最後のまとめのスライドでばっちり羅列をやってしまったりと、若干矛盾をはらむ内容でありましたが(汗)、皆さんの参考になればと思います。

私のブログもこの3月でスタートから1年が経過しました。始めた当初では考えもつかなかったほどの反響をいつも頂き、本当に皆様に感謝しております。そんな感謝の意味もこめまして(そんなにたいしたこと無いのですが。。。)今回ご紹介した「キーエンスのコンサルティング営業について」のプレゼン資料のパワポデータを、ご希望の方がいらっしゃいましたら、下記メールアドレスにメール頂ければお送りしますので、メールにてご連絡下さい。何かに生かして頂ければ幸いです。

アドレス:shinwada324@gmail.com

ではでは。今後とも宜しくお願い致します。

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