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気になるのは梅棹忠夫『文明の生態史観』を持ち出すあたり。渡辺氏の梅棹史観パラフレーズによれば、「東対西」「ヨーロッパ対アジア」なんて対立は存在せず、あるのは大陸の野蛮(「中央アジア的暴力」)と海洋の文明との対立である、とのこと。そして「中央アジア的暴力」はいまだに健在で、旧ソ連=ロシア、そして中国として潜在的脅威であり続けているのだ、と。
この構図ってマクニールにも似たような議論があったんですが、しかし微妙に違う。マクニールによればある時期(軍事革命以前?)のユーラシアの歴史は、果敢な機動力で侵攻する遊牧民と、定住民とのせめぎあいの歴史として理解することができるわけです。これは梅棹=渡辺の「中央アジア的暴力」と響きあう発想。しかしマクニールの場合、ロシアはともかく中国、中華帝国は遊牧民と対立する定住民の側に繰り入れられるのですね当然。そしてまたこの対立は軍事革命によって、定着民サイドの圧倒的勝利によって終了してしまう、というわけ。