スターバックスはむしろ「自分を常連扱いしてくれる店」の代表である。

匿名空間、という言葉に一部納得はしかけたけど違和感も感じたので、以下まとまってないことを書く。そう言えば先月の某2次会でもこんな話をしたな。*1

 都会は人が多いために個人の特定が難しい匿名空間である。その反動から、サービス業において、匿名性の高いチェーン店よりも、個人経営のこだわりのある店のような顕名空間が良いと評価されることが多い。そして、地方都市は人が少ないために顕名空間になりやすい。街を歩けば知り合いに会うこともある。そのため、サービス業も顕名空間となりやすい。
※ここでの地方都市とは10万人以下の都市を想定している。

チェーン店のような匿名性の高いサービス産業は客を差別しない

外国人が多いから、とかの特殊要因以外で人口10万程度の街にスタバが出来るかどうかと言われればかなり微妙だと思うんだけど、まあそれはおいておいてもし仮に人口10万の街にスターバックスが出来たら、その店の店員はかなりの確率で顔見知りだよな、と思う。そんなスターバックスに匿名空間が期待できるかどうか、というのはバイトの教育次第だろうな、とも思う。

 以前、長野の人がスターバックスが地元にくることを期待しているという新聞記事を見かけたことがあった。地方ではおシャレなカフェは少なそうだが、それにしたって個人経営のいい感じのカフェぐらいあるだろうし、おシャレといっても全国展開しているようなチェーン店のおシャレ度ってそんなに高くないだろうし不思議だ…なんて考えていた。しかし、今から考えると、これは匿名空間を望んでいるという面もあったのかもしれない。

チェーン店の存在意義、というのはまあ「それがある程度には都会」というステータスが欲しい、ということであって、だから「和民」だとか「ガスト」だとか「築地銀だこ」とか「セブンイレブン」だとか、まあそのブランドのどこがステータスだよ、といわれそうなものでもそれがあるだけで嬉しいと思う人は一定の割合でいる。

ブランド名はそれだけでプラス修正がかかるし、地元資本はそれでマイナス修正になる。実際にそのチェーン店が地元資本がフランチャイズで作ったものだとしても、だ。

そんな前提のなか、そう言う意味ではスターバックスは「都会にある」というブランドとしてはその役割を果たすし、そのなかでもある程度カフェとしてはおしゃれでもあるということで、他のそれよりも良い立場にあったことは確かだ、少なくとも5年ほど前までは。

5年ほど前、という話にしたのは「スターバックスマニアックス」というスタバ本が出たのがだいたい5年ほど前だから。確か「オースティン・パワーズ」あたりで「悪の秘密基地」に使われたり、「シュレック」でスタバから向かいのスタバに逃げる、なんてネタが出たりしたのもこのあたりじゃなかったかとうろ覚え。

そういう意味に付け加えて、考えておきたいのはこの「スタバ本」という存在だ。この本に限らず「スタバ」「スターバックス」で検索してみれば分かるとおり、スターバックスはチェーン店でも常連気分になれる店の代表格じゃないだろうか。マイカップは持参できるわ、変なオーダーは一見さんお断り状態だわだし。

個人経営の店は「店主の顔が見える」と言われるように顕名空間である。こうした顕名空間には、常連問題が発生しやすい。常連になれば、快適なサービスを受けられるが、そうでなければ、よくないサービスを受ける可能性もある。

スターバックスによくあるツッコミで「トールってなんだよ!SMLでいいじゃん」って言うのがあるんだが、実はスターバックスというのはこの常連扱いをシステム化したことが、日本でのある一定の成功につながった要因だと思っている、というかそういう考察は多分探せば5年以上前からあるはず。同系統でいえばドトールあたりと比べてみても、注文は格段にしにくいけど、そこは理解しておけばスムーズに注文出来る。でも、そういう“気分”のみ差別化して、オマケとか値段とかそう言ったところでは一見さんも常連も基本的には同じ扱い、という程度にしたことで、基本サービスは同じで店からの持ち出しもほとんどない、といういい感じのシステムになったわけだ。

そして、スターバックスは都会にある、という前提があれば、そこでスムーズに注文が可能、というのは、都会暮らしに慣れている、という印でもある。どのくらいの割合かは分からないけど「長野にもスターバックスが欲しい」という人たちの中には、ある程度その印を見せたい人がいたんじゃないかなあ、と思ったりする。

話はそれるが、盛岡という街は借力の「盛岡の噂」(Chakuwiki)にもある通り、スタバが2軒潰れた街だったりするが、盛岡1号店の盛り上がりはすごかった。11月の中旬、もう雪がちらついてるって時にわざわざオープンカフェ部分でノートパソコン広げてコーヒー飲む人がいたんだよね。あれ、やってみたかったんだろうなあ。

なお、お気にいられリストの公開はたぶん月曜になります。

*1:今回の話は言及先のエントリへのブクマコメントに書いた「でも、自分がその小さい店の常連になれればいいとも思っているはず。」とかから始まるタウン情報の未来とか、その某2次会でしゃべった発想を転換した地域SNSの可能性とかそういう話の露払いにしようと思っていたのだけど、なんか書いているうちに長くなりすぎたんで書く気がなくなってしまった。これはまたそのうち。