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世界で2番目に財政健全性指標が改善した国とは?

現在の日本は財政健全性指標(政府債務÷名目GDP✕100)が約250と、世界一悪い国として知られています。 もし財政健全性指標が改善されるならどれだけ経済運営が楽になるかわかりません。

次の図1は、2011−2015年の4年間で比較可能な36カ国で財政健全性指標がどれだけ改善/悪化したのかを調べたものです。
最も財政健全性指標が改善したのは、2011年に政府債務を踏み倒したアイスランドでした。日本は20位。3位、4位は均衡財政を憲法に定めたドイツとスイス。では2位は一体どこなのでしょうか。

世界で2番目に財政健全性指標が改善した国とは?

図1 財政健全性指標の改善/悪化度
IMFデータより筆者作図。数値は11−15年の4年間の平均変動率(%)。
プラスが悪化をマイナスが改善を示す。()内は比較可能な36カ国での改善度ランキング。

答えは実は日本なのです。
「え!? 日本は20位って書いてあるんじゃ?」と混乱されたことでしょう。

すみません。ちょっとインチキしてしまいました。
少し日本の条件を変えれば2位になる、ということです。

どういうことかといえば、日本の政府債務から日銀保有分を除けば、財政健全性指標の改善度は借金を踏み倒したアイスランドを含めても世界で2番めに良い、という結果になるのです。
日本の財政は事実上世界最高の改善度といえるのかもしれません。

図2は日本の財政健全性指標の推移をみたものです。グラフには単純に政府債務÷名目GDPで算出した財政健全性指標と、政府債務から日銀保有分を除いて算出した財政健全性指標の推移を示しています。

日本の財政健全性指標は日銀保有の政府債務を考慮すると大きく改善している

図2 日本の財政健全性指標推移
IMF資料と日銀資料より筆者作成

アベノミクスでは日銀がデフレ脱却手段として主に国債などを購入することでベースマネーを供給しました。
残念ながら3年以上にわたって大量のベースマネーを供給してもデフレ脱却は達成できていません。 
ところが、この過程で日本の政府債務残高の3割近くを日銀が買い入れた結果、意図した結果ではないものの、日銀以外の主体が保有する政府債務は2011年をピークに減少に転じています。

日銀が保有する政府債務については、政府は事実上利払費が不要で、元本については無限に乗り換えが可能ですから、財政健全性指標の計算から外しても問題はないと考えられます。*1

これまでのアベノミクスは余りに金融政策に力点を置き過ぎて、デフレを招く緊縮財政とのセットでしたから、当初目的とした2年でのデフレ脱却は不可能でした。
しかし政府債務を日銀が買い上げることで世界最高水準での財政健全化は実現できています。

このように日本は財政健全化指数、政府債務÷名目GDPの分子縮小はすでに道筋ができたのですから、今後は分母の名目GDP拡大による財政健全化を目指して、緊縮財政から拡張財政に転換し、安倍首相が提唱する2020年に名目GDP600兆円達成に注力すべきでしょう。
金融政策と強力な財政政策の組み合わせなら、デフレを脱却しないわけがありません。

「拡張財政に転換すれば、財政健全性指標が悪化するのでは」ですって?
名目GDPが伸びればデフレ日本ではその3-4倍もの比率で税収が伸び、財政健全化に寄与しますし、必要があれば日銀が政府債務を買い入れればいいだけですよ。 これまでの黒田日銀のように。

*1:ただし、日銀がすべての政府債務を買い入れることができるかといえば、銀行業務には国債が良質な担保として不可欠なことなどから、民間に流通する政府債務をゼロにすることはできませんし、する必要もありません。