演劇における著作権の取り扱い

自分用メモ。


http://d.hatena.ne.jp/peat/20060922
http://neverland.exblog.jp/4339073/
考えた発端はこれらで紹介されている件。
問題とされてるのは2つ。

  • 三谷作品を 商業劇団が お金をとって 無断で上演した。
  • 三谷作品を 高校演劇部が 無償のコンクールで 無断で上演した。


三谷幸喜氏のスタンスは、以下のよう。
http://www.parco-city.co.jp/play/play_new/onegai/ 白水社「オケピ!」のあとがきにも同様の記載あり。


で、一般的に他人の脚本を借りて上演を行う場合。
http://www.jpwa.jp/main/docs/KyodoTeigen.html 日本劇作家協会が提唱するスタンス。
これが現場ではどう運用されてるかっつーと、
http://www.nevula.co.jp/kyoka/shinsei.html こうゆうフォーマットにのっとって、著作者の用意した窓口に許可申請をする。劇団や出版社など。
http://shige.tank.jp/modules/tinyd0/index.php?id=4 劇団を持たない・出版されていない戯曲の場合は、個人間で許可申請するようだ。インターネット上で公開されている戯曲ならば、サイト管理者が仲介するものもあり、管理者が適切な申請を行わなかったので上演できなかったりすることもあったらしいけど略。


なぜこのような手続きを行うか。著作者の権利を守ると同時に、演劇では台本を完全に上演するわけではないから。ここが引用や転載とは違う。
台本は一つの著作物であると同時に、演劇上演の材料。
演出意図や役者の感覚、セットの配置、あるいは上映時間の問題でわずかにか大幅にか台本を変更する。一字一句変更しなければ、それが宣伝文句になることすらある。(「シェークスピア戯曲完全再現!」とか「ヴァージニア・ウルフなんか怖くない」とか)
そのため「あなたの著作に、このような変更を加えて上演を行いますが、それをあなたの著作であると認めていただけますか?」という許可が必要になるよう。
パロディやるなら怒られないようにやりましょう。ということだろうか。


ここから高校生の部活動の場合。
http://koenkyo.org/ensou94/chyosaku.html 全国高校演劇連盟の定めるスタンスはこんな感じ。
http://koenkyo.org/kiyaku.html こっちは細かい規約。
高校生の部活動としての演劇発表の場として、全国高校演劇連盟はコンクールを行っている(演劇部の甲子園のようなもの)。で、コンクールの規定として、60分以内の時間制限がある。
対して、市販されている台本は90分や180分のものが多いため、上演するために大きく内容を削らなくちゃいけない。
そのために伴う事務手続きを著作権法や慣習に沿って一般化してるわけ。


ただ以前俺が見たものでは、市販の戯曲を題材に翻案しているものがいくつかあった。
http://b.hatena.ne.jp/sfll/20060923#bookmark-2836007
http://b.hatena.ne.jp/smoking186/20060923#bookmark-2836007
このsmoking186さんと俺の発言は、おそらく違う演劇を指したものだと思う。
smoking186さんの指したのは、ここの第44回(1998年)米子東高校「パレード旅団」じゃないかな。 http://members.ecatv.home.ne.jp/masterpiece/zennkoku.html#44 
俺が指してたのは、第46回(2000年)作新学院「ジャンバラヤ」という作品。説明不足で申し訳ない。 http://members.ecatv.home.ne.jp/masterpiece/zennkoku.html#46
まったくの主観だけど、擬似家族ものというと鴻上尚史な気がしてしまうという。あらすじはこんな。すっかり鴻上作品だと思ってた。今でも「スナフキンの手紙」のスピンオフだと思ってる。http://www.bansei.co.jp/index/mokuroku/m04/Selection2000/Selection2001%89%BA.html


他にも「既存の作品のフォーマットを借りる」や「劇中劇として既存作品を挟み込む」という手法は、高校演劇でも観たし、商業演劇でも行われていることで、演劇には翻案文化とでも呼べるようなものがあるように思う。


で、今回の件について思ったこと。

  • どうしても三谷台本がやりたかったのなら黙ってやればよかったのに。題名も違うんだし。
    • しかし三谷台本を使ってお金をとってるのは手抜きとしか思えない。
    • 台本が同じでも違う演技・演出・表現をする喜びというのはあると思う。
      • それなら、自分達で翻案してしまえよ。高校生でもやってんだぜ。
    • 三谷氏の著作への態度に抗議の意思でもあったのだろうか?
  • 演劇の著作権って特殊だ。
    • パロディでもオマージュでもインスパイアでも自己模倣でも、なんでも演劇になってしまう。
      • メロディが著作権の対象になったことがあったが、アレ演劇ではありえないと思う。
      • むしろ演劇の脚本家・演出家は若手のアイディアを吸収して、自作に発展させることが多い印象が。
      • あんまり記録媒体に残らないからか。
        • 小説などからセリフを引用して、参考文献に掲示すればオッケーという風潮もある気が。
  • そういうところが面白いので、もっと著作権を勉強してうまくパクろうぜ!
    • だからグレーをどんどん黒くしちゃうような安易なパクリはやめて欲しい。