また、上杉隆氏のネット番組で誤情報を流された事案について

上杉隆のネット番組で先々週、また僕について言及していた模様。今回も誤情報が多く含まれているようなのでまとめとく。番組内での僕についての言及は以下の通り。

上杉隆「先週、出演された小沢一郎さんも、被曝についてはっきり言ってましたね。小児甲状腺がんが出て――これ私の言葉じゃないですよ。小沢さんの言葉が、小児甲状腺がんが奇形児も産まれていると。こんなことを放置しているのはおかしいから、きちんとした選挙の時の、いわゆるアジェンダに、つまり政策の中に入れるべきじゃないかと、福島のことをと、そういうこといったら小沢さん叩かれてますね今」
鈴木博喜「そうなんですよ」
上杉「どっかのラジオ局。ま、TBSでしょうけれど。出て叩かれたり」
鈴木「叩かれてましたねぇ」
上杉「なんで、なんで、僕あの聞いてないんですけど、聞いてたんですか」
鈴木「あのー、この間……これ言っていいんですか全部?」
上杉「全然かまいません。これタブーあるのタブーあるのこれ?」
西谷祐紀子「ふふ、全然ありません」
鈴木「荻上チキさんのラジオに生出演されて」
上杉「あれ、なんて?なんて?なんて人ですか?」
鈴木「あれ聞こえなかったですか?お・ぎ・う・え・ち・き・さんです」
上杉「はあ、おぎうえちきさん、おぎうえちきさん…」
鈴木「生出演されてて、今と同じようなことを小沢さんはおっしゃっていたわけです」
上杉「言っちゃったわけ、ですか」
鈴木「それに対して、荻上チキさんは、『小沢さんそれは何を根拠に言ってるんですか。科学的根拠を出してください』と」
上杉「あれ、荻上さんは科学的根拠を持ってるんですか」
鈴木「いやいや、ないという根拠は持ってるんじゃないですか。要は、被曝の問題はないんだ、存在しないんだという根拠はあるんじゃないですかね。提示はしていなかったですけど」
上杉「へえーすごいなぁ。さすがですねぇ」
鈴木「で、TBSの記者も、似たようなことを言っていましたね。もう福島には、中通りには、被曝の問題はもう解決しているんだと、言ってましたね」
上杉「解決したんですね」
鈴木「解決しているらしいです」
上杉「それが日本の言論空間を狭めることって分からないんですかね。要はいろんな意見を言うと。そういう風に意見があってもいいんですよ、もちろん。荻上さん。だけど相手の意見をふさいで、私は正しいと言うことをずっとこの4年間繰り返されているわけですね、TBSから。TBSの出演者多いですけれど。ほんとに。で、そういうようなことが、言論の自由度、多様性を狭めて、そして、これ極端な事を言うようですれど、こういう特定秘密保護法とかに対しての政府への対策、要するに対抗もできなくなっていくんですよ。自分の首を絞めてるんで。で、だんだんとういう風にいって、自由な言論がなくなってると」
鈴木「僕がびっくりしたのは、要は、まあ、お父さんお母さんたちはやっぱり、不安があるから声を上げてくわけですね。その不安に立っちゃいけないって言うんですよ」
上杉「え」
鈴木「不安が前面に立っちゃいけないらしいです。」
上杉「なんで」
鈴木「先に進まないから」
西谷「不安になるなってことですか」
鈴木「そう、不安だけを強調しちゃいけないらしいです。荻上チキさんに言わせると」
上杉「あの、たとえば政府とか行政はこれずっと言ってますけど、そういう風に言うのは僕はいいと思うんですよ。あの、それは。そういう風に言う人もいるから。ただ問題はジャーナリズムが、そのね、政府の側に寄る必要はないわけですよね。不安が存在するんだったらそれを出してあげるし、そうじゃないひとも出してあげると、いうことをやらなくてはいけないのに。ジャーナリズムじゃないと言えばそれまでなんですけど。それを事前に手前からね遮断するのはよくない。不安ありますよね?」
鈴木「びっくりしましたよ。不安だらけだと思いますよ。もちろん、不安なんて抱いていないという人だって当然いますけど」
上杉「もちろんいます」
鈴木「それと同じくらい不安に感じている人もいるわけですから。それに立っちゃいけないってなると、その、お父さんお母さんたちはどうなっちゃうんですかね」
上杉「僕も福島は最近ちょっと行ってませんけど、2012年には一番多く行った年ですけど、不安ってのは行けば聞かれますし、こっちも知ってることは言うと、わからないことはわかんないと伝えると。で『やっぱりそうですね』と。常に不安と向き合ってきたわけですから。
鈴木「そうですね」
上杉「だからこそ移住するか、保養に行くかとか、そうやって日々悩んでるわけですよ。それを、現地にもちゃんと行かずに、一刀に両断するってのはよくないなと」
鈴木「えっ、行ってるんじゃないですか?」
上杉「あ、行ってんですか?」
鈴木「いや、行ってるから言ってるんでしょうね多分」
上杉「ということで、荻上チキさんから、ノーボーダー、オプエドから出演依頼をしています」
西谷「ふふ、はい」
上杉「残念ながらお断りされてますけど、まだ、いくらでも、毎日月曜日から金曜日まで平日午後4時、だいたい」
西谷「4時から5時の間でしたら」
上杉「歓迎しておりますのでいつでもお越しください」
西谷「いつでも、ふふふ」
上杉「ということで、こっちはフェアに。必ず裏では言いませんから。すべてこういう風に名前を出している人には出演依頼をしています。荻上チキさんの他にも、津田大介さんや東浩紀さん、それから江川紹子さん、池上彰さん。名前を出しているひとは全部出しています」


この番組内容を観た人から「被曝がないって何で言えるの?」的なリプが来て発覚。ここで言及されている「どっかのラジオ局」は、TBSラジオの「Session-22」のこと。


http://www.tbsradio.jp/ss954/2014/12/20141209.html


内容は、各党の代表を番組に招き、1時間、質問をぶつけ続けるというもの。ここでは実際には、次のような議論になっていた。

荻上:被曝に関してはこんなメールも来ています。
南部:「テレビで政見放送見たら、小沢さんが福島の今後について、『チェルノブイリでは甲状腺がんや奇形が出ている。福島も甲状腺がんや奇形が問題になる』という趣旨の話をしていました。広島・長崎の被爆者の2世3世にそういう人が多いと言う話は聞いたことがありません。すでに福島では出ていて、隠されていると言うことなのでしょうか。」
小沢:福島では、事実上増えていると聞いています。
荻上:「事実上」。たとえばこの間検査をして、これからどうなるのかというテストの時、いろんな検査をした結果、もともと検査に引っかかったけれども、この影響だというところまでは、いま断定されていないというか、断定というか、そういった影響は否定されているという段階だと思うんですけれども。それの関係性はどうなんですか。
小沢:いや、あのー。いま言いましたように、放射能漏れのやつも、発表しないでいるんですよ。
崎山:大変、情報隠しがあることは、事実ですね。
小沢:こないだもどこかの新聞が一面で、また汚染水が大量に垂れ流しにされていると報じたでしょう。そのように隠しちゃっているんですよ、みんな。
崎山:その隠している場所と、実際に例えば子どもを産むお母さんたちのいる場所は全然離れていると思うんですけれども。実際には。
小沢:離れてるからいいんだっていう話では必ずしもなくて。
荻上:被曝の話は、体内とか、個人に対してどれだけ摂取されたのかというのがポイントになっていて、空間線量とまた別になっていますよね。そうなったときに、小沢さんが、かねがねからおっしゃっている、例えばチェルノブイリとか、被曝の影響がというのは、どういった所から得ている情報なんですか。
小沢:事実、事実、チェルノブイリの事は事実として出ていますよ。
荻上:チェルノブイリはチェルノブイリで。今回の影響について小沢さんはどういった情報から、いつもその、発言してるのかなという。
小沢:ん? 情報って? もう既にすでに出ていますよ。
崎山:たとえば、チェルノブイリでは、僕らも聞いているのは、甲状腺がんは間違い無く増えていると。日本は原時点で、福島で、甲状腺がんの人見つかっていますけれども、これは多分被曝の影響ではないだろうと。ゼロとは言い切れないかもしれないけれど、ほぼ全員ではない。これから出てくる可能性があるかもしれないから、だからちゃんと検査もしないといけないし、調査もしていかないといけないと。ただ、いわゆる「先天異常」の胎児の場合は、まず広島・長崎で、2世3世というのは基本的に変わりないというふうな結果も出ている。つい最近では厚生労働省の研究班でもですね、全員ではないですけれど福島の病院のデータから基本的に福島で普通の他の県よりも、先天異常の子どもが生まれているという現状は少なくともないと言う結果も出ていると、私は思ったんですが。だから、強い警戒の意味を込められと言われているんだったらまだわからなくもないんですが、それが「事実」かということとはまたちょっと。
小沢:厚生省の言っていることが「事実」だという証拠はありますか。
荻上:ん?そのデータがということですか。
小沢:そうそう。
荻上、もし仮にそうした子供がいたりとか、そうした影響があるのであれば、そうしたものがそのまま、統計データなり、その人の医療的なデータなりで証明していかないといけなくて。それはまだ出てきてないわけですよね?
小沢:だから、それは、すぐとかで現れるわけでは無いですから。
荻上:ええ。
小沢:長年月にわたって。
荻上:現状ですね、脱原発の議論をしたときに、被曝の影響を過大視して、「だから脱原発が必要なんだって」いう主張をする方もいるわけですね。でも、もしそうなった場合、仮に健康被害が出なかったら、今回大したことないんだ、みたいな形で、原発の議論が矮小化されてしまう可能性もあるんですね。
小沢:そのことだけ言ってるんじゃないんですよ。ぼくは。
荻上:もちろんもちろんもちろん。ただ、ここは気にする方が多くて。
小沢:最終的に高レベルの廃棄物をどうするんですかって。
荻上:当然。ただ、健康被害の話でも、小沢さんたちの党を入れるか入れないか、その論点で気にされている方も今回多いので、今日はその辺りもちょっと聞いてみたんですけれども。
小沢:ですから、今さっきも言ったように、放射能の今の、あの、福島の垂れ流しについても、じゃあ東電言ってますか、政府も言ってますか、って言ってるんですよ。それを、一部のマスコミがすっぱ抜いて自分で測量して、実は大量の垂れ流しがある、ということでしょ。そうすると、東電や政府の言ってるちゅうことは、全部隠しているということじゃない。
崎山:それは、そうだったと思いますけど。あの件は。
小沢:いやいま、あの件、って言っても、それがずっと続いているわけですよ。
崎山:ですけど、そこから80キロくらい離れた福島市で、事故の直後に、ある種の被曝をした人たちが、どれくらいの影響を受けているかというのは、ほぼいま結論がもう出ていると思うんですよ。3歳や4歳になっているから。
荻上:東電が隠せる話と、例えばホールボディカウンターなどで民間が調査をして、体内の状況などを確認している状況というのは、これはまあ、ひとくくりには出来ない議論ですよね。これからもし問題が出てくれば、ぼくはそれは大問題だと思うので、そうしたことは丁寧にやるべきだと思うんですけれども、やはり、根拠をしっかりと示していかないと、「不安だ不安だ」ってところばかりが強調されてしまうんじゃないかと。
小沢:放射能を封じ込める対策をやんなきゃっな、ちゅういう意味で言っているんですよ。
荻上:それは、大賛成ですね。
小沢:それは、徹底して、何十兆使おうがやらなきゃダメなんですよ。
崎山:ただ、福島の方から見ると、奇形の話とかをされると、「私たちはひどい目に合わなきゃ、世の中、脱原発が進まないのか」と。要するに、私たちのところに奇形が生まれていないという状況があっちゃいけないのかと、いう風に言う方もいらっしゃいます。
小沢:そういう恐れもあるということですから。それで、海外のあるお医者さんが来たんですよ。オーストラリアの。
崎山:カルディコットさんですか。
小沢:女性の。その人なんかものすごい心配してましたよ。
崎山:心配することは大事だと思います。
小沢:じゃあ、何でお前の話を証明するんだ、というけれども、実際にチェルノブイリは実際にそういう後遺症に悩んでいるんですから、それから類推する意外ないでしょ。「という可能性もある」ということだと。
武田:私は今まで何回か話したことありますけど、小沢さん変なところで変なこと知っているといったら悪いですが、ものすごい情報網があって。ただ、90年代のブレーンの人だって、いまだに自分が小沢さんと当時仲良くやってたと言わない人もいますしね。中国の話だってそうです。なんでこの人こんなことを知っているのかな、ということを時々知っていますから、非常に重要なんだけれども、私はそれと、また大きな話ばかり聞いて申し訳ないのですが――。
荻上:最後に一個だけ確認していいですか?つまり、「すでにそういった実例はある」というのが小沢さんの認識、というのは間違いないですか?
小沢:甲状腺がんが増えているというのは聞いています。
荻上:奇形に関しては?
小沢:いえ、それは分かりません。
荻上:それは分からない。あると不安だなと?
小沢:実証してません。
荻上:なるほど、分かりました。
崎山:さきほどのオーストラリアの医師も心配しているのは、心配してくれているわけであって。
小沢:ぼくも心配している。
崎山:現実に起きている事実ということではないですよね。
小沢:チェルノブイリでは起きていますよ。
崎山:でも、福島の事実ではないということですよね。
小沢:そうそうそう。それは、心配してるちゅうことですよ。
荻上:分かりました。意図が分かりました。


以下、ポイントまとめ。


・ここでのやりとりはそもそも、メールでの質問をきっかけに、「将来への危惧として言っているのか。それとも既にある事実として言っているのか」を尋ねたもの。
・質問に対し、小沢氏は特に根拠を明言をせず、厚労省や東電のデータがあやしいとのみ主張した。
・「被曝の問題はないんだ、存在しないんだという根拠はあるんじゃないですかね」→被曝そのものがないと主張しているかのように要約しているが、ここでの議論は甲状腺がんと先天異常が「既に」あるのか否かというものに限定されている。
・「TBSの記者も被曝の問題はもう解決しているんだと言っている」→言っていない。実際に論じているのは、先天異常のケースは出ていないということ。最終的には、小沢氏もそれを認めている。
・「不安が前面に立っちゃいけないらしいです」→言っていない。心配するのは大事だとしたうえで、小沢氏がどういう情報を元に主張したのかと尋ねている。また、一般の人が不安に思うのと、候補者が政見放送でアピールするのとでは話が別であるはずなのに、それがなぜか混同されている。
・「不安の声を事前に遮断するのはよくない」→野党の党首である小沢氏を招いたうえで、その主張内容についてオープンに尋ねているにも関わらず、なぜ「不安の声を事前に遮断」になるのかがわからない。
・「それが日本の言論空間を狭めることって分からないんですかね」→立候補した政党の代表が政見放送で訴えた内容について、ソースを尋ねることは当然のことであり、まして「言論空間を狭める」ことにはならない。もし仮に上杉氏が、好き放題に流言を広める自由とかまで「言論空間」に入れているのであれば、僕の考える「言論空間」はそれより狭くはなるだろう。
・「フェアに出演依頼を出している」→誤った情報を拡散したうえで、そのことを謝罪することもないままに、「反論する機会をやるから番組に出ろ」というマッチポンプを繰り返すことを、通常は「フェア」と呼ばない。
・ちなみに、依頼はすでにスタッフが断ってくれている。



以上なり。


【関連】
朝生の一件で、上杉隆氏にデマを流された事案まとめ
http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20141202/p1

「裏をとっている」とは何か
http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20120323/p1