無断リンク禁止論を感情論としないために

感情論、感情論ってうるさいなあと思っていたのですけど、

無断でリンクするのは嫌がらせだとか、リンクさせない方が嫌がらせだとか、そういう感情論では埒が明かないということにいい加減気付かなきゃ駄目だよ。昔あった、リンクしたら一声掛けるのがマナーだろうとか、そんなマナーを押し付けるなとか、そういうような話も同じ。価値観の相違があり、それが解消できない以上、こういう感情論やマナー論では議論は永遠に決着しない。

また無断リンクの話かよ: まじかんと雑記

を読んで、「嫌がらせ」の部分が問題なのかも知れないと思い始めたので、ちょっとこの「嫌がらせ」について書いておきたいと思います。

まず、「嫌がらせ」をするのは悪いことか?ということについて、当サイトでは悪いことであるとは扱いません。というのも、「嫌がらせ」が悪い行為であるという前提を置いてしまうと、途端に「嫌がらせ」という行為そのものの存在が怪しくなってしまうからです。すべての人が納得せざるを得ないような根拠をもって悪い行為であるといえる行為というのは、世の中にそれほど多く存在するものではないでしょう。というか、そのようなものは実際に存在するのでしょうか。つまり、悪い行為であるという語義のもとで、ある人がある行為のことを「嫌がらせ」であると確信していたとしても、それはすべての人が納得せざるを得ないような根拠をもつことなく単に思い込んでいるに過ぎないわけです。このような語義のもとで「嫌がらせ」という言葉を使っていては、議論がまとまらなくなるのも当然ではないでしょうか。

なので、当ブログでは「嫌がらせ」という言葉を、字面そのものが表している「相手が嫌がることをする行為」という意味で用います。

で、これまでのエントリーではかなりいい加減に書き散らしてしまった感があるので、ちょっとまとめてみたいと思います。

  • 無断リンクをするサイトは(検索サイトのようにどのサイトにリンクをするかを明らかにしているサイトを除いて)、無断リンクをした相手サイトに対して、そのサイトを特に差別的に扱って嫌がらせをしているわけではないことを説明していない
  • 無断リンク禁止宣言サイトは、無断リンク禁止の対象となるサイトに対して、そのサイトを特に差別的に扱って嫌がらせをしているわけではないことを説明している
  • 無断リンク禁止宣言はウェブが許容しているのだから、無断リンクをしたい人に無断リンク禁止宣言という存在をもって嫌がらせをしているのはその存在を許容しているウェブ(なので、その宣言をする理由の説明を宣言した人に求めるのは筋違い)

2番目と3番目が非対称的であるところがポイントです。4番目については納得しにくいという意見もあるみたいですけど、

  • 無断リンク行為はウェブが許容しているのだから、無断リンクをされたくない人に無断リンク行為という存在をもって嫌がらせをしているのはその存在を許容しているウェブ(なので、その行為をする理由の説明を行為をする人に求めるのは筋違い)

とペアだと考えれば、それほど変なこと言っているわけではないと思うのですが。

感情論って何なのかよく解りませんけど、とにかく議論においては、ものごとの善悪の基準みたいなものは持ち込まないことが大切で、たとえ各自の頭の中には善悪の基準があったとしても、それを表に出した時点で議論から降りたことを意味することになるのかもしれません。

ブックマークコメントに対するレス

今までのを要約すると、無断リンクを不快に感じる人は、その理由を説明しなくてもよいっていうだけの話だったような気がするが……。 / 何が言いたいのか、簡潔にまとめてほしいなあ……。

はてなブックマーク - kana-kana_ceoのブックマーク / 2007年9月1日

「理由を説明しなくてもよい」という4番目のものは、前回のエントリーのみの要約。言いたいのは、2番目と3番目の非対称性。4番目はその議論において派生したもので、5番目(新規導入)と対称的な関係にあることもポイント。

「ウェブが許容」って何だ?ウェブって誰?

http://b.hatena.ne.jp/mimipann/20070902#bookmark-5747674

ウェブ利用者に無断リンクが可能な環境を提供している実体のことです。

嫌がらせかそうでないかを感情以外で判断するの?/これもメタ視点なつっこみですね。

はてなブックマーク - sshiのブックマーク / 2007年9月2日

各個人がもっている善悪判断の基準以外で判断するという感じです。「したい」「されたくない」「したくない」「されたい」これらの気持ちを何に対してどのタイミングでもったとしても、そのことに関する善悪は議論の対象にしないし、なぜそのような気持ちをもったのかについても議論の対象にしないで、「相手がされたくない(嫌がる)ことをする」という行為そのものを「嫌がらせ」という言葉で表しています。こうでもしないと善悪の判断基準が違う人同士で議論はできないのではないでしょうか。

サイトを紹介してくださる意図がよく解らないです そのサイトを10000回読んで出直せって意味だと思います。

はてなブックマーク - rusicaのブックマーク / 2007年9月2日

そんなことは解っているのだけれど、例えば最初のサイトは、ウェブが作られた当時の目的を(現在の利用者のすべてがなぜその目的でウェブを利用しなければならないのかという根拠を示すことなく)ウェブの利用者がその目的に従うのが当然でもあるかのように前提として置いて話が展開されているわけで、根拠の示されていない前提に基づいた話のいったいどこを読んで出直せと言っているのかがよく解らんのです。

立ち位置の定まらない言説

はてなブックマーク - HDPEのブックマーク / 2007年9月2日

もしも根拠に欠ける前提を置いている部分があったら指摘してください。

「無断リンクは現状の法律及び慣習で許可されている」以外に論の広がりようがないと思うが。

http://b.hatena.ne.jp/tokoroten999/20070903#bookmark-5747674

それなら「無断リンク」を「無断リンク禁止宣言」に置き換えた対称的な論も成立するのだけれど、対称的になっていないものとして「無断リンク行為は相手を特に差別的に扱って嫌がらせをしているわけではないことを説明していない」という論が成立するのではないかというのが本エントリーの主張の一つです。