格ゲー全盛時代の出会いと再会 『ハイスコアガール』 2巻

着実に気持ちが近付きつつありながらも、
突然訪れた大野さんの海外転校によって別れることとなったハルオ。
それから2年後、格ゲー全盛期を迎えていた1993年〜1994年に
止まっていた時は動き出す・・・
作者自身の少年時代のゲームに関する思い出を綴ったピコピコ少年から、
ラブコメ要素を付与して一大話題作へと昇華した本作。
1巻のときは書店で完売が相次いだりしたこともあり、
誰もが懐かしいと思いながらも押切作品の新境地として評判を呼び、
2巻の登場が待ち望まれていましたが待望の最新刊がいよいよ登場です。
スト2が登場してアーケードゲーム界に革命をもたらした91年が前回の舞台だったけれども、
今回は当時小学6年だった身が中学2年〜3年と最も多感な時期となり、
しかもそんな時代のゲーセン事情が格ゲーとNEO-GEOが大盛り上がりと、
同じ時系列を同じ視点で生きてきた身からすると、
本当にいい時代だったんだなと感じますね。
1巻発売時は公式HPで公開されているイベントにも行って来ましたし。
(と言うか、会場内の映像で自分の後ろ頭が映ってます)
当時のゲーセン事情を懐かしみながらも、
本作もう一本の柱であるラブコメ要素は前回よりもパワーアップを果たし、
どちらのジャンルから見ても非常に魅力的な内容となっております。

新キャラの登場と数年の時を経た再会。
止まっていた時が再び動き出して皆の関係はどうなってゆくのか。
ゲームのように必勝の攻略法が存在しない
一発勝負の恋愛事情からはこれからも目が離せません。

何を語るにも格ゲー抜きではあり得ない。
今でこそ下火となっている格ゲー事情ではありますが、
本当に当時は凄まじかったですからね。
あっちを向いてもこっちを向いても格ゲーばっかりって状態で。
ジャンルもさることながら各地の書店や駄菓子屋等でMVS筐体が設置され、
NEO-GEOが爆発的普及を果たしたのもちょうどこの頃。
100メガショックでサムスピに餓狼SPと対戦も盛り上がって
インカム率が圧倒的でしたね。
サムスピが実は餓狼SPまでの繋ぎだったなんて話も今となっては懐かしい。
格ゲーヒロインを語る上で欠かせない春麗と並ぶ
伝説級キャラのナコルルを輩出したことも大きかったし。
今回はゲーム史としては93年後半〜94年前半にかけてだけど、
これが夏になるとヴァンパイアや今なおシリーズが続くKOF'94、
年末には3Dポリゴン作品の大躍進に貢献するバーチャ2が続いてリリースされますし、
すごい激動の時代だったんだなと思えますね。
アーケードゲーム中心だから描かれていないけれども、
SFCならFF6が出たりした時期ですね。
本当に当時は家でも外でもゲーム三昧でしたよ。
90年代ゲーム事情はそれだけで一晩は軽く語り明かせるほどだけど、
それでもこの頃は最も濃くて、そして熱かった。
プレイ予約の置きコインに後ろで順番待ちしてるギャラリーのさっさと死ねオーラ。

当時はインストカードに書かれていない超必殺技を出せば驚愕し、
プレイしている人の手元を見てコマンド入力方法を必死で盗んだあの頃。
今じゃ考えられませんけど、それだけ殺伐とするほど人気だったものです。
そんな中で作中であえてモータルコンバットや、
禁断のスト2レインボーをネタに出すあたりがさすがです。


あの冬の日、知らない世界を見せてくれた彼に魅かれた。
大野さんが海外に行っているということもあってヒロイン不在の中、
まさかの第二のヒロイン登場でラブコメ度合いが一気にアップですよ。
しかもその相手が色んな意味で大野さんと正反対のタイプときたもんだ。
自分の趣味を見出せず、ただ勉強のみに明け暮れていたクラスメイトの日高さん。
ゲーセン=不良の溜まり場って80年代前半以前のイメージしかなくて、
当然のことながらコントローラーを触ったことも無い超初心者。
そんなゲームとは全く縁が無かった彼女が、
自分が知らない世界を見せてくれるハルオに段々と魅かれていって・・・

と、普通にラブコメしててたまらん。
一度はハルオのことを嫌いだと認識しながらもやっぱり嫌いになりきれなくて、
バレンタインにチョコを渡すなんてイベントまで果たしてくれるときたもんだ。

本人は「義理」って言ってるけど、そう自分に言い聞かせてるだけなんだろうなー。
食い気だけだった大野さんと違って普通に女子力があるところもたまらん。
しかし少しずつゲームの知識を身に付けていって、
やってみたいゲームというか好きなジャンルがホラー揃いってあたりは、
腐ってもラブコメっても押切作品であることを感じさせてくれますね。


新たな出会いとの裏時を経た再会。
日高さんがヒロインっぷりを発揮しながらも、
ハルオ自身はゲーム仲間程度の認識しか持ってないほどの
ゲームバカっぷりを全力で発揮しまくり。
やっぱり大野さんに対する気持ちによるところがあったのかな。
再会と再戦に囚われていて異性を異性と意識できなくなってるのはある意味哀れ。
再戦の約束は再会できるかもわからない事情からすればある種の呪いですらありますよ。
そしてあの日から3年近く、ついに大野さんが帰国・再会を果たして・・・

ぅゎーやべぇわ、完全に三角関係成立じゃないか。
ゲーム史的にもラブコメ的にも次回はヤバそうだわ。
再会したのが全ての始まりとなったゲーセンってのもたまらない。
帰って来た大野さんは変わったようで変わってなくて安心したと言うか何と言うか。
あのファイナルファイト二人プレイは当時の二人の関係そのままでしたからね。
さすがに中学生になって成長したからか直接手は出さない分、
ゲームの中で思いっきり殴りまくってますし。
元々喋らないキャラだったから何を考えてるかはわからないにせよ、
昔の思い出と約束は覚えているようだし、
それがどう影響してゆくのかが焦点になりそうですね。
超絶ゲーマーっぷりも相変わらずで安心したわ。
スパ2X稼動間もない時期に豪鬼を使ってみたりザンギで100連勝突破したり。

もう大野さんとまともに相手になりそうなのってウメハラレベルじゃないと無理だろ・・・