ゼロから始める巫女修行 『かみさま日和』 1巻

かみさま日和 1 (芳文社コミックス)

かみさま日和 1 (芳文社コミックス)

やっとの思いで再就職できた会社が入社初日に潰れた不運な女・史美華(24歳独身)。
住む所もなく、全財産の入った財布も失くし、あわや食い逃げ寸前。
開幕から最大の危機を迎え、代金の肩代わりをしてくれた男に連れて行かれた先は神社だった・・・

ええ、表紙を見ての通り、見紛うことなき巫女ものです。
巫女ものなんですが、これまで世に出てきた数多くのそれとは一味違う。
ただの萌え属性としてのコスプレだったり、
変な設定はないにしてもただゆるゆるとした日常ライフが描かれていたり、
人外の特殊能力を有していて化物を戦ったりなんて、
ファンタジー設定入っていたりするものが多いのが
二次元で見る多くの巫女像だったりするのですが、
本作はそんな要素を一切廃した本当に職業としてのそれが描かれています。
こういうリアルな巫女ものは今までありそうでなかった代物ですね。
あくまで『巫女』と言う職業を描いたものである他にも、
従事する面子の年齢が平均20歳過ぎってところもまたリアル。
仕事の後に私服で酒を飲むシーンがあったりするくらいリアル。
知ってそうで意外と知らなかった本当の巫女像を知ることができて、
知識的な意味でも何だか得した気分です。

基本年中無休な神職ってものは想像以上にハードです。
史美華が巫女をやるようになった開幕から何気にぶっちゃけた説明もされてますしね。
神事以外は基本『雑用』であるとか、前任が三日で逃げたとか。

王道の境内や階段の掃除から始まって大量に出たゴミ捨てに、
授与所での販売もあるし、変な参拝客の相手まで。
参拝する側からしたら考えたこともなかったけれど、
年末年始に外に出る余裕すらないから買いだめして
食事と睡眠は交代制なんて話が出たときは思わずぞっとしたわ。

大変なのはどの職業でも同じではあるけれども、
見た目に反してすごい肉体労働ですよこれは。
あらゆる点からしても身体が資本すぎる。
実際、ガテン系だの肉体労働だの普通に台詞として出てくるくらいですから。
神田明神とかでは一日体験とか時期限定でやってるみたいだけど、
これを見た後でやってみたいかと問われると・・・ぅーむ。


一年365日、どんな参拝客でもお相手します。
普段はあまり行く機会もない神社も、中で働く者にとっては話は別。
いつ何時誰が来るかもわからないし、相手もしなきゃならない。
手水舎の水をペットボトルに入れる外国人もいれば、
七五三であれこれちょっかいをかけてきたり騒ぐ子供軍団もいる。
年末年始の初詣なんて言わずもがな。
肉体労働であると同時にサービス業でもあるとはまたすごい職業です。

単純に神社の中だけで仕事しているわけでもなく、
時には外に出張することだってあります。
新しく家を建築するときにやる地鎮祭とかが身近なところだけど、
これもあくまで一部でしかないとは、一体どれだけ幅広いんですか神職ってのは。
しかも出張先がライブハウスでついでにデスメタルバンドの成功祈願って・・・

客を選べる仕事じゃないにしても、えらくシュールな光景ですな。
でも七五三の回に出てきたしっかり者のロリっ娘は可愛かった。

こういう笑顔があってこそ、信仰ってものが集まるわけですね。


ただ仕事をしているだけではない、人間模様も気になるところ。
作者の森尾氏と言うとビーチスターズとかの熱血的な印象が強いだけに、
巫女ものってどうなるんだろうって思っていたのだけれども、
色んな人と出会い、悩みを聞いて元気付ける説得ぶりは安心の胸が熱くなる感覚でした。

巫女補正もあって元気100倍だわ。
そして仲間と言う名の絆で結ばれた信頼関係。
いいよねーこういう何気ない日常を繰り返しているうちに、
いつの間にやら欠かせない存在になってたってノリは。
よりにもよって神主の矢部がすごいツンデレだったりするからもう。
一度は実家に帰ってしまいながらも、真意を知って戻るくだりが熱すぎる。

もうこうなったらこの二人は最後は結婚するしかないですよね?