Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

「この先自動車通り抜けできません。」を通り抜けていなかった「Googleストカー」(高木浩光さんの検証ですが……)

◇ 「この先自動車通り抜けできません」を通り抜けていたGoogleストカー - 高木浩光@自宅の日記
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20080815.html#p01


高木浩光さんのGoogleストリートビューについての検証記事が注目を集めています。


基本的に高木浩光さんの指摘は正しいし一理あると思っていたのですが、*1
しかし、この件については早とちりだったのではないでしょうか。


私の結論から先に言うと、おそらく「図1: 路地の入口に標識のようなものが見える」の場所は、
「Googleストカー」*2にとって「路地の入口」ではなく「路地の出口」です。


「図3: Googleストカーが通り抜けている様子」を「大きな地図で見る」とわかることですが、
Googleストリートビューに写り込んでいる「Googleストカー」の画像の
ドアミラー、ヘッドライト、フロントワイパー、リアワイパー、エンブレムなどの位置をチェックすると、
「Googleストカー」がこの路地を北から南に通過しながら撮影している(であろう)ことが確認できます。


これは、高木浩光さんが想定されている状況とは異なります。
つまり、「Googleストカー」はこの路地を「南から北」ではなく、
逆に「北から南」に走行したと考えるのが正しいのではないか? ということです。




↑念のため画像をキャプチャーしてみました。
上段左上はプリウスの画像。右上は「Googleストカー」に搭載されているカメラ「Ladybug2」の画像。
中段左はGoogleストリートビューに写っていた「Googleストカー」のフロント部分の画像。
中段右はGoogleストリートビューに写っていた「Googleストカー」のリア部分の画像。
下段は、Googleストリートビューに写っていた「Googleストカー」の画像とプリウスとの比較です。


もし、「Googleストカー」がこの路地を2回以上撮影したのだとしたら、
あるいは「Googleストカー」がバックでこの路地に入って撮影したのだとしたら、
高木浩光さんのおっしゃるように、
「この先自動車通り抜けできません。」と書かれた
「標識のようなもの」=看板を無視して突っ切り、
この路地を南から北へ向かった可能性もあります。




大きな地図で見る


しかし、そのどちらも考えづらいのではないでしょうか。


まず、2回以上撮影についてですが、
この近辺のGoogleストリートビューに使用されている画像の積雪の具合と当日の日差しの強さからすると、
別の日に撮り直した可能性はかなり低そうです。
そもそも、この路地の規模を考えると
よほど特別な理由がないかぎり、
再撮影というコストが支払われるとは思えません。
想定されるニーズに対する映像の必要精度と労力の問題です。


バックで侵入した可能性についても同様です。
「住民の方も「よく通れましたね」とおっしゃ」るような狭い路地に、
わざわざバックギアで入り込んでいくとは思えません。
実際に「Googleストカー」に搭乗している現場スタッフの心理からすれば、
サッと撮って、サッと立ち去りたいというのが本心でしょうから、
何らかの特別なシチュエーションに陥ってしまった場合を除いて、
その可能性もかなり低いと考えてよいでしょう。


だとすれば、「Googleストカー」は「この先自動車通り抜けできません。」を通り抜けていなかったことになります。
なぜなら、この路地のもう一方の入口(出口?)には、「この先自動車通り抜けできません。」の看板が、
(少なくともこの地域のGoogleストリートビューが撮影された当時には)設置されていないからです。*3


それは、ちょっと注意深く確認してみればわかることです。



大きな地図で見る


ゆえに、繰り返しになりますが、
「図1: 路地の入口に標識のようなものが見える」の場所は、
「Googleストカー」にとって「路地の入口」ではなく「路地の出口」であり、
「Googleストカー」は「この先自動車通り抜けできません。」を通り抜けていなかったことになります。


以上です。


あと、おまけですが。
↓こちらもどうぞ。


※再録(http://d.hatena.ne.jp/n-291/20080813#p4)

■ビンラディンTシャツの早さを思い起こしました。
◇ google car - アイラブメーカー
http://ilovemaker.com/?key=1217995904_B2nSQ


■「google car」捕捉
â—‡ YouTube - 'Google Streets' car
http://jp.youtube.com/watch?v=hLyljvi6z2U
もっとゆっくり走って撮影しているのかと思ったんですが、
けっこうスピード出してます。


â—‡ YouTube - A Google Street View Car
http://jp.youtube.com/watch?v=_ZwC5_qaVds
アメリカ合衆国カリフォルニア州パームスプリングスにて。
日本で走っているグーグルの車は、
すでにこのタイプの小さなカメラになっているようです。


â—‡ YouTube - Google Street View
http://jp.youtube.com/watch?v=fXA0SC8xy7Q
追跡。イタリアはミラノにて。カメラは初期型か?


â—‡ YouTube - Google Street View Car in Seville
http://jp.youtube.com/watch?v=jKzr3_dR5jk
俯瞰映像。スペインのセビリアにて。


â—‡ YouTube - Google Street View Car in Annemasse France (74)
http://jp.youtube.com/watch?v=O_8KhvtZB9g
ひたすら左折。フランスはアヌマスにて。


â—‡ YouTube - Google street view van chased by a NYC bus on first avenue
http://jp.youtube.com/watch?v=W7YRtIKuKyE
バスとのチェイス。ニューヨークにて。


■マイクロソフト社も「ストリートビュー」への参入を狙ってるんでしょうか?
â—‡ YouTube - STREET VIEW MAPPING / MICROSOFT
http://jp.youtube.com/watch?v=oSJu1H_WpWw
最初、車の屋根にあの「先行者」を搭載しているのかと空目してしまいました。
現行の google car に比べると大げさな装備にも見えますが、
ルーフキャリア付きの車に載せれば
ひょっとするとかえって目立たないかもしれません。


■“プライバシーをめぐる米Googleへの風当たりは強い。Googleは二枚舌だという政治家や評論家もいる。”
◇ Google幹部の自宅をプライバシー保護団体がさらしものに - ITmedia News
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0808/04/news026.html
ぼかし導入の引き金にもなった事件だという話もあるようです。

*1:ブックマークでの松永英明氏に対する逆さ「ドンバの西寺ーリーロ」タグ、
  つまり「SCANCH←」(http://b.hatena.ne.jp/entry/http://b.hatena.ne.jp/matsunaga/20080813%23bookmark-9631486)や、
  高木浩光さん自身のGoogleストリートビューというグーグル社のサービスに対する評価が明確にされていない点は若干ひっかかりますが。
  ◇ 「Google Street View について」について - はてなるせだいあり
  http://d.hatena.ne.jp/nurse/20080816#1218880900

*2:一般的には「Google Street View Car」または「Google Car」? 亀井肇さんが新語として「Googleストカー」を紹介する日が来たりして。。。

*3:今現在も設置されていない確率のほうが高いです。この路地のもう一方の入口(出口?)には、自動車のある住居が確認できます。
  もちろん、視認できないような物陰に看板が設置されているというケースも考えられますが、
  その場合は「Googleストカー」側に落ち度があったとは言いにくいのではないでしょうか。

北京オリンピック開会式のビジュアル・ディレクターを務めていたツァイ・グオチャン氏の話題(CG問題)

◇ 北京五輪開会式:蔡國強の花火のCG問題を推論する――真偽を越えて - I Get Around The Media 楠見清のメディア回游

日本でのネット上での反応としては「北京オリンピック開会式の花火による『巨人の足跡』は本当にCGだったのかどうかを検証してみた」といった検証記事も上げられており、世の中の関心はだまされた感よりも、へえ、あれがCGだったなんて!ウソー!ホントー?という驚嘆に帰着しつつあるようだ。

ただ、ちょっと考えてみれば、そもそも「実はCGでした」という事後報道が中国側から配信されたものだとしたら、それはむしろ中国のCG技術を世界中にプロモーションするという最終目的として企図されていたものだったのではないか、と裏読みしたくなる。

         *

ここからは僕の私見を交えた上でのさらなる裏読みだが、今回のオリンピックの開会式はもともとスティーヴン・スピルバーグがアーティスティック・アドバイザー(芸術顧問)を務めるはずだったのが、2007年4月中国政府のダルフール紛争への対応の不備を非難してスピルバーグがボイコット辞退したことで、その後任を急きょ張芸謀(チャン・イーモウ)が務めることとなったものだ。――と、ここまでは日本のマスメディアでも報道されているが、問題の花火が現代美術家の蔡國強(ツァイ・グオチャン)によるものだということまでは僕の見たところ報道されていない。これは日本の記者の勉強不足と言うよりは、おそらくは北京五輪機構がプレスに流す情報において重きを置かれていないのではないかと想像される(開会式の生中継のアナウンサー用のシナリオはあらかじめ各国のTV局に提供されているはずなのに花火の作者の名がアナウンスされなかったのは、おそらくそこに蔡國強の名前は入っていなかったのだろう)。

http://d.hatena.ne.jp/donburaco/20080813/p1


◇ 北京オリンピック開会式の基礎技術をチラッとのぞいてみました - Gizmodo Japan(ギズモード・ジャパン), ガジェット情報満載ブログ

・花火は北京30か所で同時に打ち上げられるように、デジタル点火制御システムが使用されました。Cai Guoqiangによると、花火界のマエストロが手がけたので、4万本すべて完璧に打ち上げられたそうです。

http://www.gizmodo.jp/2008/08/post_4157.html


â—‡ An Explosive Opening -- Beijing Review
http://www.bjreview.com.cn/quotes/txt/2008-08/11/content_140334.htm
本人のコメントが掲載されていますが、
CG問題についてはまったく言及されていません。


â—‡ Olympics Opening Ceremony Fireworks 'Faked' on TV | Gadget Lab from Wired.com
http://blog.wired.com/gadgets/2008/08/olympics-openin.html
Telegraph紙の報道「Beijing Olympic 2008 opening ceremony giant firework footprints 'faked'」に対するブロガーのレスポンス。


â—‡ Footprints of History: Fireworks Project for the Opening Ceremony of the 2008 Beijing Olympic Games - Cai Guo-Qiang
http://www.caiguoqiang.com/project_detail.php?id=234&iid=0
http://www.caiguoqiang.com/
ウェブサイトには、さっそく作品画像が掲載されています。

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◇ オリンピックは全部CGにしろ - たけくまメモ

しかし、俺もあの開会式を見ていて、まさかあの足跡型の花火がCGだとは夢にも思わず、後でCG合成だったと聞かされて久しぶりに「CGスゲー」と単純に思ってしまいました。もうCGもここまで発達すると、不可能な映像なんてないですね。どうせなら試合も全部CGにしたらどうかと思いました。

俺が希望するのは、石原慎太郎さん率いる東京がまた性懲りもなくオリンピック候補地に名乗りを上げているではないですか。そこで今から押井守監督をオリンピックの総合芸術監督に据えて、万が一東京に決まったら、メインスタジアムを東京湾に浮かぶ超巨大な多層建造物にしたらどうかと思うわけです(通称“方舟”)。

開会式はもうド派手ですよ。ナレーションが竹中直人、川井憲次作曲のファンファーレに会わせてヘッドギアを付けた数百人の聖火ランナーが天使の翼の形をしたパラシュートで雲を突き抜けて舞い降りると、そこに数百機のレシプロ機がわらわらと飛来して機関銃(祝砲)をガシガシ撃ちまくる。一方、方舟の船底ではおっさんが大塚明夫の声で犬にエサをやっている。もちろん、全部CGです。

それで開催地の選考に落ちたら落ちたで、オールCGで虚構の東京オリンピックを製作して開催したことにすればいいんですよ。あの押井監督なら、よろこんで引き受ける気がするんですが、ダメですかねえ。

http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_c5e6.html
竹熊健太郎さんのレスポンス。


◇ デジタルゲッベルス - オンライン日記

 北京五輪中継はマスメディアの時代の最後の華のように見えてくる。新聞が号外を濫発するのも自分たちの存在価値を示そうという焦りからではないのか。次々に中国政府関与による開会式「偽装」演出が発覚しているのもゲッベルス以来の国威形容のためのプロパガンダ的五輪利用法の最終章、完成形態という趣のようだ。マスメディアも国民国家と一蓮托生を超えて、せめてそれについて語れるといいのだけれど。

http://162.teacup.com/sinopy/bbs/895
武田徹さんのレスポンス。

関岡英之『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』(文春新書)

http://www.amazon.co.jp/dp/4166603760
http://www.bk1.jp/product/02433521


◇ YouTube - 関岡英之「拒否できない日本」
http://jp.youtube.com/watch?v=TXDexkay2do
http://jp.youtube.com/watch?v=7XQ7XljKqVs
マル激トーク・オン・ディマンド 第257回(2006年03月03日 http://www.videonews.com/on-demand/251260/000382.php)
ゲスト:関岡英之(ノンフィクション作家)・出演:神保哲夫(ビデオジャーナリスト)宮台真司(社会学者)より。


◇ YouTube - 関岡英之「拒否できない日本」書くに当たって
http://jp.youtube.com/watch?v=ujaHFeFRXyY
同上。


◇ 「アメリカの日本改造プログラム」関岡英之(せきおかひでゆき ノンフィクション作家) - 文藝春秋|本の話より|自著を語る
http://www.bunshun.co.jp/jicho/nihonkaizou/nihonkaizou.htm