雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

突っ込みどころ満載の自民 青少年特別委案

民主党に続き自民党青少年特別委で検討されていた有害コンテンツ規制の原案が明らかになった。記事中にもあるように自民党でも規制自体に慎重論があり、これから党で横断的かつ冷静な議論が尽くされると聞いているので危機感は強くないが、せっかく叩き台が出てきたのだから問題点を整理したい。

ただ、有害性の線引きを国に委ねることや規制自体に慎重論もあり、引き続き議論して今国会への法案提出を目指す。

少しPC的な問題を承知して書くが、父親と母親で子供に対する考え方に大きな違いがあるのかなぁ、という気もする。子供を包み込んでしまいたい母親と、ちっとは世間の風に触れてみろ、という父親みたいな。わたしの周りでも、子供の携帯にフィルタリングをかけるかについて夫婦喧嘩が結構あるようである。息子さんに対して母親は「断固かけるべし」で父親は「中学生にもなれば、そういうのみるだろ」みたいな。これが娘に対してだと、どうなるのだろうか。うちは息子ばかりなので想像がつかないが、例えば『情報自由論』の東浩紀が何歳で娘に携帯を買い与えるのか、そのときフィルタリングをかけるのか、というのは非常に気になるところ。

法案は「有害情報」について(1)性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼす(2)残虐性を著しく助長する(3)犯罪を著しく誘発する(4)薬物乱用など健康を害す行為を著しく誘発する(5)特定の青少年へのいじめに関する情報で著しく心理的外傷を与える恐れがある(6)家出した青少年に非行などを著しく誘発する、と定義した。
これをもとに、具体的な基準を作成するため内閣府に「青少年健全育成推進委員会」を新設し、ネット上の情報を「選別」する。

あまりに主観的で絶句。彼らは国が性に関する価値観について関与すべきと考えているのか。残虐性を著しく助長するって、とりあえず戦隊モノでも規制しますか。犯罪を著しく誘発する、推理モノも駄目ってことですかね。いじめってコミュニケーションのコンテクストであって、子供にメールや掲示板を使わせない方がいいのか。これって逆で子供がメールや掲示板で問題を起こしたら、それを仲裁する時こそ情報リテラシー教育のチャンスだろう。目障りなものに有害とレッテルを貼って規制するのが正しいなら、公園は少年へのいじめを誘発するので規制すべし、という話になりかねない。家出サイトも規制したって需要がある以上は規制しても闇に潜るだけなので逆効果ではないか。

これをもとに、具体的な基準を作成するため内閣府に「青少年健全育成推進委員会」を新設し、ネット上の情報を「選別」する。

「青少年健全育成推進委員会」なる検閲団体に、規制と権力が大好きなヒステリックなおばちゃん達が集まって「高校生には女性の水着姿もみせるべきではない」なんて噴飯モノの議論を始められた日には目も当てられない。

その上で、基準に該当するとみなした情報が書き込まれたサイトの管理者には、閲覧を18歳以上の会員制にするよう義務付ける。インターネットの接続プロバイダーにも、サイト管理者に会員制化を促すよう求める。インターネットカフェには、18歳未満の客にフィルタリングソフト付き端末を利用させるよう義務付ける。

18歳未満がみるべきではないコンテンツを政府が決めるべきだという発想から、こういう議論が出てくるのだろうが、そもそもフィルタリングの主体は政府ではなく保護者であるべきで、かなり乱暴な議論ではないか。それに未成年に有害コンテンツをみせない仕掛けとして会員制化はひとつの手段に過ぎず、全てのサイトを会員制化すべきというのは行き過ぎである。例えばYahoo!のディレクトリにアダルトがあったり、Wikipediaの項目にもエッチなものがあって、これら全てログインしなければ閲覧できないというのでは、プライバシー保護の観点でも問題がある。
サイト側で18歳未満にみせたくないコンテンツに対してはセルフラベルを付与するとか、子供からのアクセスをサイト側に通知できる仕掛けなど、会員制以外にも未成年の有害コンテンツ接触を避けるゾーニング技術は考えられるのであって、法案はあくまで要求を定義すべきで、手段を制限すべきではない。

さらに、総務相は、違反したプロバイダーや携帯電話会社に是正命令を出せると規定。従わない場合は「6月以下の懲役か100万円以下の罰金」とした。ただしサイト管理者は、「個人で運営し、サイトに書き込まれた情報をすべて把握できないケースがある」として罰則の対象から外した。

プロバイダーの定義が明確でないが、サイト管理者が一般的にプロバイダーにホストしているのだとすると有害コンテンツは一通り削除できるということになるのだろう。違法コンテンツなら現行のプロバイダ責任制限法である程度の対応ができるし、もう少し強めの削除義務があってもいいだろう。
一方で有害コンテンツについては判断の幅が広すぎ、是正命令が出るとプロバイダーがサイト運営者の梯子を外すことが予想され、見解の相違がある場合に審理する仕組みや、サイト運営者の権利を保全する仕組みをつくらないと日本国内での事業継続リスクが著しく高くなる懸念がある。こんな面倒なことに巻き込まれるよりは、最初からサーバーを海外に置く事業者が増えるんだろうけど。