出版ロングテール続きと「子供の本離れは返本制度のせい」という話

私の本ばかり宣伝しているが、実は梅田さんの新しい本が出る。私の本と、中島さんの本は、すでにアマゾンで「いっしょに買う」でしっかりペアになっているが、是非こちらも一緒にどーぞ。

新著「ウェブ時代 5つの定理」2月27日刊行 - My Life Between Silicon Valley and Japan

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

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もちろん、しつこく、自分の本と中島さんの本も・・・
パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)
おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)

さて、前回私が感じた「出版のロングテール」話について、出版社の方からいくつかご指摘をいただいた。面白かったので、差し支えなさそうな部分だけ、ここにご紹介したい。
出版の「ロングテール」を実感、「ブロガーの書く本」 - Tech Mom from Silicon Valley

まず、「新書のほうがハードカバーよりライフサイクルが短い」というのは間違いだそうだ。むしろ、ハードカバーのほうが、装丁も立派で初期費用が大きく、その代わり単価が大きくて、新刊のときにたくさん売って回収する必要がある。(追加→文庫にして売るという話があって、私もそれを意識して「ライフサイクルが長い」と書いたのだけど、文庫にするときまたコストがかかるので、やっぱり新書のほうが利益率がいい、ということなのではないかと。)確かに、新書というのは、それぞれ表紙に新しい絵やデザインもいらないし、初期費用が小さくて、細々と長く売れるという性質があるようだ。

それから、ケータイ小説とのアナロジーでいうと、確かにライターの発掘という意味ではブログもUGCの一種に近いところがあるが、結局は(私の場合もそうだったが)ほぼ完全に書き直しが必要。ところがケータイ小説は、すでに完成した小説になっている。つまり、ケータイ小説の初期費用は小さい。にもかかわらず、ブログよりもはるかに大量の「お得意さま」をすでに抱えており(桁がちがうらしい)、ほとんど宣伝しないでも売れる。考えてみたら、ケータイ小説とは、なんと利幅が大きく、リスクの低い、魅力的なジャンルなのだろうか・・・

流行るのも無理はない。ただし、当然ここでも経済論理がはたらき、参入が増えれば、だんだんにそんなにおいしい商売ではなくなっていくだろうが。

究めつけが、「ハードカバーになぜするか」という話。日本では「返本」という制度があるので、倉庫と店を行ったり来たりする間に、ちゃちな装丁の本は壊れてしまう。それで、ハードカバーにする、という話。これは、実は子供の本を探す中で、アメリカのように「一冊3ドル、読み捨てぺらぺらペーパーバック」の子供の本が日本になぜないか???という深刻な疑問への、見事な解となった。アメリカは、書店に対して「売り切り」なので、ちゃちなペーパーバックでもいいのだそうだ。

日本では、読むか読まないかわからない、読んでもすぐに卒業してしまう子供の本が、一冊1500円もする。図書館へ行け、というのもわかるけれど、時間のほうが大切な、私のような限界労働者では、図書館に行くことはむしろ贅沢。読み捨てぺらぺら本があれば、あまり気にせずどんどん買って読ませてもいいのだが、1500円では躊躇してしまう。なかなか買ってくれないから、単価を高くせざるを得ない。新しいライターがどんどん出てくるわけにはいかなくなる。こうして、市場縮小スパイラルにはいる。

子供の本離れを非難するメディアは、この話はどこにも書かない。でも、子供のせいだけじゃないように思う。

どちらがいいかというと、消費者にとっては、アメリカ式のほうがいい。書店にとっては、短期的には日本のほうがリスクが少ないわけだけれど、長期的に「縮小スパイラル」になるのなら、やっぱりアメリカ式のほうがいいんじゃないだろうか。というより、こうして「児童書」というカテゴリーが縮小・消滅の危機にあるとしたら、うーんと長い目で見ると、日本の社会全体にとって、とても問題なのではないかと思う。

ついでに言えば、日本の小さい子供向けの本って、なぜ「昔話」ばかりなのだろう、という話もある。「パブリック・ドメイン」だから、作家にカネを払わなくていいし、リスクが少ないからなんだろう。昔話が悪いわけじゃないけれど、新しくて魅力的な作家の本があまり出てこなくて、つまらない。返本なしのぺらぺらペーパーバックで、「ケータイ児童書」ジャンルをつくり、若いお母さんたちに書かせたらどうかなー。ついでに、挿絵もウェブでユーザーがつくる。面白いと思うけど、どうでしょ。

(追加もういっちょ→はてブコメントで「安い子供の本もありますよ」と書いてくださった方があります。どこに行けば買えるか、ぜひ教えてください!私の立ち回り先からあまり遠くないところなら、今度日本に行ったときに、ぜひ買ってきたいです。)


同じネタ話の英語ブログ・エントリー:
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参考記事:
KAGOY時代にあった児童書を! - Tech Mom from Silicon Valley