Web2.0のイケメン化に見るキビシイ現実

さて、前回は極めて前向きにWeb2.0論を書いたが、今回はややシニカルに現実を直視しようと思う。

前々回のエントリーで「Web2.0にはイケメンが多い」と書いた。これに対してのコメントと、だいぶ前に「ギークのイケメン化現象」について書いたときにいただいたコメント(ちなみにどちらも女性からだった・・つまり、みんな考えてるコトは同じなのねっ^^;)で、「ギークといってもメディア・広告・出版業界のヒトだから華やかなのだ」とご指摘をいただいたのは、なーるほど、大当たりだと思った。

DiggのJay AdelsonとSix ApartのMina Trott

当初のWeb2.0的な世界は、かなり理想主義的な、「世界を良くしよう」的な純粋なギーク・コミュニティだったが、それがマスに拡大する過程では、どうしても「継続可能なビジネスモデル」が必要とされる。Web1.0の時代にはそれが「eコマース」に矮小化されてしまったのだが、今回は「広告モデル」へと集中している。もちろん、今回のWeb2.0EXPOでも、例えば企業向けのサービスにして有料化する、というやり方や、何かを仲介して手数料を取るというやり方もいろいろ出ている。でも、基本的には、どのワークショップだか忘れたが「Google is oxigen」といわれていたように、GoogleのAdSenseを入れればとりあえず簡単になんらかの売上げがあがるようになり、その次の段階はさらに広告モデルを自前で拡張するというやり方がやはり圧倒的に多く、そのためのいろいろなツールが提案されている。

「メディア2.0」なるセッションでも、コンテンツの内容やクリエイティブの話はほとんどゼロで、最初から最後まで広告の話。そういうことなんだ、メディアってことは・・・とナットクした。私は「ネットと放送の融合」という言い方があまり好きではないが、広告の見せ方、仲介や効果測定などの様々なツールが発達することによって、「ネットがメディア化」しつつあるというのは現実である。それが、イケメン・ギークの比率上昇という現象となって表出しているのだ。なるほど、ナットク。

しかし、quantumfusionさんのコメントにある「携帯広告が広まれば、ケータイ業界でもイケメンが増えるかも」というのは、残念ながら期待薄のような気がしてしまう。広告モデルというのは、効率が悪い。ものすごく多くの人に広告を見せて、そのうち本当に購買に結びつく比率は少ない、超薄利多売の商売だ。だから、広告を載せるメディアには、無駄にたくさんの広告と、さらにそれをはるかに上回る無料コンテンツを無駄にじゃぶじゃぶ流せるだけの余裕がある、つまりメディアが安価に供給過剰状態であることが必要だと思う。有線ネットなら、ブロードバンド時代の今ならそれが可能だ。同じ電波を使っていても、例えば所与の面積の中で受信可能なテレビの数というのは何か制約があるのだろうか?聞いたことがないので、たぶんいくらでも増やせるだろうと思う。しかし、携帯電話の数には限りがあるし、流せるデータ容量もかなり制約がある。3G技術でいくら容量を増やしても、キャリアはどうしても、米のメシである音声を圧迫しないようにいつも気をつけて、いろいろと調整しながらやっている。携帯広告を語るときに、世の中的には携帯端末の小さい画面の制約があって無理がある、ということを言われるが、それよりも基本的に、「じゃぶじゃぶ無駄なものを流す」という発想自体が、携帯の世界にはまだないし、今のところ技術的にも無理だと思う。

だから、ケータイ業界のWeb2.0化=イケメン化はまだちょっと無理だと思うのだ。これがキビシイ現実・・・(ため息)

あー、ちなみに、これは「全体的な傾向、比率」の問題であって、ケータイ業界にももちろんイケメンや美女はいますよー。蛇足ですが。(だは)