そろそろ「野菜系女子」をキーワードにしてもいいと思うんだ/YUIの苦悩と「焼肉系女子」倖田來未×大塚愛の闘争の理由


突然なにを言い出したかわからない読者諸賢のために説明しよう。
まずこんなエントリーがあったんだ。

FF10-2。国民的RPG作品であるファイナルファンタジーシリーズのテーマ曲を歌ったのはなぜか倖田來未であった。ゲーム中で声優までやっていたし、PVも熱唱する倖田來未にゲームのヒロインの画像がオーバーラップするというものだった。さすがに注目度の高い媒体ではあるので、この仕事が倖田來未の名を世間に売り出すことになりはしたのだが、当時から、どうも場違いな人間がポリゴンヌの中に入っているなあという印象を拭うことはできなかった。一般的にいって、オタ族は体臭のなさそうな野菜系女子に惹かれるものだ。焼肉定食にんにく大盛り!的な倖田來未とは相容れないはず。当時から彼女は結構露出度高めのスタイルだったのだけど、その上からゲームのCGモデルが被せられるのでは、どんなにおっぱいを強調したところで意味がないし、そもそも彼女のおっぱいに失礼な話でもある。ほんとうに不思議な組み合わせだ。

さよなら飲むヨーグルト - オタクからヤンキーへ〜パチンコ倖田來未に思う〜

id:yoghurt氏による素晴らしい「倖田來未」論なのだが、注目すべきは女子を「焼肉」と「野菜」に分けるそのセンスだ。ブクマでもそのセンスに脱帽したものが多い。

「焼肉系女子」と「野菜系女子」。「女子を食べ物にたとえるなんて言語道断」とかフェミニズム界隈から声が聞こえるかもしれない。食べ物というよりも「質感(追記:これだとクオリアとか思い出すからやめるわ)雰囲気、たたずまい、あるいは空気」にこちらとしてはこだわっているのだが。
しかし、このキーワードから開かれる「女子」論、及び「少女」論の徴候が何か見えやしないだろうか。僕はこれら2つのキーワードは「女性の身体性」のリアリティに深く関係していると思う。


そしてそれに対する応答の1つがid:kazukan氏の次のエントリーだ。

 ここらへんから言いたい。

 「文科系女子」ってワードがダヴィンチとかユリイカによって商業的に汚されてしまったバズワードになってしまった以上、「野菜系女子」っていうワードは最適なんじゃないかと。

「文科系女子」ってワード使用禁止にしたほうが良くね? - りとすら


彼女たちはメディアによって勝手にあらぬレッテル貼りをされて汚されてしまっているとid:kazukan氏はお考えのようだ。先行研究としてid:kanose博士の次のエントリーもある。


僕は正直そこまで嫌悪感は持たなかったが、おそらく彼は最近の「腐女子ブーム」に僕が感じているものと同じような種類の不快感を感じておられるのだろう。右の雑誌を書店で見かけたとき、「オタク」「萌え」ブームのときと同様、上澄みを掠め取ろうとする何か「商業的」な香りを僕が感じてしまったのは言うまでもない。

僕としては、宮崎あおい、蒼井優、YUIが「草食系女子」の3強です。

 でも、宮崎あおいは結婚して大人のふつーの女性っぽくなったし、蒼井優はなんだか痩せすぎてきてモデルかよってつっこみたい。YUIは最近はロックに目覚めたらしくて・・・一概に「草食系女子」って言えなくなってきた感は否めないっ!!

「文科系女子」ってワード使用禁止にしたほうが良くね? - りとすら

id:kazukan氏は「肉食系女子/草食系女子」というキーワードで分析されてるが、僕は原典に忠実に「焼肉系女子/野菜系女子」で語ろう。
id:yoghurt氏やid:kazukan氏の言いたいところは彼女たちからいつも目が離せない男子ならば手に取るようにわかるだろう。

まず大雑把に分類すれば「焼肉系女子」は「ヤンキー文化圏」に親和性が高く、「野菜系女子」は「サブカル文化圏」及び一部「オタク文化圏」に親和性が高い。「パチンコ倖田來未」の登場、これもある種の必然ではあった。パチンコと倖田來未のシンクロ率はエヴァとのそれよりも高いであろう。


対して野菜系女子はどうだ。蒼井優は『ハチミツとクローバー』なんていう青春のかほり漂う「クローバー」な野菜系映画に出ている。*1
そしてWあおいの他方、宮崎あおいは『NANA』なんていうある種の焼肉系映画に一度は出演したもののその「野菜系女子」としてのオーラを保つため、次回作『NANA2』の出演を辞退した。
はてなキーワード「keyword:宮崎あおい」によると、今年は奈良美智の映画にも出演されているそうだ。「アート」といういわゆる「サブカル文化圏」への親和性の高さを証すものとして注目せずにはいられない。


そしてYUI、はてなキーワード「keyword:YUI」ではまず<裸足の歌姫ならぬ「座る歌姫」>と紹介されている。少しダウナーな身体性の希薄な雰囲気がなんとも「野菜系」といえるのではないか。
何より注目すべきは映画『タイヨウのうた』での映画初出演、初主演だろう。
注目するのは「初出演、初主演」という部分ではない。映画の内容だ。

太陽の光に当たることができないXP(色素性乾皮症)という病気に侵されながらも、音楽を愛し、懸命に生きる雨音薫を演じる。

YUIとは - はてなキーワード


まず実際にこの病気に罹られてる方のためにもこの病気に対する認知を上げ誤解を防ぐためにリンクを張らせていただきます。

この病気はフィクションではありません実在する病気であることを理解しましょう。
病気に罹られている方々はお大事にしてください。



ここまで留保を置かせていただいたうえで誤解なきよう、これから僕が言いたいことを言わせて頂きたいと思います。


この「太陽の光に当たることができない」というのは「野菜系女子」にもなりきれないというYUIの心の叫びにも聞こえやしないか。
(蛇足)

この映画の主題歌でもある「Goodbye Days」がかくも感動的なのはそんな「YUI」が「昨日までのYUI」に「Goodbye」とお別れを告げ、今の自分を肯定することへの決意表明に感じられるからではないか。(蛇足以上)


(追記0805)これは冗談にも聞こえるかもしれないが、たしかに半分冗談ではある。しかし、フィクション、とりわけドラマや映画など「虚構」の世界のリアリティを担保する上で役者の雰囲気、身体性のリアリティは重要な位置を占める。YUIがこういう映画のヒロインとして抜擢されたのも意味のある偶然、シンクロニシティが感じられる。(追記0805)


僕はぶっちゃけこの映画を見てないのであまり勝手なことは言えないが、id:kazukan氏の「YUIは最近はロックに目覚めたらしくて・・・一概に「草食系女子」って言えなくなってきた感は否めないっ!!」という叫びにはこの「ロック」*2が「野菜系女子」と非常に相性がわるいことを伺わせる。
この相性のわるさに苦悩しつづけ彼女、YUIは自らの立場を決めかねていたのではないか。もちろん立場を決めなくともYUIはその立場を不動のものにしつつある、と最初は正直期待していなかった僕ですら最近は思う。YUIは固定ファンをかなり獲得している印象を受ける。


ちなみに僕はそういう意味からも大塚愛は間違いなく「焼肉系女子」だと言える。
『さくらんぼ』などという「電波系」の上澄みを掠め取ったような(!)甘酸っぱい果実で私たちを大きくだましてみせる荒業を成し遂げた彼女だが、かといって彼女が「野菜系」とも「果物系」などともいうはずもなく、『黒毛和牛上塩タン焼680円』でストレートにタイトルで見せてくれたようにまさに彼女こそ「焼肉系女子」なのである。

ずぅーっと会いたくて待ってたの
あみの上に優しく寝かせて
あなたにほてらされて
あたしは 色が変わるくらい


大塚愛「黒毛和牛上塩タン焼680円」


読者諸賢のためにも、引用はこれくらいにしとこう。人によってはひきつけでも起こしてしまうかもしれない。恐ろしいほどの「焼肉系」ぶりである。「野菜系」好きの僕は歌詞を見てて目が眩んでしまった。
(追記0805)いくら「ほんのり香るレモンの味で オシャレ」したところで彼女の本性である「焼肉系」ぶりは隠されるどころかますます増幅されるだろう。(追記0805)


ここで同い年の関西人でもある倖田來未と彼女、大塚愛との関係を見てみるのも興味深い。

…最悪と評判になっている。
そのキッカケとなったのが、『CDTV2006-2007』内での暴言。
パフォーマンスを終えて、司会者らとともに過去の放送VTRを見る倖田。
その表情はワイプで映し出され、曲が発表されるたび、ご機嫌に口ずさんでいた。
しかし、大塚愛の「スマイリー」が流れ出した途端、顔つきが一変。
露骨に嫌な顔をして、横を向きつつ一言吐き捨てた。
あまりの豹変ぶりに、すぐさま某ネット掲示板も反応。
口の動きから、何を口走っていたのかが推測された。
どうやら彼女は「腹立つ!」と言い放っていたようなのだ。

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もちろん「言い放ってたようだ」という推測でしかないが、エイベックスの3女王として浜崎あゆみに名を連ねる2人はその仲はあまりよろしくはないように見える。
それはまさに同じ「焼肉系女子」としての縄張り争いが繰り広げられているからであろう。
不動の地位を築いている浜崎あゆみに対し、彼女たちはまだ発展途上の段階にある。その上で彼女たちがお互いをライバル視し合うのは当然とも言えるだろう。
しかし、そこに「同属嫌悪」の感情が潜んでいることも見逃してはならない。


今日はこれぐらいにしとくが、「焼肉系女子/野菜系女子」によって広がる「女子」論のパースペクティブの広さを感じていただければ幸いである。
そんじゃid:yoghurt氏、id:kazukan氏、キーワード編集よろしくねっ!

参考資料

FREAKY(DVD付)

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NANA -ナナ- スタンダード・エディション [DVD]

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タイヨウのうた×YUIと薫のうた [DVD]

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Good-bye days

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さくらんぼ (CCCD)

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黒毛和牛上塩タン焼680円(DVD付)

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*1:そういやクローバーって食べれんの?

*2:これは「焼肉系」であろう