裁判官はこういう認識


ここしばらく、「じえい」論議に疲れて、他の記事がなかなか書けていなかったので、
少し自分のコントロールというかペースを取り戻す意味もかねて、
気になった報道についてエントリをあげておこうと思います。


知れば知るほど、つくづく、日本の司法制度は腐っていると思います。
日本は刑事訴訟システムの後進国と既に90年代に台湾に指摘されているのですが、本当にそのとおりです。
そして性犯罪が最も最悪です。
さらに言うと、そのおかしな法定義と判例を勉強してきた司法関係者が最も感覚が変です。



http://mainichi.jp/select/jiken/news/20091217ddm041040078000c.htmlより転載 (以下、強調は引用者による)

検証・裁判員制度:判決100件を超えて/1 更生できるの


 ◇「刑務所でどんな生活を」…裁判官「視察行ったことない」

 ◇大半が刑務作業「教育時間、不十分」


 東日本にある裁判所の評議室。被告は法廷で起訴内容を認めていたが、反省の言葉はなく円卓を囲む裁判員6人の意見は「実刑」で固まりつつあった。裁判員が「刑務所では、どんな生活をするんですか」と尋ねると、裁判官は言葉に詰まった。「(視察に)行ったことがないので、あまり詳しいことは……」


 判決後、裁判員の一人が取材に答え、「裁判官なら知っておくべきじゃないのか。刑務所に入って本当に被告は更生するのかな」と首をかしげた。


 女性を襲ってけがをさせたとされる別の事件の裁判の評議でも、裁判員から被告の男性に実刑を求める意見が相次いだ。だが、ある裁判員は裁判長から説明を聞くと、刑務所で服役しても刑務作業に費やされる時間が多く、「(矯正)教育の時間がほとんどない」と感じたという。


 「外でいろんな人の目が届く中で反省させた方がいいんじゃないか」。裁判員の発言を受け、裁判長は保護観察制度について説明を始めた。評議は執行猶予と保護観察を付ける意見でまとまった。


   ◇


 毎日新聞の集計では、裁判員裁判で執行猶予付き判決を受けた被告のうち、保護観察が付いたのは69・2%。判決宣告後の裁判長による説諭でも、裁判員の意向を酌み「きちんと仕事を見つけ、他人の役に立つことをしてほしい」(東京地裁)などと「判決後」を意識した発言が目立つ。


 職業裁判官による裁判ではどうか。検察の統計では、例えば08年に強盗致死傷事件の1審で執行猶予判決を受けた33人のうち保護観察が付いたのは7人(21・2%)。単純に比較できないが、裁判官以上に裁判員が保護観察を重く見る様子がうかがえる。


 ある裁判官は「あまり更生という視点で保護観察付きの判決を考えたことはない。国の監視が付くから、『野放し』となる普通の執行猶予とでは雲泥の差がある。実刑と猶予のはざまぐらいの事件で使うべきだ」と打ち明ける。さらに、「量刑は犯した罪の重大さに応じて科すのが基本」と述べ、裁判員が更生を重視する様子に、戸惑いもにじませた。


   ◇


 「頑張ります。ありがとうございました」。10月8日、横浜地裁。放火事件の裁判員裁判で保護観察付きの執行猶予判決を受けた無職の男性(21)=確定=は、弁護人に頭を下げ、夕刻に横浜拘置支所を出た。しかし、保護観察所に寄ることもなく、姿を消した。

 「自分に負けないよう立ち直ってほしい」「皆が彼を支えているという思いが伝わったと思う」。同じころ裁判員を務めた人たちは記者会見で元被告の更生を期待する言葉を口にしていた。男性の所在は今も分からない。

 被告の反省は本物か立ち直りは可能か、見極めは難しい。犯罪白書によると、保護観察付き判決を受けた3割近くが毎年再犯で執行猶予を取り消されているデータもある。


 「横浜のような事例は少なくない」。東京都で36年間、保護司を務める宮川憲一さん(72)は制度の不十分さを感じつつ、それでも裁判員制度で保護観察がクローズアップされるようになったことを歓迎する。「罪を犯した人を、社会全体で支えるという本来の更生保護の考え方が浸透することを期待したい」=つづく


   ■


 司法の大変革とされる裁判員制度は、8月の第1号から、判決が100件を超えた。市民感覚は反映されているのか、審理は十分か、負担は……。課題を検証した。


 ◇保護観察付き猶予取り消し3割

 保護観察対象者が所在不明になった場合、保護観察所は裁判所に「引致状」を請求し、強制的に連れてくることができる。保護観察所が捜し出すほか、警察が保護観察所の依頼を受けて捜し出し引き渡すケースもある。犯罪白書によると、08年に保護観察付き執行猶予となったのは3691人だったが、再犯で1022人、保護司との定期的な面接を怠るなどの順守事項違反で103人が執行猶予を取り消されている。


裁判官って、何のために存在するのでしょうね?
犯した罪の重さに乗じた刑を言い渡すだけで、その後は知らない、って、全ての国民に迷惑です。もちろん被害者もですが加害者にとっても、です。


自分の仕事の意味がわかっているのだろうか?
いえ、わかってないからこういうことを言うわけです。
人を裁くということへの覚悟もなければ信念もない、責任の持てないことをしないよう努力する、ということさえしていない裁判官が多いのです。
もちろん全てとは言いませんが。


過去の判例に機械的にあてはめて、検察官の求刑(こちらも判例にならった相場を出す)を8掛けにしたものを判決として、言い渡す。
判決文には、あらかじめ決まっているポイントをチェックして盛り込むだけです。
はっきり言って誰だってできるような仕事です。


被害者参加制度や裁判員制度が始まったのは、表に出ている「被害者のため」「市民参加」という名目だけではないと私は思っています。(これについてはいずれまた別エントリで)


司法の独立、という憲法上の建前がある以上、手を出せないので、検察を通して変えていくしかないのでしょう。


でも何しろもともとが問題だらけで何も進歩せず同じことをたらたらたらたら繰り返してきたので、新しいことを始めるのが何しろへたくそなわけです。
なので、想定外のことが多すぎる。
性犯罪を裁判員裁判に含めることにしたって、何も考えていなかったわけです。
最悪です。


実は司法関係者はかなり単純な人が多いです。そして性差別意識がとてもとてもとても強いです。
みなさん、どういう人間が、どういう教育を受けて、法曹になるのか、もっと知ってください。
そして危機感を持ってください。
とても安心して暮らすことはできない現状です。






さて、更正について、もう一つ記事を。


http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20091126k0000m070132000c.htmlより(現在キャッシュのみ残っています 、強調は引用者)


記者の目:裁判員裁判が始まり4カ月=松本光央


 裁判員裁判が始まって間もなく4カ月。法廷での質問や判決後の会見から、多くの裁判員が被告の更生に強い関心を持っていることが分かってきた。そこには「裁く側」の強い責任感が感じられる。しかし、刑務所での生活や出所後の再犯事情について、プロの裁判官たちが裁判員に適切に説明できているかは疑問が残る。今後定着していく裁判員裁判では、裁判員に十分な情報を提供してほしい。そして、「裁かれた後」に国民の目が注がれ始めた機会をとらえ、犯罪者の更生という観点も、国民の司法参加について検証する一論点にすべきだと考える。


 裁判員制度を機に人を裁く難しさを考えたいと、連載「正義のかたち」の取材班の一人として、元受刑者や元裁判官らを訪ね歩いた。


 連載で記事にしなかった元受刑者がいる。殺人などの罪で約10年服役し、昨年5月に刑務所を仮出所した30代の男性だ。中肉中背で引き締まった顔つき。私の質問に時折はにかみながら丁寧な口調で応じる姿に、人をあやめた過去は重ならなかった。しかし、男性は人気歌手グループの曲名を一つ挙げ「この曲を聴くと、相手を刺した感触までよみがえってくる」と語った。事件当時にカラオケで歌った曲だという。その直後、金銭トラブルなどから知人男性をナイフで刺してしまう。


 刑務所の集団室で漫然と過ごす受刑者を目の当たりにした。「ここを出たら……」と悪事を話し合う姿や、仮釈放を狙い謝罪の手紙を被害者につづる受刑者もいたという。「単に社会から一時的に隔離しているだけ。被害者が見たら許せないだろうと思う」と男性は振り返る。


 「自由を奪われた冷暖房機のない刑務所は戻りたくないでしょう?」と私は聞いた。男性も服役中は、なぜ再び罪を犯すのか、信じられなかったと語る。しかし「出所して分かった。のど元過ぎれば熱さ忘れる、です。もう刑務所暮らしは思い出ですよ」と語る。更生を誓う男性は出所後に運送業の仕事に就いたが、知人によると、最近、ささいなトラブルで解雇されたという。


 何人かの元裁判官も、法廷で対面する再犯者に頭を悩ませたと明かした。犯罪白書によれば、07年の刑法犯のうち再犯者は約4割に上る。「事件の報道は判決で終わってしまう。本来大事なのは、それから被告が何年も暮らす刑務所のはずだ」。ある元裁判官は、受刑者の刑務所生活が世間の関心から置き去りにされてきたことをそう表現した。そして「国民みんなで刑罰を考える機会が出てくると思う」と裁判員制度に期待を寄せた。


 8月3日の東京地裁を皮切りに、全国の地裁・支部で始まった裁判員裁判。取材する中、被告の更生を願う裁判員の姿が確かにうかがえる。山口地裁では寝たきりの妻を殺害しようとした殺人未遂事件の公判で、女性の裁判員が被告の夫(64)の事件前までの献身的な介護に理解を示し、「できるだけ人の手を借りて社会復帰してほしい」と語りかける場面もあった。


 被告のその後の人生をどうするのか。選択肢の一つである刑務所では、06年5月施行の刑事施設・受刑者処遇法で受刑者への矯正教育が初めて義務化され、被害者の視点を取り入れるなどの個別処遇がやっと実施されるようになった。また、過剰収容が指摘される中、法務省は07年4月から山口県美祢(みね)市の「美祢社会復帰促進センター」をはじめとする民間の力を活用したPFI方式の刑務所を4カ所開設。初犯など犯罪傾向の進んでいない受刑者を主な収容対象とし、各センターで独自の更生プログラムを実施している。


 しかし、刑務所での生活について裁判所や検察、弁護側が裁判員に必ず説明するわけではないようだ。ある裁判員経験者は毎日新聞の取材に応じ「被告が刑務所でどういう毎日を送るのかを裁判で聞き忘れた。それがいま気になっている」と明かした。その裁判では実刑が言い渡された。


 実刑か執行猶予か。あるいは刑期を何年とすべきかは、多くの裁判員が直面する選択となる。選択の過程で刑務所での暮らしぶりや、社会で更生を図る仕組みについて、裁判員が十分に理解できる運用が必要だと思う。


 プロの裁判官だけによる判決は「求刑の8がけ」と指摘されてきたが、裁判員裁判の判決は量刑判断の振れ幅が大きくなっている。ただ、判決後の会見などからうかがえる「裁かれた後」への関心が、更生や社会性の獲得を狙う「教育刑」の議論につながってほしい。国は刑務所での矯正教育の実態や再犯率などを、裁判員に明らかにしてほしい。再犯者をつくらない仕組みを社会全体で議論するまでに発展すれば、国民の真の司法参加が実現すると思う。(東京社会部)

毎日新聞 2009年11月26日 0時07分



「受刑者の刑務所生活が世間の関心から置き去りにされてきた」と、まるで世間の責任のような発言ですが、刑務所については同じ法務省が管轄しているわけです。
無関係のように言ってますが自分たちの責任でしょう。人事交流もあるのだから。
建前上、裁判官は一人ひとり独立した存在ということになっていますが、実際は法務省の枠組みの中の、単なる慣れ合い組織です。
一般市民のせいにするのはやめてほしいです。


警察はずさんな捜査をし、検察は判例にならって勝てるものしか起訴しない(日本の有罪率は99パーセントというありえない数字です)、
誰もが適当に処理します。流れ作業で誰も責任をとるつもりはないのです。


受刑者のその後はもちろん、他に犯罪をすることで更なる被害者が出るということは考慮していない。だからこそ、性犯罪者は初犯なら執行猶予が当たり前くらいになっているわけです。
そしてとても多くの被害者を出して、ようやく実刑になる。
どれだけ迷惑かければ気が済むのだろうと思います。


ちなみに、性犯罪に関しては、日本は欧米諸国より30年以上遅れているわけですが、
性犯罪者の更正については、他国でも思うような効果があがっていません。
日本はまだきちんとしたプログラムさえもなく、模索中の段階です。


日本の刑事訴訟システムは絶望的です。
急ピッチで正していってほしいです。



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