たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「シン・ゴジラ」と、カヨコと、尾頭課長補佐と、ぼく。

「シン・ゴジラ」見ました。

放映初日以外に映画見に行く行為が久しぶりなんだけど(初日に何も知らない状態で1人で楽しみたい派なので)、今回は日本全体から「ネタバレしないからな!」「いいから見に行けよな!」というオーラがびしばし伝わってきたので、これは様子見てからのほうが面白いなと。だってちょっとしたムーブメントになってるんだもん。ゴジラが、ですよ。この時代に。
 
で、真っ先に思ったのは
「庵野監督と樋口監督は、一旦エヴァから離れたほうが、みんなのためにいいんじゃないか」
ということでした。
自分はエヴァ狂なんだけども、その方が納得できる。
なぜなら、「他の作品作っても、庵野作品にはやっぱアスカはいるんだ!」って確認したからです。
 
以下、まったく隠す気なくネタバレしながら、勢いでなぐり書きます。
 

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生活を脅かす敵である「ゴジラ」が、東京をめっちゃくっちゃにするのがとにかく気持ちいい映像でした。
「なんでこっちばっかくるんだよ!」ってセリフは思わず笑ってしまった。だよねー。東京を壊す方が面白いからだよ!
そして、ゴジラに立ち向かうべく、数多くの人が立ち上がる姿はワクワクする。序盤は官僚たちがたらい回しにしたり会議会議で現場にいかなかったりで、主人公同様やきもきさせられるんだけど、最終的に全員いいやつしかいないじゃんって気持になる。
 
もうね、受け止められるのよ。
見ている自分のいいところ悪いところ全部ひっくるめて受け入れてくれる恋人みたいな存在なのよこの「シン・ゴジラ」は。
 
だって、日本人の社畜体質とか、決まり事決まり事で動けない神経質さとか、はっきりしない物言いとか、現実的にはあまりいいことじゃないじゃん。むしろ恥ずかしく思うところじゃん。
でも、「そういうところがある日本人が、みんなして歯をくいしばって立ち向かう」って姿が、もう最高にいいのね。
社畜がいいわけじゃないよ。ワイシャツ汗臭いですのシーンみたいに、あんまよくはないよね、と茶化してはいる。けれど、もうそういうのが生真面目で神経質な日本人として染み付いている以上、肯定されることは何よりも嬉しくて仕方ない。
「頑張れ」じゃないのよ。「がんばってきたよね」映画なんですよ。
 

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なにを「がんばってきた」か。
政治家のめまぐるしい会話劇は、ほんと意味なくまわっているように見える。実際そんなに意味は無い。
けれどそれがないと成立しないのも事実。後半になって、政治家が政治で、へたしたらみっともないとすら思える形で踏ん張ることで、救われることもある。
政治家が全員憎めない。
いっぱい政治家出てくるけど、全然政治的な批判はない。
あくまで「みんながんばってる人間」として物語の上で描いている。
セリフはまわりくどい政治会話なので、あんまり人間味ないけれども、決して全員モブではない。
 

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加えて、ラストシーンでゴジラを凍結させたあと、誰ひとりとして「やったー!」って言わない。
そうだよ、言わないよ!!!
だってここから先が大変なのわかってるもの、みんなそうやって災害と戦ってきたんだもの。
一息はつくけど、「がんばってきた」の確認であって、このあとまた腰をあげないといけない。
ハッピーを形にしないのが、えらい心地よかった。
 

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片桐はいりがお茶入れてたの、好きだな―。
なんで片桐はいりみたいな、出るだけで画面全部持っていくようなキャラに、お茶汲むだけの出番もうけたの!? 
と思ったんだけども。違うよね。
あの緊急時にお茶を入れる人がどれだけ重要か。埋もれちゃだめなんだよ。
だからこそ、存在感のある俳優を入れたんだろう。
(追記・キューティーハニーのセルフオマージュのようですよ)
 
他にもピエール瀧や嶋田久作みたいな、いるだけで目立つキャラがじゃんじゃか出てくる。
みんなそれぞれ、「いる」んだよなあ。
 

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「放射能」「核爆弾」は、やっぱり日本人のトラウマ。
けれどこの映画は別に、東日本大震災のことや広島長崎の原爆のことを政治的批判をしてない。
日本人にとって「放射能」「核爆弾」は、何が何でも立ち向か合わないといけない「脅威」のシンボルとして使われている。
この2つに対し、戦う日本人たち。
 
そりゃさ、核爆弾の爪痕をまだ残し、放射能とは今も戦う現状、「がんばれ」って言われたってもう疲弊してんだよ、いっぱいいっぱいですよ。
けれど「シン・ゴジラ」は、黙々と戦い続ける人々を描くことで、そうなんだよ主人公だけじゃなくて「全員」を描くことで、「がんばってきたよ! がんばったんだよ俺たちは!」と褒めてくれる。プロジェクトX。中島みゆきを連れてこなければ。
「避難勧告を出すことは、その人達の生活を全て奪うということだ!」みたいなセリフはぐっと来た。
苦境を、日本人って全員乗り越えてきたよ、ほんと大変だったよね、って何度も噛み締めた。
 
あ、「日本バンザイ」な映画ではないです。
「日本人気質」な映画だとは思う。そこは「風立ちぬ」と同じ。
「日本映画」って心の底から言える。
 

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庵野秀明脚本にしてはやけにプラス思考だよなあー、とは感じた。
「ヱヴァ破」のヒロイックな映画作った時と同じ心持ちなのかも。
宮崎駿が「もののけ姫」作ったのと同じ年と聞いて、なるほど。これが円熟なんだなあ。
 

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でだ。
それはそれとして、石原さとみ演じる「カヨコ・アン・パタースン」と、市川実日子の「尾頭ヒロミ」が、最高にいい役。この2人はいやでも記憶に残る。
 
カヨコ・アン・パタースンに至っては、祖母が日本人父親がアメリカ上院議員の米国大統領特使で、しゃべり方は英語混じりの日本語つまりルー大柴語で、ちょい上から目線で、気が強い。
初登場時は、パーティからきたのでそのままのドレス。
最後「私が大統領の時あなたが総理大臣」云々とか言って、デレる。
すげえ! マンガみたいなキャラクターだ!
想像以上に第三のアスカでした。
あとナディアでした。
 
尾頭ヒロミ。巨災対に呼ばれた「変人」の1人。環境省自然環境局野生生物課長補佐(漢字ならぶとシン・ゴジラっぽい)で、最初は政治家たちには相手にもされなかったけど、黙々と淡々とゴジラについて冷静に調べている女性。
表情が全く変わらない。マシンガンのように科学用語を並べ、「。」を付けずにしゃべるので市川さんの息が苦しそう。カヨコががっちり化粧してオシャレなのに対し、服装は適当でスッピン。
色んな意見あるけど(マヤさんかな?とか)、やっぱり綾波レイをぼくは連想しました。
まあイコールじゃないです。マヤさんの生真面目さとか、アスカのリアリズムとかも内包してると思う。
 

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「めんどくさい女性」が本当に好きな!庵野監督はな!
あまりにもめんどくさくて、2人とも映画の中だと浮いてること浮いてること。
「めんどくさい女性」の描写は、庵野秀明の一部なのはもう御存知の通り。
ナディアであり、レイであり、アスカ。「偏屈」な部分を背負い込むキャラクターがいないと、物語が成立しないんだと思う。
 
惣流・アスカ・ラングレーに恋をして、リブートエヴァでやきもきしているぼくも、なんか心がほどけました。
「アスカ的ななにかは、どんな作品でも最高の形で描くんだな」と。
多分2016年の庵野監督のアスカ像は、カヨコなんでしょう。あるいはQの式波・アスカ・ラングレーを蒸留した雫とでもいうか。
カヨコが自分の進退に対する決断をしたシーンは、人に承認されない恐怖を克服したアスカでしたね。
 
その分アスカと違って、一切拒絶をしません。
自我境界線がはっきりしたキャラしかいないので、そりゃまあそうだ。
ただ、ここはちょっと寂しいので、エヴァの続きを気を長くして待ってます。
 

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尾頭課長補佐の本は、夏コミに出る。出ないわけ無い。
 
尾頭課長補佐ずるいよ、彼女主役じゃん。
いや、みんな主役として描いてるんだけど、オタクの歪んだ気持は全部!課長補佐に!行っちゃうの!!
 
「不器用」として描かれるスタイルの彼女。もーめんどくさい。
(もっとも巨災対は変人揃いなので、協調性なしでみんなバラバラ動くのが、見ていてめちゃくちゃ楽しい)
彼女は決して、こっちを受け止めるタイプのキャラじゃない。そういう意味では綾波レイの真逆。
ものすごい早口で論破。論破。
 
じゃあこのキャラのどこに魅力を感じるか。「課長補佐のことはオレはわかってあげることができる」みたいな図々しい気持で好きになってしまう。
「逸見エリカが成長したら尾頭課長補佐みたいになってほしい」みたいなツイートを見てすげー納得しました。
つまり、見ている側の勝手な欲望を突っ込む入り口があり、同時に包含できる強度がある。
 

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細かいところでの作りこみがうまいんですよ。
最後の最後、全部終わってから尾頭課長補佐が、ちょびっとだけ笑顔になる。
ずるい。
これだけで、どれだけの妄想がうまれることか!
つくみずさんのこれとか最高ですね。


 
ガルパンの逸見エリカが「ちょっとめんどくさい性格」「でもおれは、おれたちはわかってあげられるんだ!」「と言いつつ自分たちの性癖をものすごい勢いで詰め込んだ結果キメラ化した」という愛され方(誰がなんと言おうと愛ですよ)を彷彿とさせます。
加えて「有能」というのも付け加えたい。
 
課長補佐が普段何を食べているか(ウィダーかコンビニ弁当だろうな)、どんな番組を見ているか(多分テレビ見てない)、普段着は何か(昔オシャレしようとしたら笑われたことがあって以降同じ服しか持ってないとか)、好きな食べ物は何か(特に無いけどコンビニ弁当のショウガを食べる時ちょっと幸せになるとか)みたいな妄想をどんだけ抱いても、成立してしまう。
すごいタフなキャラ造型だ。
 
というところまで含めて、「尾頭課長補佐に論破されたい」「尾頭課長補佐の下で働いてこき使われたい」「尾頭課長補佐をほめて照れさせたい」などの意見が、ネットで数多く見られるわけです。
 
……盛りました。
ごく一部の尾頭課長補佐ファンの間では、そんな感じ。
 
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「シン・ゴジラ」はもう色々な人がすすめまくっていると思うので、ぼくは尾頭課長補佐が好きそうな人と、カヨコが好きそうな人に焦点をしぼってすすめようと思います。
ゴジラ対策後に、尾頭課長補佐が家に帰ってきて、一息ついた時の顔を想像しながら乾杯しよう。
 
 
 
 
終わり。