たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

人間が「かわいい」と感じるポイントは、イラストのどこから生まれるのか

携帯の説明書の女の子に萌えてしまった件 - ゴールデンタイムズ
 
これめーっちゃかわいいんですよ。
とにかく見てくださいな。ぼくはベタ惚れでしたね。
X000シリーズ | 取扱説明書ダウンロード | au by KDDI
ここでPDFファイルの取扱説明書が見られます。
 
仮にこのキャラクターを「ゆうこ」と名づけましょう。
(説明書では名前がありません)

取説から引用。
いわゆる「萌え絵柄」ではありません。
ロリキャラでもないです。だいたい20代から30代くらいの女性を想定していると思います。
この「ゆうこ」が本当に見れば見るほどかわいくてしかたない。
(描いているのはとある有名な作家さんですが、作家さん本人の意向があるようなので、あえてここでは誰か書きません。ヒントは一つ目のリンク先にあります)
 
まあ、感じ方は人それぞれですが、ぼくには間違いなくストライクでした。
なにがかわいいのか?
これを考えることは「萌えを感じる心理」の解明になるかもしれないと思うので戯言混じりに書いてみます。
同時に、以前流行った「いまいち萌えない子」の解答の一つにつながるでしょう。
 

●デザインとしてのセンス●

どうすればいまいち萌えない娘が萌えるようになるか考えてみた - 戯れ言
カトゆーさんによる分析記事が非常に面白いので必見。
これにそいながら、ちょっと「ゆうこ」がかわいらしい理由を探してみます。
 
絵柄だけで言えば、「超電磁砲」や「俺妹」のような今流行の萌え絵と全然ベクトルが違います。目が大きくて女の子女の子している方向性に力をおいていません。
顔は極めてシンプルな丸。しかし身体はちょっとしたイラストなんかよりもかなり丁寧に描きこまれています。
まずはここだと思うのです。

・キャラクターのデッサンバランスが取れている。
・配色の工夫がされている。

デザインの基本部分がまず成立しています。
デフォルメは本当に難しい作業ですが、シンプルかつリアルに20代女性を描き上げている。ぼくが一番惹きつけられたのはここです。身体の描き方に無駄や間違いがほとんどないんです。
しかし服の皺まで計算されて描きこまれているのにはドキッとします。デフォルメされつつ自然体。
配色は完全にデザインの問題になっていきますが、洋服と背景とキャラクターの色の構成見事です。ちょっと変わった、でも万人が受け入れやすい特殊な緑を用いています。
これで最低限のキャラクターとして成立しているという部分がクリアされています。
 
加えて、これは必須条件ではありませんが「目と目の間が適切」というのは、かわいらしさの条件の一つにあります。藤子F不二雄先生も短編で「かわいさの条件」として目と目の間が離れていることを挙げていたことがありました。ぬいぐるみなんかがそれにあたります。
ゆうこの目は点なんですが、うまい距離感を保っているんですよね。そのためパッと見で安心感を受けるデザインになっています。
 

●「かわいさ」の最大のポイントは「キャラクター性」●

次に求められるのは、キャラクター性になります。

この部分が分かりやすいので引用してみます。

・表情が豊かで人間味がある
・服装のセンスからキャラクターの好みがわかる
・仕草からキャラの性格がわかる

ゆうこの表情がとーにかく豊かなんですよ。ころっころ変わります。
しかも「携帯」+「成人女性」で起きうるシチュエーションを分かりやすく設定しながら、それに対して「ゆうこならどう反応するか」をきちんと計算して描かれている。このイラスト製作者の中に「ゆうこ」というキャラクターがきちんと出来上がっているがゆえなんです。
仕草もそうですね。「ゆうこならこういう時どういうポーズを取るだろうか?」というのがきちんと描かれている。これってカット仕事だと、どうしても手癖でひょひょいと描かれているものも多いのですが、キャラクター性を理解した上で仕草や挙動を描くと、滲み出てくる深みがガラリと変わります。
服装については後述。
 
なぜ「ゆうこ」がかわいいかを端的にまとめると、「ゆうこがひとりのキャラクターになっているから」だと思うのです。
ゆうこは普段どんな生活をしているのか。
ゆうこはどういう生い立ちを追ってきたのか。
ゆうこは何が好みでどういう性格なのか。
これらの「ゆうこ」という人物像が、キャラクターの表情や挙動からはっきり見えている。一枚のカットを見るだけで「ゆうこ」像が浮かび上がっているのに、それに拍車をかけるように枚数が半端じゃなく、解説書をペラペラ見ているだけでゆうこと暮らしているかのような錯覚すらうけます。想像力豊かな人なら「ゆうこの二次創作」は余裕でできると思うくらいです。
 

●多種多様な服装●

ゆうこの服装の種類が非常に多いのはポイントが高いです。

 
緑が基調の服装が多いですが、赤、オレンジ、紫などもあります。
実際にPDFファイルを見ていただければわかりますが、ものすごい種類の服装をゆうこは着ています。
これなにげにすごい。別に服装変える必要ないのに、ちゃんと「ゆうこらしいチョイスの服装」を色々着せかえることで、彼女がオシャレ好きなのがよくわかるのです。
スレでも「地味」で「オシャレ」と矛盾っぽい話題が上がっていましたが、まさにそのとおり。派手でけばけばしい衣装ではなく、成人女性の落ち着いたファッションセンスを保っています。だけれども持っている服の数がものすごく多いためとてもオシャレをするのが楽しんでいる様子が浮かび上がってくるのです。
これも性格の一つにつながっていくんですよ。
 
固定化された衣装(例・制服など)を着せることで、キャラ付けを分かりやすくする、という手法もありますが、これは同時にキャラの記号化になってしまう恐れもあります。例の「いまいち萌えない子」なんかはその例でしょう。
人はいろいろな服を着たいという願望を持っている、特にゆうこはちょっとオシャレさんだ。ならば色々な服装を着させてあげよう。そんな意思が感じられるんですよ。
結果としてうまれたゆうこは、絵柄は全然萌え絵じゃないのに、なんだかじんわりとかわいさが溢れるキャラに仕上がりました。
 
ものすごくテクニカルに計算されたキャラクターだと思います。見事なデザイナーさんの仕事と言わざるを得ません。
オタク的な視点から「かわいい」と言うだけではなく、老若男女から見て安心できるデザインというのが素晴らしいです。
路線としては、コミカライズされた「サーティーガール」に似ているんじゃないかと思います。

こちらの方は岩崎つばさ先生の絵柄をそのまま活かして、キャラクター性を広告に出せていたのでベストでしたが、デザイン・キャラクター性・服装共にベクトルは似ていると思います。
個人的にこういう「かわいらしさ」は本当に大好きなので是非どんどん増えてほしいところです。
 
ようするに長々と何を書いてきたかというと。
ゆうこのマンガが読みたいな、ってことです。
ゆうこかわいいよゆうこ。
ドキドキ対決先手オレ! 通勤中ケータイの使い方を間違って慌ててしまい、電話の着信音を切れないゆうこ!
 
追記。pixivの「ゆうこ」タグのもりあがりがすごい。
「江井ゆうこ」の作品一覧(タグ)[pixiv]
やっぱりみんな、かわいいって思ってるんだなー、うれしい!