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「侵略!イカ娘」は面白いじゃなイカ?〜読者による能動的な楽しみ方〜

「侵略!イカ娘」アニメ見ました。「みつどもえ」の時も同じこと書いた気がしますが、一話から追っていた身としては感慨深いのを通り越して幻影でも見ているかのような不思議な感覚です。
 
さて、漫画の時もアニメの時もそうでしたが、「イカ娘」は賛否両論どころかものすごい色々な意見の分かれる作品でもあります。
「すげー楽しい」「イカちゃんかわいい」「笑う場所のタイミングが分からない」「イカちゃんかわいい」「ジワジワくる」「イカちゃんかわいい」「えっ、終わり?」「イカちゃんかわいい」「ほんわかできる」「イカちゃんかわい」「イカちゃんかわいい」などなど。
 
結論。イカちゃんかわいい。
 
……まあそれはさておき、自分はイカ娘は面白いと思うのです。
と言ってもこの漫画、受動的に眺めてゲラゲラ笑える作品とは異質なんですよね。ようは他のギャグマンガと同じものを期待していると「あれ?」っとなるというか。
今さらですが個人的にイカ娘が好きなところを書いてみようと思います。
 

●能動的に楽しむ「イカ娘」●

「侵略!イカ娘」は、読者が受動的にあらゆる情報と笑いを享受できるタイプの作品とちょっと違います。
ボケがいて突っ込んでくれる、そこではい僕ら笑う、というタイミングじゃないんですよね。
ネタによってかなり投げっぱなしです。
これはネタを放棄したとか、打ち切ったとかではないです。ツッコミキャラも栄子くらいしか用意されていません。圧倒的にボケだらけ。イカちゃんは基本ズレてますし、千鶴は何考えてるかわからないですし、シンディーと早苗は暴走キャラですし、渚は勘違い逃げキャラですし、悟郎は放置プレイキャラですし、ニセイカ娘は無口ボインですし、・・・びっくりするほどツッコミがいない。
ようするにツッコむのは読者側なんですよ。
 
例えばイカ娘の定番パターンで、イカ娘が無茶をして長女千鶴がそっと寄ってくるシーンがあります。
千鶴はこの漫画では最強キャラ。イカ娘もなにげに力はあるのですが勝負になりません。
そして、イカ娘は千鶴になにかされて恐怖に怯えることに……。
誰も突っ込みません。栄子ですら逆らえないので突っ込みません。
む、むむむ。このノリ……ドリフの間だ。
「志村うしろうしろ!」ですよ。「イカちゃん!うしろうしろ!」ですよ。
この「イカちゃん!うしろうしろ!」の面白さに気づいたら、この作品読んでいてジワジワくるようになります。
あちこちに放置されっぱなしの突っ込まれないネタが散乱しているんです。それを拾い集めてこちらがツッコミを入れると、どんどん面白くなります。
そして能動的に笑いを見つけたときの面白さって、後からゆっくり沸き上がってくるんですよね。
 

●瞬発力ではなく、蓄積力●

たとえば「日常」なんかは超絶瞬発力ギャグマンガだと思います。唐突にワケの分からないことが起きて、ブフッと噴出すタイプの漫画です。
「みつどもえ」はカルピスの原液型ですね。もーこれでもかと言わんばかりにネタを詰め込みに詰め込みまくります。「ロリコンフェニックス」なんかはヒトコマごとがオチになっているオチの連続型。「ピューと吹くジャガー」は笑えないことを笑いに変えたブラックユーモアの応酬。「浦安鉄筋家族」は小学生的シモネタとパロディのゲラゲラ笑い、「らき☆すた」はホンワカと見せかけて壮絶な毒舌でくすりと笑える。「よつばと!」や「恋愛ラボ」なんかはしみじみストーリー型でしょうか。ギャグマンガの数だけギャグの形がありますね。
 
じゃあイカ娘は?というと蓄積するタイプの笑いだと思います。
読んでゲラゲラ笑える瞬発力自体はそんなにないし、それは作者も求めていないと思います。まあシンディーの所の三馬鹿外国人が出てくる回は瞬発力が異常なので、決して瞬発力ギャグが描けないわけじゃないんですよね。
じゃあ蓄積とはなにか、というと、彼女たちの行動パターンが読めていることに対するニヤニヤです。
ものすごいそれぞれキャラが立っていて、「こうしたらこうなる」というのが予測できるんです、読者が。
たとえばイカちゃん大好き早苗が出てきたら、場が荒れて追っかけてイカちゃんは逃げるぞと。千鶴にベタぼれの悟郎が出てくる回は、いくらがんばっていい話になっても結局相手にされず突っ込まれすらしないぞと。
このパターンを理解しはじめると、次に何が来るか予想できるようになります。オチが読めるといえばそうなんですが、どちらかというとオチを読ませるようにみえます。
 
で、パターンも回を重ねるとバリエーション豊かになりはじめます。
この微妙な違いに対して読者がツッコミをいれることで、記憶に残り始めるんですよね。
「イカちゃんそれはやっちゃだめだ!」
「イカちゃんにげてーー!」
「イカちゃん・・・脳みそ足りない・・・」
「三馬鹿くんなマジくんな」
「早苗ェ・・・」
出てくるだけでその回のテンションがどうなるかわかる。これはすごい。
で、毎回出てくるキャラばかりではないので、「あの回の時ああだったから・・・」という推測もできるようになります。それが時々裏切られたりすると、イカ娘同様青ざめることに!
ここ、この蓄積による面白さが「イカ娘流」。だから一巻より二巻、二巻より三巻・・・と読めば読むほど面白さは上に上に重なっていきます。
 

●イカちゃん大好き!●

さて、ここまで来て一人書いていない重要な人物がいます。
相沢家の弟、イカ娘よりも年下(に見える)少年たけるです。
彼の視線はかなり特殊。というのも他のキャラ達が「イカ娘=変なやつ・面白いやつ」という扱いなのに対し、たけるは極めて純粋にイカ娘が好きです。子供らしく。
これなんですよね。
ぼくら、たける目線なんじゃなイカ?
 
なんだかんだで多くの人が「イカちゃんかわいい!」で終始するというのは実はすごいことだと思うんです。これだけ嫌われづらいキャラも珍しい。別に萌えキャラというのともちょっと違いますしね。
小動物を愛でるのに近いと思うんです。ペタペタ変なことして、それがウザいんだけどかわいくて。
そこに入るたける目線は「イカねーちゃん面白い!」「イカねーちゃんといると楽しい!」です。
たけるがいることでイカ娘がいるだけで、なんか楽しくなっちゃうんですよ。
小学校の時にただ大好きな友達といるだけで楽しかった、あの感覚です。
 
舞台は永遠に終わらない夏。サザエさんもびっくりするほど時間が進みません。
そんな世界の中で、異物ともいえるイカ娘がやってきたら、それだけで嬉しくなってしまうじゃなイカ。
まさにこれこそが「侵略!イカ娘」の一番の安心感であり楽しさだと思います。だから「イカちゃんかわいい」という感想は実は極めて優秀な褒め言葉なんじゃなイカな、と思うんです。
逆に言えばこの「終わらない夏」に不気味さを感じる人や、一話ごとの瞬発力とツッコミ度合いに期待している人にはあわないでしょう。
しかし、それをあえて踏まえた上で、イカ娘は長いスパンで見続けて、のんびり笑顔になれる面白い作品なんじゃなイカなあと思うのです。
 

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個人的にアニメで一番好きなシーンは、無駄によく動きまくるイカ娘の触手と、ここです。

うーわー。
しかもこれOPのワンカットなので完全にツッコミなし。これで終わり。
この違和感のある世界に「今月のってなんだよ!」「ゲソってどっち書いたんだよ!」「早苗エビかぶるな!」「エビばっかかよ!」「二人きりって・・・でもイカちゃん喜んでるじゃねえか・・・」「イカちゃん・・・あぶない、この環境は危ない・・・!」ともうツッコミの嵐を入れたくて仕方ない。
非常にニコニコや実況向きのアニメだなーと思ってみていました。
今まで一人で漫画読みながら突っ込んでいたのをみんなで突っ込めるようになるなんて、楽しいんじゃなイカ?
 

アニメ一話Bパートの「同胞じゃなイカ?」なんかは、まさに「ツッコミは視聴者側でお願いします!」という典型です。この間、コントに近いので、笑い声入ったりしても面白そうですね。オーディオコメンタリーがあるのならちょっと楽しみ。