たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「ゆるゆり」から見る、形式としての百合世界。

えー、最近は海外でも「百合」という語が、そのまんま「YURI」とか言われる時代になりました。
すごいね日本オタク文化。
百合やガールズラブやレズビアンのアニメとマンガ ユリコン ALC 出版
こんなのとか。
で、もう日本人オタクなら不文律的に抑えられていると思いますが、「BL」はゲイカルチャーとは関係ないファンタジーとして成立してかなり長いですし、「百合」はビアンカルチャーと切り離されつつあります。
なので「百合」という語は現在では、「二次元アニメ・マンガ・小説などの、創作キャラ」に使う用語として定着していると言えます。
無論、作品によって異なるので、「青い花」のようにがんがんリアルな心の機微を追究する作品もたくさんあります。
と同時に、「女の子同士いちゃいちゃしている」という絵柄メインの作品もたくさん増えています。
 

この「ゆるゆり」という作品、「百合姫S」に掲載されているのですが、名前のとおり「ゆり」ど真ん中をネタにした漫画…のように見える別の何かです。
 

●「女の子同士の恋愛」ではない百合。●

百合の境界線、というのはありません。その人の感じ方によってバラバラだからです。
しかし「百合」という用語が包括しているものを一種の形式と捕らえて、「百合っぽい」と称される作品は、がしがし出ています。
たとえば「苺ましまろ」とか「らき☆すた」などが有名どころ。別に女の子同士の恋愛は、出ては来ないんですよね。二次創作はその限りではないんですが、百合を想起してしまうのはこれらの作品が意図的に「百合っぽい空気」を盛り込んでいるから。
条件としては。
 
・女の子がたくさんいる。
・ほぼ作品が女の子のみで構成されている。
・スキンシップが盛ん。
 
などなど。
「男なんぞいらん!」的な、女の子の楽園としての味付けは現時点では多く見られる重要な部分だと思います。なんでしょうね、こういうのは基本男視点で作る場合が多いので、どうしても「女の子だけでいい」という偶像・人形的なものはあると思います。または、恋愛を想起させやすい環境づくり、でしょうか。男キャラが下手に入ると受け手に不安を与えるのもまた確か。
 
しかし、作り手側がギリギリのラインまで水を注いで百合っぽくしてみせても、やっぱり「少女達の恋愛」というラインは踏み越えないんですよね。踏み越える作品も勿論ありますが、いわゆる萌え系の作品はそのギリギリの綱渡りを楽しんでいるようにも見えます。
はたしてこれを「百合」と呼んでいいのかどうかは個々の判断に任せますが、洗練されて形式化された「少女の王国」はとても魅力的だ、とダケ言っておきましょう。
 

●「百合妄想」担当キャラ●


この「ゆるゆり」という作品、メインヒロインは4人+αなのですが、格段に渦の中心になっているのがリボンの少女京子です。バカです。
京子は好きな魔女っ子ヒロインがいて、それに似た後輩のちなつに猛烈なアタックをかけます。バカです。
あんまりにも暴走する事が多くついていけないので、みんな周りの人間は放っておきます。バカです。
 
そんな京子のバカっぷりと、周囲のズレた感覚を楽しむテンポのいい作品なんですが、実質京子が好きなのはちなつではなくて、魔女っ子ヒロインなわけです。ここは「イチャコラしている」だけであって、別に百合的な感情はありません。
で、京子を勝手にライバル視している綾乃というキャラもいますが、綾乃はもう執拗なまでに京子にくっついてまわるんですよ。
その執拗さがある意味視点を変えると百合っぽいですが…現時点では普通の関係です。
 
おっとこれでは百合にならない…。
そこで百合の形式をばばーんと打ち立てるキャラが必要になります。「女の子が好きな子」ですか?いえ違います。

女の子同士をカップルにして妄想する子です。
「らき☆すた」の田村ひよりの位置に似ていますね。ひよりんも相当にいい感じの子でしたが、こちらの千歳さんは、この作品の百合度を上げるために意図的に配置されたキャラクター。かなりこのへんのバランス計算されています。
 
本質的な百合がないのに百合度があがるってのも変な話ですが、これすごく上手い手です。
というのも、たとえば「プリキュア」なり「けいおん!」なり、色々な作品の中に百合らしさを見いだして楽しんでいるのは、非常に二次創作的な楽しみ方なわけです。ようは「観客側」が作った妄想が百合なわけです。
それを強制的に作中キャラで行うことによって、「百合として楽しんでいいんだぜ!」と作品が全肯定。あるいは「百合っぽい視点で楽しむとより一層よいですよ」と筋道を作ることになります。
いわば、百合の形式の語り部であり、代弁者。自らが百合妄想するのはなんとなく気が引ける…という人でも「この子が妄想しているから仕方ないよね!」と笑いながら責任押しつけることも可能です。「けいおん!」のむぎなんかそうですよね。ニコニコ動画タグに付けられる「野生のむぎ」という語がなんとも面白い。
 

●世界は女の子で出来ている●

「ゆるゆり」にも、当然のごとくオトコノコは出てきません。「きらら」系列になれている人ならすんなり入れると思います。
この作品の強いところは、もうキャラクターを「属性の塊」として開き直って切り取っているところです。はっきりとキャラの担当分野が分かれているので、すごく見てわかりやすいんですよ。その分、心の機微などがリアルさを失う弊害はありますが、なんせ暴走ギャグマンガ。そんなことする暇あったらバカなこととイチャコラを描くぜっていう勢いです。
このくらい開き直って「はい、百合っぽいです!」と言われると、いい意味ですがすがしいです。多分これが、今の「百合」の新しいフィールドの一つなんだと思います。「青い花」や「マリみて」や「オクターブ」なんかが目指す、心のひだの部分の触れあいが中心である作品とは全く層が被らないです。困惑する人は切り離して考えた方が気楽に楽しめると思います。
 
とはいえ、こういう明確に割り切った作品の中でふとした触れあいが出てくると、そのギャップにドキッとするわけで。

鼻血も吹くってなもんです。
ナイス心の代弁。
 

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「百合姫」(リアル志向、心の触れあいメイン)と「百合姫S」(オトコノコ向け、ビジュアル中心)をざっくり分けたのは、大正解ですよねほんと。どっちも百合ですが、読者層が全然違うのをちゃんと計算している気がします。あ、もちろん両方楽しめる猛者はいっぱいいますが!
男のいない少女王国での「百合っぽさ」は賛否両論あると思いますが、小中学生の頃の、女の子の視野の狭さ(友人同士の世界しかしらない)を考えるとあながち間違ってないと思うのです。男子の逆もしかりで。