周藤蓮 『賭博師は祈らない』 (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

僅か四文字を書くのが重たく感じる。
「良い言葉だぞ、これは。多分帝都で一番多く使われている言葉だ。永遠になくならないだろうし、覚えておけばどこでも使える」


(中略)


「『斯くあれかし』(Amen)、だ」

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18世紀末のロンドン.賭博師として身を立てていたラザルス・“ペニー”・カインドは,ひょんなことから奴隷の少女,リーラを買うことになる.ラザルスは,喉を焼かれて声を出せず,読み書きすらできない褐色の少女を仕方なくメイドとして扱うことにする.
勝たず負けずをモットーとする賭博師と,言葉を話せない奴隷の少女のいっときの日々.第23回電撃小説大賞金賞受賞作.なかなか心を開かない少女と,「どうでもいい」が口癖の男が徐々に打ち解ける.クライマックスは,少女を救うため,チョコレートハウスでのヴァンテアン(ブラックジャック)対決.お約束の展開ではあるけど手を抜かずに描いており,とても熱い.
18世紀後半のロンドンという舞台を活かして,トリビアルなうんちくを好き勝手に解説付きで挟み込んでいるのがいちいち楽しい.コーヒーハウス,ロンドン塔,ロンドンにおける古着の流通とメイド服の発祥,近代ボクシングの興りなどなど.作者の好きなこととかオタク性が存分に発揮されていてとても良いし,個人的には本筋以上に印象に残った.森薫をはじめて読んだときを思い出した.良い作品だったと思います.