梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

会社派、土着派、エセ和僑−日中を語る際の「もう一つの倫理」−

この記事は「「中国論」の論じ方」および「「普遍性」をいかに追求するか、という課題」の続きです。だいぶ間が空いてしまいすみません。

 安田峰俊著『和僑』は、一作ごとに力をつけてきた若手ライターによる、やくざ、風俗嬢、農民など、中国にかなりディープに根を下ろして生活する日本人を取材した、本格的なルポルタージュである。本書で安田がインタヴューを行った対象、すなわち共感を持った日本人に共通する特徴とは何だろうか。一言でまとめるなら、「日本社会では生きがたい人々」これに尽きるだろう。それが望ましい結果をもたらすとか、新たな日中関係を切り開くとか、そういったお題目ではなく、ただ「そうせざるを得なかった人々」。そんな彼(女)らを日本人と中国との関係を語る切り口として選んだ本書は、前回の記事で紹介した子安著と対比すると、その「脱思想性」「脱倫理性」が際だっているように思われる。だが、それは一面的な見方ではないだろうか?

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