「悪の法則」見たよ


テキサス。喉の渇きと同様に、この街に集まる怪しげなセレブリティたちの欲望は尽きることがない。カウンセラーと呼ばれる弁護士もそのひとり。彼が遊び気分で手を出した麻薬取引がきっかけで、ひとり、そしてまたひとりと危険な罠に絡めとられていく…。

『悪の法則』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮で観てきました。

キャストがとても豪華だということとリドリー・スコット監督だということ、そして嫌な予感しかしない不穏な予告がなかなかよさげだったので観に行ってきましたがかなりガツンとくる作品でした。ひじょうに好きな作品であることは間違いないのですが、でもだからと言ってこれを「おもしろかった作品」という言葉で評してしまうのはちょっと違う気がしています。
「明日またこの作品を観たいか?」と問われたとしてもすぐには首を縦に振る気になれないのですが、でも物語の展開も細かい台詞回しもすごく気に入っているのですぐじゃないけどでもまた観たいと思うくらいには気に入っています。

観終えた日の夜に「この作品の世界にまぎれこんでしまう」という夢を見てしまうくらい強烈な印象を残す作品でした。


話はちょっと変わるのですが、大学生になりたてのころに自分の考えが大きく変わる出来事がありました。
それについてはあまり詳しくは書けないのですが、ある時期同じ場所にいたそこそこつながりのあった人が殺人を犯したのです。


わたしはそれまでずっと国と国の間には国境があるように、犯罪を犯す人と自分の間には決定的な境目があると思っていました。

その境目というのは「住む場所」であったり「人間関係」であったりとさまざまですが、とにかく自分とそういった犯罪にかかわる人たちが同じ物理的な空間、論理的な関係において交わることがまったく想像できていませんでした。生まれも育ちも田舎だったので関わる人間が少なかったことも影響しているのかも知れませんが、犯罪を犯す人たちはテレビや雑誌という媒体をとおしてのみつながることのできる別の世界にいるものだと思っていました。身近にそういう人がいなくて想像の範疇になかっただけなんでしょうけどね...。

このできごとは、それまでばくぜんと想像していた「自分と犯罪者が住む世界をへだてるもの」がじつは存在しないことを教えてくれました。

そんな境界線などどこにもなくて、この世はそういった犯罪を犯す人と犯さない人、人を殺す人と殺さない人が入り混じっているのがこの世界なんだということを思い知りました。自分のいる場所は決して安全地帯などではないし、黒い世界と白い世界は不可分な世界ではなくてこの世はグレーな世界であることを思い知ったのです。

いま思えばそんなことは当たり前なのですが、正直そのときはなんか足場がすべて消え去ってしまったような心もとなさをおぼえたことをよくおぼえています。


話を映画に戻して、この作品を観ながらわたしは自分がこういった自分の住んでいる場所の怖さをすっかり忘れていることを思い出しました。

自分の住む世界と犯罪者たちの住む世界は別の世界であると思い込み、自分の住む安全な世界に片足を残したまま闇社会に関わっておいしいところをもっていこうとしたけれど実は安全な世界なんて最初からなくて、気づいたらもとの生活に戻ることさえできなくなってしまった人の姿を見ていたら、ただただそのおそろしさに身を震わせることしかできませんでした。


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