基準を定めている法令をそのまま引用することについて

少し前になるが、半鐘さんが、今回の分権改革に伴って、条例で定める必要がある施設・公物設置管理の基準に関し、法令の規定を引用して書くことについて記載されていた。
このことについて、川崎政司『「地域主権改革」関連法』(P143)には、次のように記載されている。

条例で「省令の例による」とか「省令○条」といった形で省令を引用する方法は、省令の基準が変わった場合に自動的に基準が変わってしまい、地域で議論を行いながら決めるというプロセスを経ることができず、第1次一括法の趣旨からいって疑問があるだろう。

以前、「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」に定めのある手数料を条例で定める際に、同令を引用する形で規定してもよいか聞かれたことがある。そのときは、違法とまでは言えないが、適当ではないのではないかと答えたことがある。この考えは今でも変わっていないが、これは前掲書の考えと基本的には同じものであるように思う。
ただし、法令の規定を引用することは、その内容に関係なく国の意思をそのまま自治体の意思とすることになり、そのような考え方もなくはないであろう。その基準が従うべき基準であれば、なおさらである*1。
しかし、国の施設等について定める基準をそのまま自治体でも用いようとするのであればともかく、法令で定めている基準が、条例がよるべきものである場合等には、その法令の規定振りによっては、引用の仕方に留意しなければいけない場合もあるように思う。
また、法令の規定を引用する場合には、これまでの条例における扱いとのバランスも考える必要があるだろう。そうすると、例えば給与条例に基づく給料表は、かなり大部であるが、国と同じものとする場合であっても、条例に給与法の例によると規定している事例は聞かない。このように、実際に法令の規定を引用している例は少ないと思われるので、やはり条例できちんと定めることとするのが、普通の発想になるのだろう。

*1:従うべき基準は、「条例の内容を直接的に拘束する、必ず適合しなければならない基準であり、当該基準に従う範囲内で地域の実情に応じた内容を定める条例は許容される」(前掲書P130)とされているが、具体的にどのような事項を定めることになるのか、今一つイメージできない。