法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『STAR DRIVER 輝きのタクト』第二十二話 神話前夜

公式サイトに掲載されている鶴巻和哉インタビューに、今回と考え合わせて興味深いくだりがある。2期OPコンテを作り終えた気分を最後に問われたことへの答えだ。
SPECIAL|STAR DRIVER 輝きのタクト

「そうですね、五十嵐監督に"副部長を絶対に出して!"と言われたので、大事なところに出してます(笑)。実は最初は"いくらなんでもキツネはないでしょ!"と思ってたんですよ(笑)。でも、あとで『星の王子さま』が元ネタだって話を聞いて、なるほどね、と。『エヴァンゲリオン』にだってペンペンは出てくるわけで、そういうのもロボットアニメに必要なところなんだろうな、とあらためて思いましたね(笑)」

『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する温泉ペンギン「ペンペン」は、秘密を持っているという考察も存在こそしたが極めて少なく、実際に物語本編でもただのマスコット動物として出番を終えた。
しかし『輝きのタクト』は今回を見る限り、監督の意向でOPに登場させただけの意味合いはあったようだ。それまで本編において学園の日常場面を担当するだけで、その短い出番すら意味が弱かった部長と副部長が、実は主人公達を見つめている地球外の存在であることが示唆されている。
鶴巻和哉インタビューでは前後して、2期OP放送当時は明かされていなかったネタバレについての言及もある。

――特に、ミズノとマリノ姉妹のカットは、この後の展開を予感させるような演出になっていて。

「あそこはちょっとやりすぎかな、と思って一応、監督に確認しました。でも、オープニングが切り替わって、比較的早い段階で明らかになっちゃうので、大丈夫ですよとおっしゃっていただいて。僕は『STAR DRIVER』の最初から参加していたわけではないんで、いざ、オープニングやろうとすると、わからないことが多いんですね。だから脚本を全部読ませていただいて、世界観を把握して……。しかも『STAR DRIVER』の場合は、後半になって明らかになるネタがいくつかあって、しかもそれがドラマの重要な鍵になってくる。だからあんまりネタバレもできないし……っていう。そういう難しさは確かにありました」

『輝きのタクト』の2期OPでは、出来事の多くは直接的に描かれている。しかし、描かれた当初は意味づけがわからず、視聴者にとって謎となる。鶴巻インタビューではネタバレ扱いとなっている本編未登場のロボットも、2期放送当初は全く異なるキャラクターの搭乗機だと思われていた。
そうした方針は、『輝きのタクト』という作品全体においても同様ではないだろうか。思い返せば説明不足は多々あったが、視聴者の印象を誤誘導することには注力していない。「銀河美少年」のような重要タームでも明らかな嘘はついておらず、最初から一貫している。言葉の持つ強烈な印象に比して意味が薄く、その肩透かしぶりが使い捨ての「ネタ」と似た印象を持たせるが、厳密には使い捨てではない。
鶴巻インタビューでも『星の王子さま』がモデルとして言及されているように、視聴者を無駄な描写量で圧倒するネタアニメに見せて、実際は画面の温度が高くない寓話なのだ。描写量そのものは多くないのに、様々な物事を置きかえた結果の表現が珍しくて後々まで意味があるものとは感じさせなかったため、一見してネタアニメに感じたのだろう。放送開始時に勢いや熱を感じられなかった問題も、少しずつ描写を積み重ねていく寓話と思えば納得がいく。