ネットサービスの移り変わりとユーザーの意識

「Togetter - 「mixiを初期から使っているユーザーのmixi談義」」
「Togetter - 「ソーシャルメディアがキャズムを越えるとアーリーアダプターが抜けていく/ウェブで情報を残すということ」」を読んで。

Togetterの二つのまとめを読みながら考えてたことをつらつらと。


あるコミュニティの盛り上がりと推移


mixiに限った話ではなく、ネットで人々が集うコミュニティ全般的な話なんだけども、新しいサービスをいち早く見つけて集まってくる、いわゆる新しい物好きな人々ってのは、そのサービスでできることをいろいろと模索しながら積極的にポジティブなコミュニケーションを取る事で非常に居心地の良い場を作りだすことが多い。



これは自ら積極的にそのサービスを使って楽しもうとする姿勢によるところが大きいのだが、この盛り上がりは時間の経過とユーザーの拡大によってだんだんと落ち着いていく。

時間が経過することにより、そのサービスでできることを試し尽くした、やりつくした、新しい話題が尽きたなどの理由でそこでやりとりする内容がだんだんと少なくなっていったり(多くのネットコミュニティでは盛り上がりは数年の寿命にみえる)、後から参加してくるユーザーの性質の変化(基本的に最初に参加するほど自ら楽しもうとする意識が高く、後に参加するほど受身的に楽しませてもらおうとする)で場の温度が次第に下がっていくことによる。



ある人のあるWebサービス・コミュニティに対しての印象というのは、「どの段階で参加したか」「どういう意識で参加したか(能動的〜受動的)」「周り(観測範囲)にどういうユーザーがいたか」で決定される。


私がmixiにはまりきれなかった理由


私がmixiに参加したのはIDがまだ5桁だったころだから、そこそこ初期の段階だった。でも、それほど深くはまることは無かった。その理由としては、すでに自分が知っている現実の知人をマイミクにするという形中心で観測範囲を広げていったことではないかと思っている。



現実の知人というのは、特にネットに深い興味がある訳でもなく、そこでやりとりする必要性を特に感じていない人達。もちろん、mixiを始めてマイミク登録したりする瞬間にはそれなりに興味を持ってて、ちょっと日記をつけたりもするけれど、そのうち更新は止まってしまう。誰かが何かを更新しなければ、何も起こらないのはどのネットサービスでも同じ。



mixi以前に体験していたパソコン通信(NIFTY)では、参加してるユーザーのコミュニケ−ションに対する熱意が非常に高かった。当時は巡回ソフトを使って自分が読み書きしているフォーラムなどのログを落とし、同時に書き込みも自動で行うという流れで、何か書けばすぐに反応があり、それに返信をアップするために再度巡回すると、さっきアップした発言にもう返信があるという状態だった。

周りに熱心にコミュニケーションを取るユーザー達がいるおかげで、パソコン通信には当時おおいにはまり、そこで知り合った人も大勢いた。



一人で何かを発言するだけでは何も起こらず、それに対して誰かが反応することで盛り上がるネット上のコミュニティにおいては、参加しているユーザー、特に自分の周りのユーザーの熱意というのは非常に重要で、周りが盛り下がっている中で一人で盛り上がっていても何のコミュニケーションも生まれない。



私の場合は、パソコン通信からスタートして、ホームページ作成〜ブログへの移行、さまざまなwebサービスへの参加、ネットゲームのプレイなど、多くの高い熱意を持つユーザー達が集まるネット上の場を移り渡って来たせいもあって、自分の現実の知人を中心にコミュニティの輪を展開した自分にとってのmixiにはどうにもはまる事ができなかった。


同じ様なSNSのfacebookでは、現実の知人ではなく熱意をもってそうなネット上で知っている人達を友達登録する形で参加しているので、他のネットサービスの時同様、非常に楽しく使えている。


ソーシャルメディアがキャズムを超えるとアーリーアダプターが抜けていく現象


アーリーアダプターはもともと新しい面白そうな物を探し求めているような人々ですから、あるソーシャルメディアがその人にとって永続的に使い続けて行くモチベーションを維持しうるもので無かったのなら、どんどん次の面白そうな場所・サービスへと移り渡って行くのはごく当たり前な状況。


ネット上で楽しい場所、盛り上がっている場所というのは、ユーザー層の移り変わり、話題の持続、他の類似サービスの台頭でどんどん移り変わって行くのは過去の歴史の通り。



初期の盛り上がりがキャズムを超えて、より大きな層へと広がる普及の段階と、そのサービスが広く普及したのちに長い間ずっと使い続けられてそれが持続するという定着の段階はちょっと違う要素が働いていそう。

普及段階では目新しさ・面白さなど話題性が重要で、定着段階ではユーザーフレンドリー・サービスの安定度・モチベーションの維持などが重要というように。


ネットインフラとしてのサービスの枠


そういうアーリーアダプターの移民とは別に、あるユーザーにとってあるサービスなりソーシャルメディアなりがその人にとって無くてはならない存在となって、日常的にずっと使い続ける状況になると、そのサービス・ソーシャルメディアがその人にとってのネットインフラとして定着したことになる。

web、メール、掲示板、チャット、IP電話、メッセンジャー、ブログ、マイクロブログ(≒twitter)、SNS、wiki、動画共有、動画配信、音声配信などなど、今簡単に思い付けるだけでも結構な種類があり、それぞれ普及の程度の差こそあれ、どのサービスもじわじわと普及率を上げていることは間違いない。



ある企業の提供している一サービスではなく、こうした種別の枠としてのサービスは、上述のものを中心にインターネットが普及しはじめてからまだ15年程度な現在、じわじわと大枠は出そろいつつあるように思える。もちろん、その枠の中でどのサービスが一番普及しているかどうかはいろいろ移り変わっていくとは思うが。


webにおけるストックとフロー


時事ネタなど次から次へと消費されていくフローな情報が多い中、今のwebにおいて足りないと感じられるのはストックな情報。

webを長い間見て来ている人なら何度も感じたことがあるであろう「この議論、何回目だよ」という話も、よくある議論ならその論点をまとめたストックの情報がきちんと整理されていれば、そこへ誘導することで無駄に何度も同じ議論を繰り返す必要は無くなる、かもしれない。無くならないとしても、毎回同じ説明を繰り返す手間は省ける。



紙媒体の書籍はあるテーマに沿って書かれており、ブログで言う所のエントリが数十個くらいまとまったような形でパッケージングされている。webの情報もこうしたあるテーマに沿ってまとめて記述されているパッケージが今後重要になってくるのではないだろうか。

このパッケージングされたストックな情報は、見方をかえれば電子書籍的なものでもある。webで公開されていれば、ソーシャルブックマーク、ブログへの引用、リンクによるある箇所を指定しての紹介など、webのソーシャル的なサービスの活用も可能。



このwebにおけるストック情報は、何かストックを作るのに便利なツールが出て来て増えるのか、それとも人の意識が情報をストックする方向へと向いて人力的にまとめる方向へと進むのか。

NAVERまとめみたいに報奨金制度でモチベーションを上げる展開も今後増えそう。


追記:もらった反応へのレス

で、アーリーアダプターが去った後は誰が支配するか知ってますか?mixiは主婦が支配しました。http://spedr.com/2nv1q (※コミュニティメンバー数順検索)

はてなブックマーク - ryuzi_kambeのブックマーク / 2010年12月7日

mixiの場合、主婦層でハマってる人が多いってのは結構言われてた気がします。子育てなどでなかなか外を出歩けなくてひきこもりがちな主婦が同じママさん同士でやりとりするのに使われることが多いと。

こういう場合だと、世界中に向けて発信したい!ってよりかは、同じ境遇の人とか近くにいる身近な知り合いとクローズドにやりとりしたいという形でしょうから、mixiみたいなSNSがうまくマッチしてそうですね。


サービスって使うだけじゃなくて、作る方にならないと絶対にダメなんだと最近わかってきた。気づくの遅いけど、何事も、何かをはじめるのに遅過ぎるということはないので、がんばりましょう。がんばれ俺たち。

はてなブックマーク - kskmeukのブックマーク / 2010年12月8日

サービスを作る方にってのはあまり考えた事なかったけど、コミュニティはどんどん積極的に作ってなんぼだとは今までの経験から痛感してる。どちらにせよ、自分の思い描く場所を作るには、どんどん自分から動かないとってのは間違いない。


ストック情報が増えたりとか場所が分かりやすくなると、昔から居る人は居心地良いかもしれないけど、新規の人が入って来なくなりそうな気がする。自己顕示欲求とかコミュニケーションしたいだけの人とか。

http://b.hatena.ne.jp/yokomichisizuka/20101208#bookmark-27114305

ストック情報ってのは、昔から居る人達ためだけの物ではなくて、後から入ってくる人達のための物でもあって。古くから参加してる人達の間で蓄積された経験則、議論の末に得たルールやマナー的なもの(ごく一部の範囲でのマイルールとは違うので注意)などなど。これらのストック情報はあるサービスやコミュニティに参加する人達全体にとって共有すべき情報なので、それがうまくまとめられていて、新規の人でもすぐに見つけられるというのは望ましい状態。



自己顕示欲求が高すぎたりやコミュニケーションしたいだけで周りに配慮できなかったりって人は、そもそもこの手のストック情報を参照することなしに突撃してきて、盛り上がって、すぐに居なくなりそうな気も・・・。