海外ウェブストレージを利用したコミックの無断配信を初摘発、とその背景

インターネットで画像などのデータを保管できるオンラインストレージサービスで人気漫画の画像を配信したとして、警視庁ハイテク犯罪対策総合センターは8日、秋田県潟上(かたがみ)市の男子学生(18)を著作権法違反(公衆送信権侵害)容疑で逮捕したと発表した。痕跡が残りにくい海外のオンラインストレージを悪用した漫画配信の摘発は全国で初めて。

違法配信:学生を容疑で逮捕 ネット通じ人気漫画の画像を - 毎日jp(毎日新聞)

逮捕容疑は2010年8月15日〜9月3日、「ぬらりひょんの孫」「SKET DANCE」の単行本など3冊の画像をウェブストレージにアップロードし、不特定多数のユーザがダウンロードできる状態にした疑い。

TBS Newsiのニュース映像を見ると、「ぬらりひょんの孫」11巻、「SKET DANCE」14巻の他に「エデンの檻」8巻が写っている。

男子学生は、オンラインストレージにアップロードしたコミックへのリンクを紹介するブログ「Manga.jp」を2010年3月に開設、「ワンピース」など人気漫画をはじめ、ラノベ作品など約260タイトル、約3800冊の画像ファイル*1がダウンロードできるよう、オンラインストレージサイトへのリンクを掲載していた。

Manga.jpについて調べてみると、このブログはGoogleのブログサービスBloggerを利用し、画像ファイルをアップロードしたオンラインストレージサイト MegaUploadへのリンクをインデックスしているブログであった。なお現在、このブログは削除されており、以下の画像はGoogleキャッシュのスクリーンショット。最終更新は2010年10月2日となっている。2011年2月2日のキャッシュ取得時点で、カウンターは250万を超えていた。

男子学生は、調べに対し「他のサイトで漫画を入手していた。自分でもやってみたかった」(時事ドットコム)、「違法なことだとはわかっていたが、逮捕されるとは思わなかった」(TBS Newsi)と供述しているという。

日本経済新聞によると、雑誌でも紹介されていたとのこと。未だにこの手の雑誌ってあるのね…。はてなブックマークを見てもそこそこ人気があったことが伺える。

また、毎日jpによると、男子学生はこのブログから広告収入約27万円を得ていたという。同ブログのキャッシュを見る限り、GoogleとAmazonの広告が貼り付けられている。FNNニュースの映像にもGoolge Adsenseの小切手が写っていた。

ただ、男子学生がこのブログで得ていた金銭は果たしてアドセンスやアソシエイトだけなのか、というと疑問が残る。割と有名な話だとは思うんだけど、この手のウェブストレージは、ダウンロードされるごとにアップローダーにリワード(報酬)を支払うプログラムを用意しているところが多い。この男子学生が利用していたMegaUploadにもリワードプログラムが用意されている。

1回ダウンロードされるごとに1リワードポイントがたまり、各種報酬が受け取れる。金銭に関わるところでは、10万ダウンロードで100ドル(+年間プレミアム会員)、50万ダウンロードで500ドル(+生涯プレミアム会員)、100万ダウンロードで1,500ドル、1,000万ダウンロードで10,000ドルが支払われる。

こういうプログラムからも利益を得ていたんじゃないかと思われるのだが。

なお、MegaUploadと同様に世界的に人気のウェブストレージサービス RapidShareも同様のリワードプログラムを提供していたのだが、著作権団体から著作権侵害のインセンティブになっているとの批判を受け、同プログラムを終了している。

今まで問題視されてきたP2Pファイル共有の問題なんかと異なる側面としては、こうした利益が関わってくることがあげられる。場合によっては、営利目的の著作権侵害と捉えられかねないかも。

ウェブストレージを利用した著作権侵害

先日公表されたCODAの「ファイル共有ソフトの利用に関する調査」でも、ウェブストレージに関する質問項目が盛り込まれたりなんかして、権利者側もウェブストレージを利用した著作権侵害の広がりを危惧しているのは間違いない。

まぁ、著作権団体の動きを見ずとも、音楽やコミック、ゲーム等々、気になった作品を検索してみたときに、当該作品が違法にアップロードされているであろうウェブストレージへのリンクや、それをインデックスするブログやフォーラムが上位に、もしくは数ページ内にヒットしたり、なんてことが珍しくなくなってきた。そりゃ手を打たねば、ともなるよね。

今回摘発を受けたブログに関連していろいろ調べてみたけれども、ブログそのものは削除されていても、未だにMegaUpload上から削除されていないファイルも多々ある。少なくとも、YouTube等のような簡便な侵害ファイルの発見方法、削除手続きは用意されていないだろう。対応の難しさから個人の摘発へ向かったというところもあるのかもしれない。

*1:おそらくZIPでアーカイブされたもの