読まれる記事を書くために、文章技術よりもはるかに有効なこと

ブログ記事をより多くの方に読んでいただくために、
小手先の文章テクニックや
場当たり的なアクセス稼ぎテクニックなどよりも
はるかに効果のあること
があると思います。


それは、経営戦略の基本中の基本である、需給バランスに徹底的にこだわることです。
すなわち、需要があるのに供給が不足している記事を書くのです。


本来、「需要があるのに供給が不足している」というのは異常な状態です。
なぜなら、みんなが読みたがっているのに、誰も書いていない記事を書けば、たくさんの読者を獲得できるのは明らかだから、そういう記事は瞬く間にたくさんのブロガーに書かれ、需給はすぐにバランスしてしまうはずだから、
そんな状態は、本来アリエナイはずだからです。


したがって、「需要があるのに供給が不足している」という異常な状態は、
なにか「供給を阻害している要因」がある場合にしか生じません。


なので、取るべき戦略は、


記事の供給を阻害している要因を見つけ出し、そこに記事をぶつける

というものになります。


具体的には、以下のような戦略でブログ記事を書くと、あまり文章が上手でなくても、多くの方に読んでもらえる傾向があると思います。

(1)ブログを書くのが割に合わない人たちだけが知っている情報を書く
(2)その情報を知っている人は立場上書くことができないという情報を書く
(3)通常アリエナイ組み合わせの知識or経験がないと書けない記事を書く
(4)本屋とネットを探しても見つけられなかった情報を書く

(1)ブログを書くのが割に合わない人たちだけが知っている情報を書く


たとえば、業界内でそれなりにブランドを確立しているレベルのITベンチャーの経営層の人達は、とても忙しくてブログを書いているヒマはないし、あったとしても、そういう人の時給(正確には機会費用)*1はとても高いので、ブログ記事を書くのは、その時給に見合うだけの自尊心の満足か、ビジネス的メリットのどちらかがないと、割に合いません。経済学の言葉で言うと、そういう人達は「機会費用」が高いわけです。


ところが、そういう人達は、そもそも日常の仕事でもプライベートでも十分に自尊心は満たされています。
日々、重要な顧客から一目置かれ、重要なプロジェクトの重要な会議に参加し、重要な意思決定を行い、業界の重要人物と打ち合わせし、上層に近い有能な部下達に指示を出していますから、わざわざブログ記事を書いてネットユーザに認めてもらわなくても、自尊心は十分に満たされているのです。


また、そういう人達が、自分のビジネスに具体的メリットをもたらすようなブログ記事を書くのは、かなり難しいです。ブログプロバイダーを運営している会社の社長ですら、サイトの立ち上げ期以外は、ブログを書き続けるのがだんだん割に合わなくなって、更新頻度がどんどん落ちていったり、だんだん内容のうすい、スカスカのブログ記事になっていったりします。


だから、この場合のブログ記事の供給阻害要因とは、
「機会費用が高すぎて、供給するには採算が合わないこと」
となります。


なので、この阻害要因を狙ってブログ記事をぶつけると、多くの読者に読んでいただけます。


先ほどの例で行くと、「業界内でそれなりにブランドを確立しているレベルのITベンチャーの経営層」の人達が、経営会議で話しているような視点で書いたブログ記事は、多くの読者に読んでいただける傾向にあります。


たとえば、会社の経営陣が集まって、人事採用や昇進の方針決めをする会議で出てて思いついたネタには、以下のようなものがあります。


未来の転職が、過去にさかのぼって現在の自分を有能にする

「努力すればスキルが向上して上に昇れる」というのは幻想


それから、会社の経営層が出席する会議で頭の悪い発言を繰り返し、会社の上層部からダメ人間のレッテルを貼られた人達の様子をネタにしたものが以下の記事です。


「この人無能だな」と思われる人の3つの特徴


これは、一種のアービットラージでもあります。情報のあるところ(経営会議)から無いところ(ネット)へ情報を輸出することで、さや取りをやってるわけですね。


なお、ここではたまたまITベンチャーの経営層というケースを取り上げましたが、「ブログを書くのが割に合わない人たちだけが知っている情報」であれば、金融だろうが政治だろうがなんでもよいので、いろいろな応用パターンが考えられます。



(2)その情報を知っている人は「立場上書くことができない」という記事を匿名(コテハン)で書く


たとえば、以下の記事に書かれたような「実情」を実感として知っている人は、立場上、それを書くことができないという矛盾があります。


身も蓋もない仕事の法則


この記事で箇条書きされたようなことは「実情」ではあるものの、社員の前ではとても公言できない、会社の役員飲み会のぶっちゃけトークで出てくるような放言です。
公言すると社内で人望を失いかねない物言いです。


もちろん、匿名であればこういう「実情」を書くことも出来ますが、こういう実情を知っている人間は、そもそも匿名でそういうことをネットに書く動機もメリットもありません。こういう実情を知っている人達は、仕事で自尊心を満たされているし、匿名で書いたところで、自分のビジネスにメリットをもたらすことはできませんから。
こういう理由で、この手の情報は需要があるのにあまり供給されないわけです。


この「知っている人は立場上書くことができない」というパターンの情報は、ほかにもいろいろあると思います。お医者さんなんかにも多いんじゃないかと思ったり。



(3)通常アリエナイ組み合わせの知識or経験がないと書けない記事を書く


たとえば、哲学っぽい本をいろいろ読みあさっている人はありふれています。だから、哲学っぽいテーマのブログ記事はネットにたくさん書き散らされています。


また、ビジネスの現場でビジネスモデルをバリバリ組み立てているような人も、めずらしくありません。だから、ビジネスネタも、ネットにあふれています。


しかし、哲学っぽい本をあれこれ読みあさりながら、ビジネスの現場でバリバリとビジネスモデルを組み立て、なおかつブログを書いているという、3つを兼ね備えた人種というのは数が限られます。


なので、哲学っぽい本をある程度読みあさっていないと書けない記事で、かつ、ビジネスの現場で現役で活躍している人の感覚が分からないと書けないような記事というのは、供給が不足しています。


もちろん、ビジネスの現場にいる人で哲学書を読む人もときどきいますが、たいていはある特定の哲学者のファンであり、「哲学っぽい本をあれこれ読みあさる」というような読み方をするのは、ビジネスにあまり興味のない人に特有の読み方なのです。


イメージがわくように、もっと具体的な言い方をすると、たとえば、ざっくりでいいので、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなどのギリシャ哲学から、中世のアキナス、スコトゥス、オッカムを経て、デカルト、ルソー、カント、ヘーゲルにいたる近代哲学の大まかな流れ、そして、その「近代」的な安直な理性信仰への反発と解体というニーチェ的なるものからポストモダンへの流れをざっくりと把握しているくらいには哲学っぽい本を読んでないと書けないような記事で、なおかつ、仕事やビジネスの現場感覚をある程度もっていないと魅力的な記事に仕上がらないような記事は、供給が不足します。
たとえば、以下のような記事です。


「好きを貫く」よりも、もっと気分よく生きる方法


また、もう一つの例として、「プログラミング×ビジネス&経済」というパターンもあります。


ビジネスモデルをバリバリ組み立てるような人の中には、経済や社会全体を俯瞰する視点を持つ人間がけっこういます。
なので、経済や社会を俯瞰するような記事は、ネットにたくさんあります。


また、プログラマーの視点から社会やビジネスをとらえた記事も、ネットにはたくさん供給されています。


しかし、プログラマーの多くは、テクノロジーの視点から社会全体を把握しようとする人が大半で、経営者やビジネスマンのような視点から、社会を俯瞰するようなタイプが少ないです。


なので、コンピュータープログラマーの現場感覚と、ビジネスパーソン的な経済の俯瞰的感覚の両方を融合させて書いた以下のような記事は、供給が不足することになります。


現代という時代は、どのようなプログラミングを求めているのか?

「IT投資」という考え方そのものが間違っている

プログラミングとは経営判断の集積である


というわけで、通常アリエナイ組み合わせの知識を持っていたとしたら、このパターンはなかなかに有効です。



(4)本屋とネットを探しても見つけられなかった情報を書く


これは、阻害要因が不明だけど、供給されていないことだけが分かっているパターンです。


googleでさんざん検索して、なおかつ、池袋のジュンク堂の専門書のコーナーを片端から読みあさっても、自分が欲しい情報が得られないときってありますよね。なぜかはしらないけど、その情報がどこにもない。
そういうときは、自分でいろんな論文を解析して、メーカーに電話で問い合わせて、自力で答えにたどり着かなきゃならなくなります。
そういう情報は、いわば自分で調べて、自分で作りだした情報であって、本屋にもネットにもない情報だから、そういう情報は、供給が不足どころか、供給がない状態なわけです。
こういう、供給がないことが確かめられている記事を書くと、それなりに多くの人に読んでいただけるようですが、後述するように、これには注意点があります。


たとえば、私は花粉症なのですが、医者からもらった薬がちっとも効きません。
ネットによると、その薬の二重盲検法での臨床成績は「改善率50%」とあります。すなわち、半分の人は薬が効かず、しかも、残り半分も、完全に症状がなくなるわけじゃないというわけです。他の薬でも、改善率が100%の薬など無いし、完全に症状がなくなるのとはほど遠い状態です。なので、多くの人は、薬だけではどうしても症状が出てしまうと思われます。
なので、薬を飲んでいてもマスクをすることになるわけですが、私の場合、マスクをしていてもやっぱり鼻づまりが酷い。
どうもおかしいと思って、googleで検索してみても、さっぱり情報が引っかからない。
しかたがないので、ジュンク堂の専門書のコーナーへ行ったのですが、そこでいくら本を読みあさっても、やっぱりマスクをしているのに鼻水がずるずる出てくる理由が書かれている本を見つけられない。
なんじゃこりゃ、いったい何の陰謀だよ、と思いながら、しかたがないので、アレルゲンの分子構造や花粉の微細構造、アレルゲンを測定した論文などを読みあさるうち、オイラ的には衝撃的な結論に達する。
なんと、花粉マスクは花粉は防げるけど、砕け散って細かくなった花粉破片はだだ漏れ、という詐欺みたいなことになっているとしか考えられない!
ちきしょう!騙された!この詐欺野郎め!とか、花粉マスクメーカーに悪態をつきながら、花粉破片も除去できるマスクってないの?いやいや、それどころか、この調子では、花粉除去をうたっている換気口フィルターもやばいんじゃないの?花粉除去の掃除機は大丈夫か?空気清浄機は?と調べはじめたわけです。


で、せっかく調べたのだから、他の、薬があまり効かないタイプの花粉症患者の方にも調べたことを伝えるために、以下のようなブログ記事にしたわけです。*2


あまり知られてないけど、すごく効果のある花粉症対策まとめ


ただし、本屋でもネットでも見つからなかった情報をブログ記事にすると、異様に長くて読みにくい記事にならざるを得ません。
その理由は、調べた本人が、その分野の専門家ではなく、情報に「権威」がないからです。


たとえば、ボクが医者か花粉アレルゲンフィルタの研究者であれば、結果だけ簡潔に書いた方がいいと思います。なぜなら、それは専門知識に裏付けられていることが暗黙の了解となっているので、詳細がわからないまま鵜呑みにしても比較的安全な情報だからです。
しかしながら、まったくの門外漢である私が、花粉アレルゲンの除去について結論だけを簡潔に書いても信憑性など皆無ですから、読者はその情報を信用していいのかどうかがわからないので、その記事の情報は役に立ちません。


そこで、ぼくの推論が正しいかどうかを読者の方が検証できるように、自分がその結論に至った道筋を、使用したデータや論文の出典と共に、逐一ブログ記事のなかに埋め込む必要が出てくるのです。そうすることで、その記事は、書いた人間の権威に関係なく、信用できる情報かどうかが判定できるようになり、情報としての価値がでてくるのです。


また、これと同様のパターンの記事に、以下のようなものもあります。


思考の速度でパソコンを使う技術


これも、ネットや本屋でさんざん調べたのだけど、ボクが欲しい情報が見つからなかったため、自分で調べて作り上げたパソコン技法をまとめたものです。
そもそも、パソコンのキーボード、マウス、IMEって、デフォルトのものはかなり効率が悪いです。そこで、最初はemacsやviのキーアサインで使っていたのですが、emacsやviのキーアサインも、かなりの無駄があることがだんだん分かってきた。また、emacsやviのキーアサインは、必ずしもプログラマでない一般ユーザの日常的なパソコン操作には、必ずしもフィットしていない。そこで、日常的なパソコン操作を最高能率にするようなパソコン操作技法や、それを開発するための戦略が必要になったわけです。そうして編み出した戦略と技法をまとめたものが、上記の記事なわけです。


たいていの情報は、ネットか本屋に落ちていますから、ネットにも本屋にもない情報に出会うのは、偶然に依存するところが大きいです。なので、このパターンは、たまたまそういう偶然に出会ったときに使えるパターンですね。

*1:本来時給で報酬をもらうような人達ではないが、あえて時給に換算したとすると、の話

*2:ちなみに、その記事を書いたあとにお医者さんや薬剤師さんから聞いたうわさなどを総合すると、花粉症には処方薬のステロイド点鼻薬がすごく効くっぽいです。不運にも、私はそれを処方してくれるお医者さんに出会ったことがなかったのですが。また、花粉症の薬は相性の問題があるので、効かなければ効く薬に出会うまで次々と薬を変え続けるのがよいっぽいです。来年は私もそうしてみます。

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