がん患者に治療の選択肢はないのか

九州に旅行に行ってきた。親戚と一緒に。
当初免疫低下もあって、疲れることに対してすごく恐怖感があった。
が、ペースをかなり落とし無理せず行動することで、随分気分転換になった。

以前旅行したときと比べて、随分自分が変わってしまったことに気づいた。
なんというか・・・まったく別人の自分がいる。全てではないけど。
焦ったり、イライラしたり、そういうことが格段に減った。

こんなに風景が違って見えるのか。
前は博多の町は好きではなかったのに、今はこんなに近く感じる。

今回は漢方を営む親戚に会いに行った。
そこでより詳しい病状を説明したのと、がん治療の現状や今後の治療方針について聞いた。

ここに今から書くことは、全て誰かにとっての真実であるが、あなたにとっての真実とは限らない。
しかしこれが今日のテーマである。

事実とは何か。今日のがん治療に事実のがあるのか。
そして、事実が見えないとき、事実を知って失望するとき、人は何が出来るのか。



親戚の漢方医は、独自の方法で編み出し、一人一人オーダーの漢方を処方する。
大手メーカーの物の様に画一的に効能を謳うのではなく、実際中国に行って原材料から仕入れし、品質保持にも努めているようだ。
顧客リストには、外科医も多い。それこそ国立・私立問わずのがん専門医がごろごろいるらしい。
また、放射線専門医も。

その医師達は、患者の手術または放射線治療は行っても、自分や家族の癌は絶対に外科・放射線治療はしないらしい。
漢方医に漢方を処方してもらい、実際完治した人もいる。
(もちろん、残念ながら死を迎えた人もいる。)

当初、私の癌は相当危なかったらしい。
漢方医に診断をしてもらったとき、「もうちょっとで全身に転移して」手の施しようがなかったと、あとで聞かされた。
(実際西洋医学的にも危なかったと思う。)

そして、今の抗がん剤治療・放射線治療についてアドバイスされた。
「これからどうなるか分からんけど、放射線治療は薦められない。抗がん剤治療は漢方の力で何とか免疫を持ちこたえさせられる。抗がん剤治療終わって2〜3ヶ月後にはもっと免疫を上げることが出来る。でも放射線だけは組織を焼いてしまう。しかもたいてい範囲が広い。そうなったらもう体は戻せない。PETの診断で必要がなければ放射線治療はやめておいたほうが良い。」

言いたい事はわかった。私も放射線治療には抵抗があった。

組織を焼く。
見た目には変わらないらしい放射線治療。しかし実際は長時間すれば発がん性もあるし(放射線だからね)、組織そのものを変化させるので、皮膚は伸びづらいし放射線治療したところは外科的治療が今後は出来ない(不可能ではないが極力傷をつけることは避けてほしいといわれた)。

放射線治療をした後では乳房の再建は難しいだろう。
これも不可能ではないというが、日本でおそらく最高技術の外科手術が必要ではないだろうか。
そして、仮に外科手術した後でも最新のケアが必要になる。

次の漢方医が言った言葉には、少なからず衝撃を受けた。
「抗がん剤治療しても2割くらいしか5年生存できないし、最終的には死亡している−」
「でも私が調べたデータ(→参照はこちら)では、抗がん剤をしないと予後が悪いとありましたよ」
「そのデータの出元は?日本では正確なデータを探すのは難しい」

それは私も感じていた。
抗がん剤で助かる命もあれば、失う命もあるだろう。
それくらいきつい治療だ。
しかし抗がん剤によって死んだというデータを、今のところ見つけていない。
私のリサーチ不足かもしれないが。

そこでふと思い出した。
「日本の医学部では、死を前提に教育していない。死=医療の敗北という考えが根底にあるから。だからデスエデュケーションをしない。そして患者の気持ちやQOLが置いてけぼりになる。」
リハビリの先生に言われた言葉を。

私達は100%死ぬ。
だから人はそれぞれに生き方を求める。

でも癌になって思った。「がん患者は生き方を選択できない」のではないかと。

日本では「標準治療」という名の下に、画一的な治療が施される。
外科手術、抗がん剤、放射線治療。この3つだ。
標準とは「最低限これはしますよ」という風に聞こえるが、今私が体験しての感想は「これ以外はやらない、認めない」ということだ。
一つは、実際いかがわしい治療法から患者を守るということもある。代替医療はデータがそろっていないことが多い。
しかしもう一つは、医者が告訴されたりしないように、さらには国として責任を取りたくない、ということだと思う。(私見です。誤解なきよう。)

癌はオーダーメイドの病気だ。
人それぞれにタイプも免疫も違う。個体差があるから。
しかし今日本で行われている治療は、画一的かつ、各医師の方針によりかなりのばらつきがある。なおかつ、標準治療「以上」の治療、真に患者側にたった治療を目指す医師は数が少ないだろう。

がん治療の中でも特に先進的な分野は別にして、現場で行われてる治療にはかなりの差があるはずだ。

帰ってきてデータを調べた。
[http://ganjoho.jp/public/statistics/backnumber/2009_jp.html:title=2009年癌統計 ]
この一覧表を見て違和感があった。
なぜ、毎年の死亡者数がないのか。
そして、5年生存率とあるのに97〜99年の2年間のデータなのか。
抗がん剤の治療の変化などの条件は別途上げればよいことだろうに。

もう一つデータを。
愛知県がんセンター2005年データ
このデータは古いが、全体の死亡者数がある。
これによると、2005年1年間時点(全ての癌を合計している)で、男性で200万人近く、女性は130万人近くが死亡していることになる。
部位別はそれぞれ見てほしい。

しかし、違うデータベースでは結果が異なっている。
癌の統計、がん死亡率・がん検診受診率の国際比較
このデータでは、2005年時点で日本人男性は年間140万人、日本人女性は60万人と上記データと著しく異なっている。

漢方医の発言元データが知りたかったが、聞けなかった。
おそらく「癌と戦うな」で有名な近藤医師のデータが出元だと思われる。
彼の本で今読みたいのは次の本だ。読んだらまた記事を書こうと思う。


抗がん剤治療の生存率が掲載されているそうだ。
かなりきつい。
私の寿命が分かってしまうから。
しかし、読もうと思う。

また、アメリカの新しい癌研究では、漢方に対する研究成果も報告されている。
アメリカ漢方最新事情
「2007年度のNCIのがん研究予算は1.2億ドル(約120億円)超。そのうち、70%以上にあたる約8,800万ドルが栄養学的なアプローチによる補完代替医療に費やされている。」
抗がん剤開発もするが、まったく違う方向からもアプローチしているようだ。

日本ではどうなっているのだろう。進んでいるのだろうか。
おそらく、いかがわしいものからきちんとデータ収集されているものまでピンきりだろう。
※ちなみに親戚は学会にデータを提出しているらしい。

さらに近藤医師の著書から驚きのデータがあった。
データで見る抗がん剤のやめ方始め方
「生存曲線」というグラフがあるので見てほしい。
肺がんの手術のみと手術+抗がん剤では、生存率は同じなのだ。

これはどういうことなんだろう。このデータは事実なのだろうか。


私は漢方でも西洋医学でもスポーツでもダイエットでも「これさえやっていればOK!」的な文句を謳っているものは信じない。
私達の体はシンプルがゆえに(単純ではない)繊細で複雑な機能を持ち構成されていると思っているから、一つの「方法」で健康になるのはおかしいと思っている。
同じ理由から、癌も複合的な理由になって罹ってしまったと考えている。
実際、癌にかかる理由は遺伝子的理由は5%で、生活習慣的理由が30%といわれている。他の理由も大体5〜10%前後。
一つの理由だけで癌にならない、と言ってしまっていいのではないだろうか。

また、漢方医はこんなことも言っていた。
「癌とは腫瘍であり、胞子のようなものでもある。外科手術は体に傷をつける。万一癌を切ってしまったら、そこから爆発的に癌が胞子を飛ばすように全身に散らばる。だから外科手術はうまい医師にしてもらわないとだめ。」

私の胸がへこんだのも、判る気がする。
相当の肉をとった。ガンを残さないために。
これは当てずっぽうでは切れない。マンモグラフィの読映技術、CTから読み取る技術、正確な画の位置と範囲を見極め、それぞれの映像技師がそれを下支えする。

だから今日のyahooのニュースは少なからずショックだった。
CT診断を格安・中国へ下請け…国内医師ら懸念

医師不足などの影響で、患者の検査画像の診断をインターネットを利用して外部に依頼する医療機関が増えるなか、一部では格安サービスをうたい中国の医師への委託も始まっている。  これに対し、放射線科医らで作る日本医学放射線学会などは、診断は日本の医師免許を持つ者が行わねばならないとの指針を作成。8日から横浜市で開かれる学会でも議論になりそうだ。  こういった仕組みは遠隔画像診断と呼ばれ、病院や診療所で撮ったCT(コンピューター断層撮影法)やMRI(磁気共鳴画像)の画像を、放射線科医のいる施設などに送り、報告書を返信してもらう。  中国人医師による画像診断サービスを行っているのは「日本読影センター」(大阪府)。日本人医師によるサービスの傍ら、2008年に中国への依頼を始めた。CTなどの診断を外部に依頼した場合、日本国内では1件当たり3000円前後が相場なのに対し、700〜900円で請け負う。結果は日本語に翻訳された報告書で依頼した医療機関に返送される。  現在は総合病院や診療所など8施設と契約して、月約800件を中国側に依頼。吉村英明社長は「契約している中国人放射線科医は約15人おり、診断力はあらかじめテストしている。ただし、日本の医師免許はないため、『参考所見』という位置づけ」と話す。  厚生労働省医事課は「最終的な診断は依頼した日本の医師が下すとすれば、医師法に触れるとは言えない」との見解だ。  しかし、日本医学放射線学会などは、診断の質や個人情報の安全が保証されない可能性を強く懸念。「画像診断は医療行為であり、医師でない者(外国の医師免許のみ有する者も含む)が行うことは日本の法規に違反する」などとする指針を昨年11月に作成した。江原茂・岩手医大教授は「実態は、業務として日常的に日本の医療の一部を請け負っている。知識や技量も不明で、診断の質が保証できない」と話す。  これに対し、吉村社長は「個人名は消すなど情報の取り扱いにも注意を払っている」などと学会の指針に異議を唱えており、同学会で議論になりそうだ。  国内のCT、MRIの合計数は約1万7000台と、人口当たり先進国中で最も多い。一方、専門医は5000人程度にすぎない。民間調査会社矢野経済研究所によると、遠隔画像診断を利用する医療機関は昨年、1944施設と、10年で8・2倍に増えた。業者も50前後に上るとみられる。

中国に外注することがショックなんじゃない。
経費の節減や技術がレベルを超えていれば問題のないことだ。(中国との連携がどうされるかは問題だが。)
厚生労働省の責任の所在のなさがショックだった。
かつて薬害エイズのような「事件」が公然と行われていた省である。
今はそうではないと信じたいが。



事実はいったいどこにあるのだろう。
私達はいったい、どうやって生きていけばいいのだろう。
いったん病気になったら、この国では「捨てられる」ということなのだろうか。


しかし、冒頭に書いたように、私の心はざわつかない。
「患者が賢くならなければいけない」
そう強く思う。
賢くなるには、現実のいやなこと、怖いこと、そう感じる自分の気持ちと対峙しなければならない。

私の命は、ただ捨てられるためにあるわけじゃない。
きちんと、統計の「1」に入れてほしい。
それにより明確に死へのカウントダウンが始まったとしても。


本当の事実を見ようとすると、それは自分が思った形でないことが多い。
そのための元データが正確にほしい。

私自身の生存率を高めるのと同時に、次世代の、息子の世代に癌をもっとはびこらせたくない。

患者は気弱になってはいけない。一つに依存してもいけない。西洋医学だけを、東洋医学だけを批判しても妄信してもいけない。

漢方医と話して気づいた。
情報は正確に集めなければいけない。しかし、将来や先のことを考えるあまりくよくよしたり、落ち込んだりしてはいけない。「決める」のはそのときになってからでよい。
焦らないこと。先を考えて決め付けないこと。出来るだけ信用できる情報を集めること。

仕事にも使えそうだ。

だからもっと知りたい。正確な情報を。

しかし、癌になったら生き難い。これは事実だ。