ラノベはエロゲが育てた人材にタダ乗りしている?
夏空のペルセウス ビジュアルファンブック (WANIMAGAZINE ART BOOK X-RATED)
- 作者: minori
- 出版社/メーカー: ワニマガジン社
- 発売日: 2013/05/30
- メディア: コミック
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のインタビュー記事を読んでいたらそのような事が書かれていました。
『夏空のペルセウス』スペシャルインタビュー
【項目名】 オタクコンテンツ業界にも移籍金制度が必要
―― 美少女ゲームの衰退と比較して語られるのがライトノベルの隆盛で、美少女ゲームの人気シナリオライターがライトノベルに“流出”しているとの見方もありますが、酒井さんとしてはライトノベルをどのようにお考えですか。
酒井 ライトノベルや漫画は競合コンテンツではないと思いますね。商品の価格帯が全然違いますから、購入層が被っていたとしても一方的です。
―― 美少女ゲームユーザーがライトノベルを買うことはあっても、その逆は無いと。
酒井 ただ、他の業界に人材を引っこ抜かれるのは困りますね。あれは正直きついです。それは人材を(金銭面で)引き留められない僕ら自身のせいでもあるんですけど。
―― それは会社の規模が違うからですか?
酒井 もちろん資本力が最大の理由です。しかし、この金銭的な差はどんどん広がっていく一方なんですよ。それは、引っこ抜いていく側が引っこ抜かれた側に金銭面で補償する仕組みが無いからです。プロ野球のフリーエージェントには補償制度がありますし、サッカーなどにも移籍金がありますけど、この業界では彼らは人材の所属元に対して一切補償しない。これは笑い事でも何でもなくて、僕らにとっては死活問題なんですよ。だって僕らは新人を採用して戦力になるまで、膨大な時間と費用をかけて育成しているわけじゃないですか。それはminoriに限らず、どのメーカーでも同じです。でもその人材が戦力になったとたん、メール1本で引き抜かれてしまう。
―― どこでもそうですけど、人を育てるのって大変ですからね……。
酒井 プロスポーツには補償制度があります。つまり、選手を育てる係とその選手を使って儲ける係が分担されているわけです。もし同じような補償制度がこの業界にもあれば、僕らはそのお金を使って別の人材を育てることもできるんですよ。でも現状では何の補償もなしに人材を抜かれているので、そのたびに僕らの業界は膨大な損失を出しているんです。出て行く人材を引き留められないのは僕らの業界のせいでもあるんですけど、引っこ抜く側にも問題があるんですよ。それが続けばやがて僕らには人を育てる体力がなくなり、その結果として人材は枯渇していきます。イナゴのように食い尽くした後に何も残らなければ萎んでしまうんです。
―― どうすれば解決するんでしょう?
酒井 僕らと彼らが一体となって、人を育てる係とその人で儲ける係をきっちり分担する。そこにどこかの会社がまとめて投資すればいいんです。
―― しかし現実的にはその実現は難しいですね。
酒井 はい。ですから、そういう人材的な意味において彼らは競合だと考えざるをえません。
ここでの「育てた人材」は主に「ライター」を指しているのだと思うのですが、
【参照リンク】
- ラノベ業界って絵描き育ててんの? (Half Moon Diary@はてな 2013/05/08付け)
- 「ラノベ業界って絵描き育ててんの?」に対する反応について (Half Moon Diary@はてな 2013/05/16付け)
- ちょっと悲しいね (Half Moon Diary@はてな 2013/06/02付け)
という事例を考えると「原画家」も「育てた人材」として含めて考えてもいいのかな?と。で、実際にエロゲ会社に所属している原画家に対するラノベ編集者からのオファーはこんな感じらしい。
本当に原画家本人宛に直接オファーがいくらしい
【コラム・ネタ・お知らせ】 コラム漫画「ななか日和」 挿絵を担当させていただくラノベのお話と、“楽園”を終えての心境 (アキバBlog 2013/06/10付け)
んでもって「人材」についてラノベ界隈はどう考えているのかはこちら。
優秀な人材は発掘するもの
『俺妹』などを手掛けた編集者語る ラノベ絵師の発掘法 (ダ・ヴィンチ電子ナビ 2012/03/27付け)
三木さんは自らコミケに足を運び、これはと思う描き手を直接口説く。彼らの特徴は絵を描くのが好きでたまらないこと。物語を作るより、とにかく絵。そのためだったら時間も手間もたっぷりかける。裾野は膨大に広がり、トップレベルの実力は高い。業界ずれもしておらず、文章に真剣に向き合い、互角に渡り合うのだ。絵師とは言い得て妙である。
すでにプロとして活躍している人や、ネームバリューに頼ったチョイスはしない。発掘したい。発掘した絵師に、読者の予想を超えるイラストを描かせたい。時にはわざと違和感のあるイラストを使い、勝負をかけることもある。
- 作者: 海老沢秀暁
- 出版社/メーカー: グラフィック社
- 発売日: 2013/05/07
- メディア: 単行本
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Q:現在、イラストを描いています。どうすれば自分の絵を編集者の方に使ってもらえますか?持ち込みが普通なのか、それともpixivやHP、販売会等で頑張っているほうがよいのでしょうか?
A:ガガガ文庫編集部では、現在、イラストの持ち込みは受け付けておりません。申し訳ありません。pixiv・HP・販売会などは、新しい才能を持つ方がいらっしゃらないか担当編集者たちも普段から気にしていますので有効だと思われます。その際には連絡が取れやすいフォームになっているかはもちろんの事ですが、「仕事を募集している」などの編集者から連絡をしやすい表現もオススメいたします。
イラストレーターに関しては、ラノベって狩猟採集型のように見えます。今は豊穣な狩場があるので農耕牧畜型にする必要がないという感じ。
エロゲの原画とラノベのイラストをやったことがある人はどのくらいいるの?
ラノベがどのくらいエロゲの人材に頼っているかの推定。
【参照データ】
この2つのサイトからそれぞれ「イラスト」「原画」を抽出してマージさせてみました。ただし、ラノベについては1990年以降のデータのみを使用しています。結果、ラノベのイラストレーターは全部で3368人。そのうち601人がエロゲの原画を描いているのでこれをグラフにするとこうなります。
おおよそラノベのイラストレーターの2割がエロゲと関わり合いがあるようです。もっともこの場合、方向性(エロゲからラノベなのか、それともラノベからエロゲなのか)や、その他属性(本業はマンガ家でラノベとエロゲに関わっている等)などの要素が省かれていますのであくまでも目安です。ただ、ラノベからするとエロゲからの人材の割合は然程多くはなさそうなので、「エロゲ界隈から人材を引っこ抜くと色々と面倒くさそうだから他から調達するわ」と思わせてしまえば、結果的に住み分けになるのかもしれません。
「ラノベのイラストからエロゲに関心が向く読者もいるんじゃね?」という疑問点も先のインタビューでは否定(「美少女ゲームユーザーがライトノベルを買うことはあっても、その逆は無い」)されていますので、とりあえずここら辺が現状における妥協点なのかも。